↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
16/559

16 学生のふりして、人間社会で遊んでる

 私は、猫の妖。

 黒猫の姿をしていた時もあるけどね。

 学生のふりして、人間社会で遊んでる。


 誰も気づかない。

 気づいているのは、ごく一部の人と馬たちだけ。

 私が牙をむくと、馬たちは興奮して浮足立つ。

 それがおもしろそうだったから、競馬サークルに入ったようなもの。でも、そんなこと、もう最近はしてないよ。


 七十歳になったって言ったけど、それはちゃんとした妖になってからという意味。

 それまでは、捨て猫の仔として、死線を行ったり来たりの年月。


 私、運が良かったのね。

 野犬やキツネに襲われることもあったけど、生き延びた。

 生き延びて生き延びて、生き延びた。

 病気になったことも何度もあった。

 猫取りに狙われて捕まりそうになったこともある。

 もし捕まってたら、三味線の張り革になってたかもしれないけど、なぜかいつも逃げおおせた。



 住んでたのは、白山のふもと。まあまあ裕福な普通の農村。

 場所が良かったのかもしれない。

 市街地は遠く、山は近い。きれいな川が流れ、魚もネズミもいっぱいいた。

 ちょうどいい穴倉を見つけたからかもしれない。

 そこで、何十年も何十年も、何百年も死なずに生き延びた。



 いつしか私の体に変化が起きた。

 大した変化じゃない。

 何となく、強くなったような気がした。気力が満ちるような気がした。

 弱々しく、いつ死んでもおかしくないよぼよぼの私に活力があふれた。

 そしてある年を境に、身体も一気に大きくなり、毛も輝きを増し、跳躍力も走力も、今まで体験したことのない境地になった。


 そして私は、もう死ぬことを恐れなくていいのだと悟った。



 ある日、私は初めて人間の住む村に出た。


 驚いたことに、人は誰も私に気づかない。

 誰もが恐れるだろう大きさになった猫なのに。

 顔は獰猛。オーラをまき散らしてる。

 そこらを散歩させられている大型犬さえ、尻尾を股に入れて私を避けるのに。

 塀から屋根へ、屋根から屋根へと跳躍してるのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。