乗艦
ワグス湾 早朝。
「これが…」
一団を率いてワグスにやってきたアルスが、動揺の声を上げる。
ワグスの港は南進に向けて近代化が進んでおり、港には戦艦メリオスや空母イスカなど、城塞の様な軍艦が浮かぶ。
一目でわかる、圧倒的な力。
魔力こそは感じないものの、目の前の威容はヴァルディアの戦艦にも匹敵する。
「…すごい」
アルスの後ろ。
魔龍を連れて歩くリューが声を漏らす。
さらにその後ろに続く腕利きの選抜された戦士たち。
王国軍専任のモンスターの狩猟の専門家であり、凶悪なモンスター相手に果敢に立ち向かう彼らでさえも、呆気にとられる。
「貴君達が、ガンダル王国軍の精鋭か?」
数人の海兵を連れ、シズハがアルス達に話しかける。
「お初にお目に掛かる、ガンダル王国前線指揮官のアルス・リゲール。
よろしくお願いする」
相手に対して片膝をつく、ガンダル王国式の敬礼。
リューたちもそれらに倣い同様に片膝をついて敬意を示す。
対して、シズハたちは海軍式の敬礼で敬意を示す。
「私はランデル国海軍少将のシズハ・イセ。
貴国の勇士達を心より歓迎する」
タラップより、メリオスに乗艦するアルス達。
一方でリューはチィに乗って軽空母アラケスに乗艦する。
軽空母の飛行甲板に立つリューとチィを甲板から眺めつつ、波に揺られる。
艦橋にはランデル国の国旗と海軍旗が海風にはためいている。
全ての準備を終え、艦隊が北上する最中、シズハたちは作戦会議室で机を囲んでアルス達と会議を行う。
王国北部の山岳地帯が描かれたノーシャン地方の地図。
集落のマークはなく、王国の領土とは名ばかりの無人地帯である。
「…では、この地についての説明をさせていただきます」
立ち上がり、シズハたちに現地の概要をアルスが説明する。
「まず、現在のノーシャン地方は雨季。
雨が常に降り続けており、地面はぬかるんでいます。
当然火をおこすことはかなわず、雨音のせいで敵の接近にも気づきにくい状況です」
「条件が悪すぎるな。
クソ、女帝様め」
悪条件にシズハは上官への愚痴を漏らす。
「ところで、カレッサ将軍の現状はどうなっている?
情報によれば責任を問われて明日思を知れぬ身だとか」
「カレッサ殿は前線指揮官に降格となりました。
今頃、南方に配属されているかと」
「わかった」
アルスの言葉にそう返すシズハ。
隣の士官に耳打ちすると、士官は通信室へと向かう。




