10 奇妙な意気込み
JR大阪駅のコンビニの前、ランの買い物を待つ間、思った。
フウカのこと。
ハルニナのこと。
メイメイのこと。
そして、ランのこと。
いったい、彼女たちは何をしようとしているのだろう。
何を伝えようとしているのだろう。
何もかもが中途半端であいまい。
ノーウェのことに関連して?
ノーウェの転落死の原因を調べようとしていることが発端で?
多かれ少なかれ自分にも関係しているようだが、それがなにかわからない。
ノーウェの死と自分に、なにか関係があるのか?
俺が全く気付かぬうちに?
考え過ぎだろうか。
違う。
現に、俺は殺されかけた、という。
競馬場地下のコアYDで起きたこと。ハルニナとの会話の数々。
神社でメイメイが言いたかったこと。
そして今日、今から、聞かされること。
電車の中でランは、私も話あるんだけど、ほかの人がミリッサに会いたがってて、と言った。
今から会いに行くその相手が誰なのか、ランはまだ話してくれない。
では、なぜ今日なのかと問うと、授業で裏山に行く日だったから。
歩きやすい服装でしょ、と言ったのだった。
かなり歩くという。
いったい、どこまで行くのか。
そんなに遠いなら、電車か地下鉄で、タクシー代かかってもいいぞ、とも言ったが、ランは一言。
そんなところじゃないって。
断ることもできた。
普通は断るところだ。
しかし、奇妙な意気込みが自分にあることを感じていた。
こうなれば、行き着くところまで行ってやる。
自分の身に何が起きようとしているのか、あるいはもう起き始めているのか、見極めてやろうという気になっていた。
そしてそれが、ノーウェの死の真相に結び付くことなら。
今から会う相手が、今受講している学生であろうが、教えていた卒業生であろうが。
それが元で、大学に居づらくなろうと構わないではないか、とさえ思い始めている。
大学講師という職を紹介してくれたヨウドウには申し訳ないが、今のこの状況をなかったことにしておけない。そんな気になっていた。
ハルニナも言ったではないか。
ケイキちゃん殺人事件の真相解明について。
やめれば、やはり所詮は学生のやること、って思われるでしょ。
フウカも言ったではないか。
学生だからこそ、競馬サークルだからこそ、やり遂げなくては。
学生たちがそう言っているのに、講師でありサークル顧問である自分だけが風雨から逃れ、静かな澄んだ湖一周トレッキング、なんてしているわけにはいかないではないか。
どこまでも行ってやる。
ついて行ってやる。
この子たちと。




