ニイタカヤマノボレ
午前六時。
山口多聞の指揮する空母飛龍を旗艦とした機動艦隊がガンダル王国の領海に侵入する。
「報告、布陣予定地まで、もう間もなく到達します」
士官の報告。
夜明けの甲板にはすでに臨戦態勢の艦載機が整列している。
「了解した」
作戦会議室。
参謀長を交えた最後の詰めに入る。
「風は強風、海は荒れている。
報告書通りの兵装ならば、相手の出撃は困難だろう」
船舶技術の発達したランデル国でさえ、民間船の出航を見送るほどの波浪。
帆船という、何世紀も昔の艦艇ならばなおさらである。
「ただ、一つだけ懸念があります」
「ヴァルディアか」
心配する参謀長に、多聞がそう返す。
前日に諜報でもたらされた、ヴァルディア帝国の戦艦隊がパーラ湾に入港したという情報。
ランデル国と同等、もしくはそれ以上の力を持つ国家であり、魔法技術という未知の力を保有するとの情報が中央政府にもたらされた。
しかし、チャーリー長官をはじめ、全員の答えは「計画に変更なし」の一つ。
「迎撃の有無にかかわらず、まとめて沈めろ」
「よろしいのですか?そうなってしまえば、間違いなくヴァルディアとの戦争になるかと」
「ヴァルディアの同盟国相手に奇襲攻撃を掛けた時点で、開戦の理由としては十分だ。
どのみち敵になるのならば、ここで可能な限りのダメージを与えたほうがいい」
「…承知いたしました」
深呼吸をして覚悟を決める参謀長。
駆動するエンジン音が、艦内に響き続ける。
午前七時三十分。
ついに予定地にたどり着いた艦隊。
エルゼナの指揮する第一機動艦隊からも、攻撃準備完了の電信が届く。
直後、すべての空母に対し、一文が通達される。
≪ニイタカヤマノボレ≫




