第53話 向かうだけでは終わらない
「そろっと夕時かな」
日は西へと落ちて光が剥がれ薄くなる。そして夜の濃さへと導かれてその暗い青を知る。
その様子の裏目に僕は月島さんの影ある顔を思い出す。何か言いたそうではあったけれど、どこか寂しそうだった。
朝僕に宣戦布告をしたのだ。それが何かわからないけど、あんなことがあったのだから、もどかしくもなるだろう。
僕の前には出づらいはずだ。
「……悠人、先輩」
「月島さん……」
顔を合わせないようにしながら近付いてきた月島さんは、ピンクをベースにした花柄の着物を身に纏っていた。
小柄だからか、かわいく似合っていた。
「ほんとは嫌ですけど、ひーちゃんが言うから、浴衣にしてみました」
「とても似合ってるよ」
「と、とーぜんです。ひーちゃんが見立ててくれましたからっ」
顔が赤い。照れているのだろうか。
それとも、敵と宣言して僕に対して腹を立てているのか。
どちらにしても、やりづらいとは思う。
「じゃあ行こうか」
「……」
むくれて応えてはくれなかったけど、歩くとそれに着いて来てはくれた。
地元の祭、それは地域によって何かしら歴史があったりするもの。御輿や花火などもそれに当たる。
「祭り、楽しみだね」
「……そうですね。けど、祭なんていくらでも行く機会はありますよ。はしゃぐ程ではありません」
「あはは。それもそうだね」
「こっちに来る前にも、地元の行ってきましたし。もちろん、ひーちゃんと!」
「そっか。楽しかった?」
「もちろんです!」
「そっか」
楽しそうな顔を見ると、つい頬が緩んでしまう。
妹の明るい顔を思い出す。明るさに隠れた──暗い顔も。
……いや、それは……
「せんぱい……?」
「さ、祭を楽しもうか」
「あ、はい……?」
僕にはやらなければならないことがある。
それが達成されるまでは……今を生きないと。
僕と月島さんは祭をやっている、神社に向かった。




