第24話 ただのビーチバレーでは終わらない
寝ぼけ眼な目元を擦り、寝たりなさそうなユリアちゃんの手を引いてみんなの集まる浜辺の海岸へ向かった。
「やっと来たね。少年」と待ちわびたように会長。
「おにぃちゃん遅いぞ~っ」と腰に両手を当てている沙奈。
「時峰くんは主役なんだからもっとシャキッとしなさいっ」とよくわらかない発言をする彩調さん。
「やっと時峰くんと遊べるね」と優しくもかわいい笑顔を浮かべる綾未さん。
「……悠人」…………てそれだけかい。依代さんは相変わらず掴み所がわからない。
他にも僕に向かって声が上がる。
とりあえず全員集合しているみたいだ。
なんだか足りない気がするが、それは気のせいだろう。
「ふむ。少年も来たことだし、さっそくチーム分けをしよう」
会長は普段あまり使わないそのリーダーシップぶりをここぞとばかりに発揮する。
「この場には全員で16人いる。だから申し訳ないが一人は審判、他で3人で1組として5組に別れて試合を行いたいと思う。異存がある奴は即座に脱げ」
異存があったとして、誰も脱ぐはずもなかった。
「なんだ。まったく残念だ」
「早くしませんか。時間が勿体ですわ」
閣利沢さんが急かす。
「そうだな。それと、優勝したチームには褒美が与えられる」
「それくらい当然ですわ」
「ほーびだって~」「なんだろう?」「なんでしょ……?」
褒美と言う単語にみんな興味を持ち始めた。
その反応に会長はニヤリと不敵に笑い、僕は嫌な勘がした。
できればその勘は当たってほしくなかったが……。
「それは……明日一日時峰悠人を一人ならぬ、チーム占め出来る権を勝者には与えよう!」
ビガーン、と雷が落ちた……音が聞こえたような気がした。
驚愕と期待で満ちた顔の面々。不安と焦燥の面々もいるけど、人それぞれだろう。
……て、そんな冷静に客観視してる場合ではなくっ。
「なんで僕なんですかっ。もっとそれらしい賞品ってのがあるでしょうよ!数万単位の商品券とか、なんか食べ物一年分とかっ」
「……ふっ」
僕の反論も鼻で一笑されて終わった。
「いいか少年。それはどこぞの町内会などが客寄せの為に企画するものであって、我々が行うのは遊び且つ大胆な乱交なのだよ!」
その乱交には特に深い意味はなく乱闘とか遊びが飛び交うとかそんな理由であると思おう、てか思いたい。
「だからこそそんな誰でも手に入るようなものはいらんのだっ。我々が今必要なのは残り数少ない青春、思い出とドラマなのだ!」
「それと僕がどう結び付くのさ……」
「少年……きっとわかる日が来るさ」
なぜか遠い目をして明後日の方向を見る会長。
「ま、そういうことで皆の衆、気合いを入れて勝負に挑め!」
「僕なんかでやる気になるわけ――」
『おーっ!』
「あったよっ?なんで!?」
さっきまでこんな躍起なかったよねっ??
わけがわからないよ。
もしかして僕をコキ使うとか、そんなこと考えていたりする?
……女って生き物は怖いわ。主にこんなこと考えた会長が。
「ではチーム分けをする」
チーム分けは……なんだかんだでこれもわけのわからない闘争感で溢れていたが、その内容は省くとしよう。
こうして僕を巡る(悪い意味で)ビーチバレーでの女の戦いの幕は開けるのだった。
いやまぁ、僕も参加するのだけどね。
僕も参加ってことは、もし僕のいるところが勝ったら僕はどうなるのだろうか……。
考えないことにしよう。
……あとが怖いしね。