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35 ぐるぐる飛びの怪
祠が動いた。
いや、動いたように見えただけ。
疲れ果てている。
立ち止まり、息を整えた。
落ち着け。
落ち着け。
よく見ろ。
げっ!
動いている!
ゴキゴキ、ガタガタ。
祠の屋根の石が!
屋根の上に積もった土くれが零れ落ちる。
わ、わっ!
浮き上がった!
十センチほど浮いた位置で、ぐるぐる回りだす。
今まさにこちらに飛んできそうな勢いで。
足が震えだした。
これも妖怪の仕業か。
前を通ることはとてもできない。
かといって、沢もここでは渡れそうにない。
元来た道を引き返すつもりも毛頭ない。
逃れるすべは、斜面を登ることだけ。
街へ降りるのだ!
気合を入れて右手の斜面を登りにかかった。
かん木をかき分け、手や顔をますます傷だらけにしながら。
祠はまだ見えている。
見えているところで迂回しよう。
もう、あの道から離れるわけにはいかない。
街の灯が見えていたのだ。
確かに見えていたのだ。
何としてでも辿りつかねば。
そうか。
あの祠、幻……。
祠と見えただけで……。
いや、違う。
ここからでも見える。
石が回っているぞ!




