55 パドックではペットの放し飼いは禁止
フウカの肩に爪を食い込ませているフクロウが片目を開けていた。
えっ、警察?
どこ?
あ。
フウカが手を挙げて大きく振った。
「こっち、こっち! こっちだって!」
見ると、競馬場に似合わぬ背広集団が集結している。
パドック脇に大幅拡張された女性専用カフェの入口。なにかあったのだろうか。
フウカはさらに大きく手を振り回している。
「知り合いか?」
しかし、ジンもランも知らん顔。
「先生、いつものこと」
「ん?」
「フウカの恋人。刑事。知らなかった?」
「へえ」
「それもかなり自慢の彼氏」
「あそこに?」
「いるみたい」
背広団の中に、手を振り返す者はない。
「仕事中だもんね」
フウカは、
「デジちゃん、ちょっと行って、聞いてきて」と、フクロウに言った。
デジちゃんと呼ばれたフクロウは渋っていたが、結局、大きく羽を広げた。
しかも真っ白。
さすがに目立つ。
フウカにとって、この迫力も自慢なのだ。
パドックの近くでペットの「放し飼い」は禁止。
しかし、そこはロボット。
馬の目に入らぬよう、地面を歩いていくという配慮はない。
案の定、警備員が数名、血相を変えて飛んできた。
フクロウは、刑事集団に直行せず、一旦秋空に舞い上がって旋回している。
それを仰ぎ見ながら、ジン。
「デジロウ。あれ、どこで買った? いくらした?」
「興味ある?」
「そりゃ」
「でも、教えない」
「めちゃくちゃ賢いし。全部言わなくても、理解して考えて、自分で行動する」
褒めそやすジン。
「今だって、聞いてもないのに、ボクらが関心ありそうなことを教えてくれる」
「ふぅ」
フウカのため息を無視してジンはなおハイテンション。
「普通のペットロボじゃ、ああはいかない」
「はあぁ、だからなに」




