第25話 何か忘れているだけでは終わらない
チーム分けも終わり、AからEチームに別れた。
まずはAチーム。会長、彩調さん、紅燗さんのなんとも言い難い3人。
次にBチーム。のえるさん、綾未さん、閣利沢さんの不安要素な3人。
そしてCチーム。華妃野さん、依代さん、月島さんの3人。
さらにDチーム。にゃむ君、日和さん、ユリアちゃんの3人。
最後にEチーム。僕、千道寺さん、副会長の三人だ。
「――や、やっぱり、ぼくは辞退する……っ」
「わがままはダメですよ。もうここまで来たんですから、ね?」
「で、でも……恥ずかしいよ、この格好…うぅ」
「今さらですよ」
にゃむ君が水着姿であることの羞恥心が優り、その場にへたり込む。そこを日和さんが説得をしている。
初めて出会った日のことを思い出す。なぜか迷彩服ではあったが、その時は生き生きとしていたように思う。が、今は女である身を恥じて胸元を隠し、顔を真っ赤にしている。
これがギャップと言うのだろうか。失礼ながらもかわいいと思える。
にゃむ君は出ることを拒否してるが、それは今さらながらに無理な話で、参加していることに間違いはないから逃げることができない。というか、逃げることが許されない。
「成島氏、君はそうやって逃避していていいのかい?目の前にある獲物を姿の違いで逃すと言うのかい?」
「そ、それは……だって」
会長がにゃむ君を説得している。
「だってなんだと言うんだい?」
「……うみゅ。そ、そのぉ……うぅっ」
「大丈夫。はそれでいい。いや、それでいいんだ」
「……え?」
「成島氏は迷彩服という外装を捨て、捨て身のフル装備となったのだ」
「捨て身の……フル装備」
「そうだ。外装がない今、できることは一つだ。激突あるのみ!」
「……」
「さあ、一緒に立ち上がろうではないか。そして、戦争という名の青春で勝利をかっさらおうではないか!」
「……はい!」
という寸劇を間近で見ていたわけだが、どうやらにゃむ君はやる気になったらしい。
ちなみに成島とはにゃむ君の本名だ。
僕としては、できれば中止になってほしいところだ。なぜならば僕を人権無視しての商品扱いだからだ。
だけど、みんな楽しそうな顔を見てると、まぁいいかな、なんて思えてくる。僕のことを勝手に勝利者の商品にしなければ、素直に喜べるイベントなんだけどね。そこが無念だ。
まぁ、そんなこんなで、試合は2チームずつの一試合時間制限なしの点数制で始まった。
まぁ、ここは本来の形式は無視して、マッチ制ではなく、点数は20点先取したチームが勝者と言う簡素なものになっている。
と言っても、ルールなんてほとんど知らないわけだけど。
とりあえずの箇条書きみたいなルールを断片的にまとめただけだ。
「と言うことで戸田氏には審判をやってもらおうではないか」
そういえば戸田君どこ行ったんだろう?
すっかり忘れていたけど、姿が見当たらない。
――シュコー……シュコー……
なんか変な音が聞こえる。
足下から……
「うわっ?!」
なんか突き刺さっていた。
そこから鈍い空気が通る音がしている。
なんだか息を吐くようなそんな……て、もしかして。
「……戸田君?」
「シュコー……シュコー……シュシュシュコー」
明らかに誰かがそこに埋まってる。
よく見ると砂場が盛り上がっているのがわかる。
「い、今助けるよっ」
とりあえず突き刺さってる所(シュノーケルか何かだろう)を中心に掘る。
「シュコー……ぶはっ……けほっ、けほ…」
顔が出て来ると、蒸せたように咳をする戸田君。
「……はあ……死ぬかと思ったぜ…っ」
「どうしてこんな所に?」
「……いや、なにも訊かないでくれ」
「え?う、うん……わかった」
本当に何があったのだろうか。
遊んでいたにしては、ちょっと度が過ぎる気がする。
「あら、まだ生きていらっしゃったのですね。おめでとうですわ」
「おめでとうじゃねぇっ。あんたが俺を埋め立てたんだろう……!」
「ワタクシは貴方に制裁を加えただけですわ。言いがかりはやめてくださいまし」
犯人は閣利沢さんだった。
「これのどこが言いがかりだよ……俺ヤバかったんだぞ…っ」
「会った直後に『君、綺麗だね。俺と付き合わなね?』ナンパ、継ぐ言葉は『君のおっぱい大きいな』これのどこに慈悲を与える必要があるのか、むしろこちらが聞きたいくらいですわ」
「……くっ。それのどこがいけなかったんだ……!」
それ、本気で思ってるの?!
戸田君がそんな軽薄な男だったんなんて…。
「俺はちょっと気を和まそうしただけなのに」
「え?どういうこと?」
「……ああ。なんだか閣利沢先輩、緊張でもしてるのか、肩が硬そうだったんでな、それを解そうとして冗談飛ばしたんだ。だが、言った途端目の前が真っ暗になり、気が付けば砂の中に埋もれていたんだ…」
「……それは災難だったね」
「善意があっても、やり方に問題があるのです。配慮がこの男には足りないのですわ」
「確かにそうかも知れないけど、」「おい」「戸田君も悪気があってやったわけじゃないと思うんです」
「悪気がなければすべてが善になるとでも?お笑い草ですわ」
ツンとして喋る彼女の姿はどこか寂しさを含んでいた。
「そ、それを言われると……だが、俺はあんたを心配して――」「あなたに心配される程落ちぶれていませんわ」「なんだとっ?!」
二人が険悪なムードになる。
これはまずい。なんとかしないと。
「閣利沢さんっ」
「なんですの?」
ちょっと怒気が孕んでいる。
ここで挫けたらダメだ。
「あのさ、悪気がなくても限度があるのはわかります。けどさ、人の優しさを無為にするのはどうかと思います」
「ワタクシに落ち度があるとでも?」
「別に落ち度がどうとかではなく、戸田君は善意でやろうとしたんです」
「だからワタクシは――」
「最後まで聞いてください。戸田君は善意で言葉をかけたんです。ですから、それが限度を越えるものなら、言葉で返せばいいんですっ」
「て、おい!?」
「……なるほど。一理あるわね」
「先輩まで!?」
「ですから、今度からは物理的になら物理的に、精神的になら精神的にできるだけ絞ってください。お願いします」
「あなたにそこまで言われたら仕方ないわね……いいわ。そうします」
「ありがとうございます!」
「ええ。では行きますわよ。皆様をお待たせするわけにはいきませんから」
「はい。これで安心だ。行こう、戸田君」
「……あぁ」
戸田君はなぜかぐったりしているが、どうしたんだろう?
まださっきのこと引き摺っているのかな?
それにしては元気がない。
ま、遊んでいれば元気が出るかな。
「これでできるな」
会長はニヤリと笑った。
確かに、これでやっと全員楽しくできそうだ。
ここまで長く引っ張ったような気がする。
まぁいいか。まだ時間はあるのだから。
さ、楽しくプレイしよう!




