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12 参考書を選ぶの、手伝ってもらうんです
「お待たせしました」
さっさとランは先に立って歩き出す。
トートバックには何やらぎっしり詰まっている。
「どこまで歩く?」
「まずは、阪急の向こう側」
「茶屋町?」
「そうですよ」
「近いじゃないか」
JRと阪急電車を結ぶ、雨に濡れた歩道橋。
夕方のラッシュ。行きかう人は皆もう傘を閉じている。
「よかった。雨、上がって」
「ですね。さっきの雨って、いったい」
「線状降水帯ってやつかな」
「下着までびちゃびちゃ」
「あの観覧車。今も動かしてるのかな」
「動いてたら、今度一緒に」
などと、核心にほど遠い会話が続く。
人波にある時は流され、ある時は逆らい歩いていくと、運よく、いや運悪く、授業準備室職員ガリと出会った。
切れ長の目を幾分丸くし、軽く会釈して通り過ぎようとする。
このまますれ違ってもよかったが、こちらは学生と一緒。
なんらかの説明をしておくべき場面。
とはいえ、説明できることはない。
「紀伊国屋で参考書を選ぶのを手伝ってもらうんです」
と、ランの機転。
「よかったわね」
立ち止ったガリ。
ランのとっさの嘘など信じていないことは明らかで、わざわざJRで来て? と返してくる。
まあいい。
どう思われようとも。
さっき、そう考えたではないか。




