41 競馬はマイナー
いずれも、紅焔女子学院大学の学生。
ミリッサの授業を受けている学生であり、競馬サークル「R&H」(ラフ)に所属している。
R&H、すなわちRACE&HAITOU。
大学は、阪急御影から急坂を二十分登った六甲三麓にある。
神戸の街を見渡す景色のいい女子大。
いわゆるお嬢様学校として人気は高い。
そこで、人文科学部プロダクション学科の非常勤講師として、週に一日三科目、心理的提案技法論なるものなどを教えている。
「俺の予想を聞くな。自分で考えろ」
「ええーっ」
学科で唯一の男性教官として人気はある方だと、自分では思っている。
四十六歳。彼女たちにとっては父親のような年齢でも、比較的高齢男性の多い女子大では若い方。
にもかかわらず、サークルに入ってくる学生が少ないのはなぜか。
競馬はもうマイナーだからな、と自分を納得させているのだった。
確かに、競馬は変わった。
JRAの関西の競馬場はここ淀だけになったし、G1レースの日でも、抽選に当たらなければ席がないということもほぼない。
令和の初めに京都競馬場は建て替えとなったが、それほどの観客を集めることもなくなった今、減築のためにまたもや改築され、それを機に、主要な部分は平成時代の形態に戻されている。
トラック形楕円ではなく円形のパドック。
以前もそうだったが、中央の大木がせっかくの電光掲示板を見えにくくしている。
その大木の葉を初秋の風が揺らしている。
京阪カラーの電車が、電光掲示板の後ろから姿を現し、四条方面に向かっていった。
「ミリッサ、顧問なんだから、ちょっとはアドバイスを」
「知らん」
学生からは、授業中は先生と呼ばれるが、授業を離れると呼び方は様々。
ミリッサと名を呼び捨てにするのが今風ということらしい。ハルニナ、ジン、ミャー・ランはそのクチだ。
いわゆるジェンダー平等、ジェネレーション平等、エクスペリエンス平等のひとつの表現。
ミリミリとあだ名はまだいいが、ジンからお兄ちゃんと呼ばれた時には、さすがにそれはやめろと言ったものだ。
わおっ。
パドックがざわめいた。
一頭の馬が何に驚いたのか、前足を上げていなないている。
せっかく選んだ馬連のひとつを書き換えた。
「ほらね。馬が教えてくれる」
と、ハルニナがまた言った。




