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21 大賢猿様

 再び、サルが現れた。

 崖の上から、また教えてくれるらしい。

 沢を渡り、そのまま沢沿いに降りていけと人差し指を動かす。



 わかったよ。

 わかったよ。

 従うよ。


 あまりにふがいない。


 ランにも蛇にもサルにも、さほど怒りが湧かないこと自体がふがいなかった。

 それとも、俺はもう、なにか別の人間になっているのだろうか。

 PHとやらに。


 沢を飛び越え、足首を濡らしながら下って行った。




 お。

 なるほど、これは径なのだろう。

 水や岩に阻まれることなく、まがりなりにも進んでいける。


 さて、どこの口から、どこへ出るのか。

 常時オープンの口なのだろうな。

 でなければ、サルめ、ただでは済まさんぞ。



 テンポが上がってきた。


 が、調子よく下ってきたと思いきや、やれ、情けなや。

 ぬか喜びとはこのこと。


 大きな岩が行く手を阻んでいた。

 岩は水系から突き出たようで、水にえぐられた川底は深い。

 とても水の中を進むことはできない。

 となれば山側。



 落ち着け。

 落ち着け。


 落ち着いて回りをよく見ろ……。


 目を凝らすと、けもの道らしき痕跡が。

 山の草が踏まれた跡が。


 よし!

 こっちだ!


 進め。

 進め。

 登れ。

 登れ。


 ゼエ、ゼエ。

 ゼヒッ、フハッ。

 ゼヒュ、ゼヒァ。



 ん?

 草?

 クマザサではない。


 ん?

 んん?

 おお?


 気付かぬ内に、いつしか、よく見る山の景色の中に立っていた。



 そうか!

 あいだみちの口から出ていたのか!


 そいつはいいぞ。

 いい兆候だ。

 だが、まさか、大峰のただ中ではあるまいな。



 けもの道を登った。


 踏ん張れ!

 もうちょっと!

 もうちょっとだ!


 小さな尾根にたどり着いた。


 おっ。

 お、おおおおっ!


 谷筋のはるか向こう、遠い下界。

 街の明かりが!


 よし、いいぞ!

 いいぞ!

 いいぞ!

 いいぞ!


 やれ、うれしや!


 やれ!

 やれ!

 やれ、だ!


 ホントに!


 大賢猿様、恩に着る!

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