新幹線、降りたら船
再び異世界に召喚された俺。懐かしい仲間。語られる事情。またウェルトゥ探しか…。試練ももれなくデフォルトで?うっわ嬉しくねえ!まあ呼ばれちゃったからには仕方ない。おニューの鎧と剣に身を包み、ウェルトゥの騎士!再び!
続RPGっぽい異世界なう。
正確には異世界の海に浮かぶ孤島、スゥシャル・ドモス島にいる。小高い丘に身を潜めつつ、眼下の平原を伺う。むう。前線基地。この世界のじゃない。俺の世界の近代軍隊の、だ。フェンスで囲われたサッカーコート3面分位の敷地。工事現場の高所足場用の資材?で組まれた見張り台。アンテナ塔…パラボラは、ほぼ水平に海の方を向いてる。でかいプレハブっぽい兵舎?が一、二…十二棟。とは別に、ユニットの鉄板で作られたヘリポート。ヘリはいない。その隣、ありゃ発電施設か?それぞれのプレハブを束なった様々な太さの電線が繋ぐ。モスグリーンのタンクローリー、でかいジープ、キャタピラ履いて機関銃載っけた装甲車、サングラスで小銃を背負い、行き来する兵隊たち。そして…こんな、いかにも仮設っぽい施設にも専用ポールに…国旗。海岸からの強い風にはためく星条旗!自己主張強えなぁ。やっぱステイツかぁ…。せめて別の国ならなぁ…。でも好きそうだもんな、アメリカ。異世界への扉とか宇宙がどうにかなっちゃう力とか。ある意味当然と言えば当然?
「どんな?ヒロ。」
ファム。ちょ、見つかる見つかる。一回みんなのとこ戻ろ。…や、間違いないっすね。アメリカ軍の…多分海兵隊って連中じゃないかと。有事に真っ先に敵地に乗り込んで陣地造って味方の足場を築く…実戦上等!の精鋭部隊っす。
「だとしたら、目的はなんや?やて。」
…流石に見ただけじゃそこまでは。偏見かもしれませんが、アメリカって国は世界の憲兵を自負してて、軍事技術やエネルギー技術…巨大な力みたいなものに対してすっごく貪欲な国なんです。
「…狙いはウェルトゥ?」
断定はできないですけど、攻め込んで領土を…とかよりはリアルだと。
「例えばその…アメリカって国がウェルトゥを手に入れたら、どうなると思う?彼らは何をするかしら?」
とウィンドウ。うーん…わかんねえよ、そんな事まで。
「ヒロ個人の想像でいいわ。違ってていい。向こうの世界の人の意見が聞きたいだけ。」
…そうだなぁ。散々実験して研究して仕組みを解き明かして…コピーを造ったりして、利用する?かな?
「…力のある国のやる事に世界や時代で差なんてないのね。わたしも同じ意見。まさにそういう事をさせない為に、あの塔は建てられたのよ。」
まあそんなことすりゃ色んな世界が無茶苦茶になりそうだもんな。…にしてもアメリカ軍はどうやってこの世界に来たんだろ?もしかして、もうウェルトゥを手に入れてるんじゃ…。
「いや、それはない。ドモスに妙な連中がうろついとる、って地元の漁師の通報があったのは二十日近く前かららしいからな。ウェルトゥはまだ塔にあった。でも奴らは来とった。何か別の方法やろ。」
あ、そういやウィンドウはどうやって俺たちをこの世界に呼び戻したんだ?ウェルトゥは無くなってたんだろ?塔から。
「これよ。」
ウィンドウの手にアイスの棒…あ!ウェルトゥ!俺は奪い取ろうと手を伸ばすが…ウィンドウはその手をさっと避けた。
「かつてのこの世界を支配した帝国の元で造られたウェルトゥのコピー。『ワィァド・ウェルトゥ』…安心なさい。事態が収まったら元の世界に送り返して上げるから。」
お前、そんなん持ってるなら最初会った時、言えよ!
「これは非常用。ウェルトゥの探知装置も兼ねてる。使える回数も限られてるし、動作も不安定。あなたたちが来たのも呼んでから二日後だった。まあ、間は良かったけどね。召喚失敗かと思ってたら、ピンチにいきなり現れて。」
びっくりするだろ!夢で次回予告とか、幻聴っぽく名前呼ぶとか、なんか前フリしろ。って話そらすな。量産型ウェルトゥがあるなんて…なんで教えてくれなかった?
「そこまでサービスする義理はないわよ。第一、最初に会った時はウェルトゥを閉じる、っていうのも目的の一つだったわけでしょ?こんなのもあるけど…なんて説明したとしても『いや!俺たちはウェルトゥを閉じる!』とかなんとか言って見向きもしなかったんじゃない?」…ぐっ。
「それに取引対象として魔法のグッズの説明もしようとしたわ、わたし。ロクにどんなものがあるかも聞かないで、そこの小娘は『あかん!』の一点張り。あなたも小娘の肩持って、『魔法の何かもいりません』って言ったわ。きっぱりね。」
…根に持ってる?
