24 ぐるぐる飛びの怪
祠が動いた。
いや、動いたように見えただけかもしれない。
疲れ果てている。
立ち止まり、息を整えた。
落ち着け。
落ち着け。
よく見ろ。
げっ!
動いている!
ゴキゴキ、ガタガタ。
祠の屋根の石が!
屋根の上に積もった土くれが零れ落ちる。
わ、わっ!
浮き上がった!
十センチほど浮いた位置で、ぐるぐる回りだす。
今まさにこちらに飛んできそうな勢いで。
足が震えだした。
これも妖怪の仕業か。
前を通ることはとてもできない。
かといって、沢もここでは渡れそうにない。
元来た道を引き返すつもりも毛頭ない。
逃れるすべは、斜面を登ることだけ。
街へ降りるのだ!
気合を入れて右手の斜面を登りにかかった。
かん木をかき分け、手や顔をますます傷だらけにしながら。
祠はまだ見えている。
見えているところで迂回しよう。
もう、あの道から離れるわけにはいかない。
街の灯が見えていたのだ。
確かに見えていたのだ。
何としてでも辿りつかねば。
そうか。
あの祠、幻……。
祠と見えただけで……。
いや、違う。
ここからでも見える。
石が回っているぞ!
疲れ果て、気がおかしくなったか。
くそ。
そんなことがあってたまるか。
少しばかり登って左に進路を変えた。
緩やかに下り。
遠く、左手に祠。
相変わらず、屋根の石は回り続けている。
岩や窪地をかん木や草が覆い隠し、歩きにくい。
けつまづき、足を踏み外して転びそうになる。
ありとあらゆる、何かわからないものが顔に覆いかぶさる。
足首を痛めた。
構ってられるか!
巨岩を回り込む。
一軒家ほどもある岩の上には土が積もり、小さな木まで生えている。
岩の裏側の地面は窪みになっていて、落ち葉が深く積もっていた。
その中に足を取られ、思わず手をついた。
つっ!
掌の傷が広がった。
血が噴き出す。
くそ!
まだ祠の石は回っている。
くそ!
なんだっていうんだ!
目の錯覚か?
違う。
明らかに回っている。
ちくしょう!
意味が分からん!




