26 このままではわたくし、同行の者とはぐれてしまいます
かなりの径を駆け戻ったところで、ようやく大蛇は追ってこなくなった。
しかし、径の横、シイの大木の一の枝に、その巨大な体を横たえた。
径のちょうど真上に。
そこでこちらを見据えて動かなくなった。
枝がしなって、まさに目の高さに蛇の頭が。
まずい。
まずいぞ。
まずすぎる。
これでは、あいつの真下を潜っていくことになる。
できるはずがない。
ランと合流できない。
ますます夜が更け、この薄暗がりは完全な闇になるのでは?
そうなればもう一歩も先へは進めず、後退もできなくなる。
意を決して行くべきか。
蛇の下を、頭を下げて。
それとも、ランが戻るのを待つべきか。
それとも、茶屋町のあの家まで戻るべきだろうか。
果たして、戻れるのか。
戻れたとしても……。
いや、戻れるとは考えない方がいい。
きっと、あいだみちにはイレギュラーな対応のはずだ。
しかも、なんの「お礼」も持っていない。
クマザサの中をかき分け、迂回するか。
だめだ。
先回りされ、襲われるだけだ。
その時こそ逃げきれない。
このうえは!
声をかけて、通してくれと丁寧にお願いして。
人の声を聴き分けるかもしれない。
なにしろ、ここは妖怪の径。あいだみちの体内。
「巳さん」
できるだけ恭しく聞こえる声を出した。
震えぬよう、心して。
「巳さん。通してくださいませんでしょうか。このままではわたくし、同行の者とはぐれてしまいます。どうしても会わねばならぬお人が待っているのです」
通じたか。
動きはない。
精一杯の勇気を振り絞り、一歩、踏み出した。




