第54話 見回るだけでは終わらない
詠浦神社が建てられたのは120年も前。まだ神様が居ると信じられていた時代だ。
村の中心に建ち、神を祀る唯一の場所として貢ぎ物を良くされていたらしい。
その形も現在、村ではなく町として栄えた今でもあって、それが祭の屋台で出し物をすることで貢ぐとされている。
それがどうこうというわけでもないけど、先日の一件があったから、どこか気になってしまうのだ。 普段は気にならなくても、つい気になってしまう。
僕の悪い癖かな。
宿泊先から歩いて10分くらいした所にあるこの場所は、人がたくさん集まっていた。
大人や子連れ、カップルなどいろいろだ。
そんな中、一カップルだと見られそうな僕と月島さんは、屋台を見て回っていた。
「何か食べたい物とかある?」
「えっとですね……せんぱいこそ何か食べたい物、ないんですか」
何が食べたいか訊かれて嬉しそうだった顔から、すぐにムッとむくれた。
なんかかわいいな。日和さんと一緒だと、明るくて本当に楽しそうなんだけど、これはこれで面白いと思う。たくさんの顔があって。
「特にはないかな」
「遠慮はしなくていいんですよ?」
「ありがとう。月島さんこそ、遠慮しなくていいからね」
そこで会話が途切れ、人が混む川流れをかわしながら屋台を物色する。
横目で見ていると、本当にいろんな屋台があるんだなと感心してしまう。
──ダンッ
余所見していて心持ちが薄くなってしまい、ぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい」
「……。いや、問題ない」
パーカーのフードで顔を隠した少年に手を差しだし、尻餅付いた彼を起こす。
「それより、君は男を見なかったか?こういう男だ」
懐から一枚の写真を取り出し、僕の目前に晒す。
僕と同年代だろうか。どこにでもいるような少年の写真だった。
「いや、見てないかな……」
「そうか。時間を取らせたね。では失礼する」
そう言って少年は人混みに紛れ姿を消した。
「なんだったんだろ……ね、月島さん」
隣に声を掛けたけど、そこには誰もいなかった。
すれ違う人がそこにいるだけで、月島さんの姿は見当たらなかった。
「これは……」
月島さんとハグレてしまったのだった。




