十四の世界 約束
まあ、何はともあれ無事に騎士への引き渡しもできたのだから良いとしよう。
「他の人に頼めないのか?」
「プシェは僕の婚約者なんです。他の誰かに頼んだら何かあるかもしれないと心配になって、朝の訓練でそのうち教官の事を瞬殺するかもしれません」
ん?なんか、脅してないかこれ。悲しそうな顔であたかも不安なんだと主張しているようだが、明らかに脅しているよな?
シェフィって外ではこんな事言っていたのだな。
私の前では可愛くてなんでもこなせる嫁みたいな感じなのに。
「……まあ、シェフィルは早朝訓練を毎回免除できているからな。良いだろう」
「ありがとうございます」
そういえば今は何時なのだろうか。もうそろそろ普通科の方も時間がやばいかもしれない。まぁ、こんな状況だから遅刻して何か言われる事もないと思うが。
「プシェ、一緒に行こ」
「あ、ああ」
「それでは、後の事お願いします」
一応必要な事は言っておいたからこれで良いのだろうけど、良いのだろうかと思ってしまう。
だが、このままでは授業が始まってしまうからな。真面目に受けると決めた矢先、大遅刻で授業の内容が分からなくなるというのは避けたい。
もしそうなったとしてもシェフィに教われば良い気もしなくもないのだが。
「プシェ、昔の記憶本当に何もないの?僕の事を貰ってあげるとか言ってた記憶も」
「ない。というか、昔からそういう感じだったのだな」
「プシェ、毎回僕をお嫁さんに貰ってジシェをお婿さんにするって言ってた」
そんな記憶はないのだが、昔からそこは変わっていないという事だな。
それにしても、昔の記憶が戻る事はあるのだろうか。
戻ってくれれば、銀の姫の事ももっと分かるかもしれないというのに。
「プシェの記憶がない原因は僕には分からないけど、戻るように協力するよ」
「助かる。だが、どうすれば元に戻るかすら分かってない状態なのだが、それでも良いか?」
「うん。その方法を探すのも協力する。だから、一人で悩んじゃだめだよ。何かあったら僕とジシェに相談する事」
それが目的か。以前の事をまだ根に持っているんだろうな。
あの時、珍しく怒っていたからな。仕方がないといえば仕方がないのだろう。
「分かってる。今度からはちゃんと相談する」
「絶対だよ」
「ああ」
「もしまた一人で悩んで無理したら、プシェが嫌って言っても側から離れずに無理しないか監視しておくから」
「もうしない。そんなに疑うなら、そうなる前に側で監視していれば良いだろう」
どうせ一緒に住んでいるんだからな。学園では一緒に過ごす時間は少ないが、それ以外はほぼずっと一緒にいる事になるだろう。