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29 何をやってるんだ、俺は
迷いを察したか、サルは、何度も何度も右へ降りろと指さしてみせる。
ぬう……。
よし。
さすれば、従うしかあるまい。
ここで、もたもたしているわけにはいかない。
いつ何時、足首を蛇に喰いちぎられないとも限らない。
勢いよくクマザサをかき分けて下っていった。
沢の音が聞こえてきた。
水辺に近づき、幸い、クマザサは勢いを減じた。
幾分疎になり、進むに支障はない。
さらに下ると沢に出た。
ささやかな流れだ。
で、どうする。
飛び越えて前方に進むのか。
前は急斜面。見上げるほどの崖。
無理だ、これは……。
沢に沿って下っていくしかないが……。
こちら側を。
それとも右岸を。
あるいは遡っていくのか。
ランを追って。
ランを追って……。
ラン……。
情けなくなってきた。
何をやってるんだ、俺は。
ランを恨む気持ちは全くない。
しかし、なんだ、このざまは。
こんなわけの分からないところで、蛇に追われて逃げ回り、サルの指示に従いここまで来たものの、それでどうするというのだ。
あいだみちなどという妖怪の腹の中で、出口もわからず途方に暮れるばかり。
まさか、いつしか消化されるのではあるまいな。




