18 いかん! これは、いかんぞ!
見上げたその先、岩の上部から垂れ下がっていたもの。
見たこともない大蛇だった。
見据えられている。
後ずさった。
岩に登り始めていなくてよかった。
転げ落ちるところだった。
鉄鎖を放した。
ジャリンと、鎖は大蛇のすぐ横に落ちた。
そろそろ一歩二歩と退くと、蛇も歩調を合わせるかのように体を滑らせ、ジリ、ジリッと降りてくる。
おい。
おい。
待たんかい。
なんだよ。
ラン。
どこにいる。
何とかしろ。
蛇との睨み合いなど、経験はない。
しかもこんな大きな奴。
視点をどこにもっていけばいいのかわからない。
目を合わせていいのか。
そっと提灯を拾い、恐る恐る前に突き出した。
失せろ!
消えてくれ!
お願いだ!
しかし、願いが通ずるはずもない。
大蛇は一気に岩を降り切ると、あろうことか、飛びかかってきた。
その俊敏さたるや。
わっ、わわわっ!
提灯を取り落とし、腰が抜けそうになるのをかろうじてこらえて、走り出した。
暗い径だ。
走るのは危険。わななく足。
しかし足は止まらない。
止めるわけにはいかない!
な、な、なんなんだ!
冗談じゃない!
クマザサの葉で顔が切れた。
このままではランとはぐれてしまう!
振り返った。
んが!
追ってくる!
距離がみるみる縮まる。
いかん!
これは、いかんぞ!
また走る。
元来た道を。
坂を駆け下り、駆け上り。
ゼエゼエ。
ゼエゼエ。
くっ!
まだ来てやがる!
どういう了見だ!