「なんなら今から取引を再開してあげてもいいわよ?…あなたの影と引き換えに…」
「駄目よ!清水君!」
またファム…って先輩⁉
「こんな魔女の残りカスの言うこと聞いちゃ駄目。絶対いい結果にはならない!」「あら…雰囲気が変わったと思ってたけど。良く見ると面白い事になってるわね。あなた。中身と包み紙が入れ替わってる。まあ入れ替わったところで汚さはそのままだけど。」先輩の顔が、さっと紅潮する!わ!先輩もこんななるんだ!
「減らず口をっ!」
飛びかかろうとする先輩を後ろから抱きついて止める。先輩、落ち着いて!ほら!もなみっ!
「だってあの女が…今、もなみって呼んだ?」
あ、いや。はい、なんか流れで、その。…調子に乗りました。すんません。
「いえ、いいのよ。あなたにあたしはすごく迷惑をかけてる。異世界に来てまで先輩も後輩もない。今後はモナミって呼んで。いいわね?」
はぁい。先輩は涙を拭きながら深呼吸した。
「ごめんね、取り乱して。ファタリさんの感情が影響してるのかしら?あのウィンドウって人の全てに、なんか逆なでされて。」
大丈夫。気にしないで下さい。異世界に来ちゃったストレスもあるんだと思います。ウィンドウも…先輩真面目なんだから、挑発するような事言うなよ。
「魔術師だって…影だってわたしには感情があるわ。残りカスなんて言われれば、腹も立つ。」
分かるけど…お前のが数百年、下手すりゃ数千年お姉さんだろ?鼻垂れ小僧の俺たちみたいなもんにムキになんなよ。大体なんでお前、俺の影なんて欲しいんだ?魔法グッズと引き換えなら影くれる奴くらい探せば他にいくらでもいるだろ?
「……。」
言えないような事に使う気なのか?なら、結局ファムや先輩の言うとおりじゃないか。
「違うわ。」何が違うんだよ?
「あなたの影じゃなきゃだめ。」だからなんで?
「…貴重な変わりダネの、サンプルだから。」…異世界人の?
「そうじゃない。塔を訪れる者は皆、ウェルトゥに夢中。ウェルトゥまであと一歩の直前に現れる影女のことなんて誰も気にも留めない。わたしが扉の鍵を開ければろくすっぽ話も聞かず死の罠に飛び込んで…死ぬ。そんな人間を何十人何百人と見て来た。ほんと、意地悪な塔よね。…造った人間も登る人間も、自分の目的の為に残酷で身勝手。でもそれが普通だとわたしは思う。わたしの理解してる人間の、ごく自然な行動。そう思って長い長い時間をあの管理室で過ごした。」
…で?
「あなたは違った。仲間を助けに戻るのに一瞬の躊躇もなかった。仲間を見捨てる…『そんなことをすれば、俺は俺でなくなる。』あんな台詞をこの部屋で言ったのはあなたが初めて。それにあなたは、わたしに名前をくれたわ。塔のシステムの一部でしかない、魔女の残りカスの…わたしに。」
…。
「わたしは失った何か……いいえ、最初から欠けていたのかもしれない。かけがえのない何かをあなたから貰った気がした。影のわたしがこんなこと言うと笑われるかもしれないけど、人として、大事な何かを。」
…笑ったりはしない。けど少々大袈裟だな。そんな大層なこたぁしてない。ウィンドウは首を振る。
「…そう言えるあなたが不思議。正直に言うわ。わたしはあなたに興味を持った。もっとあなたを知りたいと思った。けれどあなたは行ってしまう。若くて、はつらつとした感情を持つ、生身の巫女と。」……。
「影にはその人の心が宿る。あなたの影が手元に残れば、研究する時間はいくらでもある。わたしがあなたに感じた不思議。それをあなたの影に問いかけたり確かめたりしながらなら…退屈な塔の暮らしも少しは充実するかもって思ったのよ。」
…上から目線でものっすごく遠回しに友達になりたいと言われてるのか?なんかわからなくはないけど、よくわからんなぁ。…ウィンドウ、お前自身がお前の事をどう思ってるか知らないが、俺にとっちゃお前もまったくもう!ってくらい人間らしいぜ。ちょっと黒いこととか巨大牛になっちゃうこととか些細なこった。少しばかり他人と違うからって、すねて周りに当たるのはよそうよ。
「わたしは別に…。」
すねたりしてない、って言うんだろ?ムキになったり素直になれなかったり。そゆとこは俺たち、なんも変わんないじゃん。ウェルトゥを捜すのも、アメリカ軍相手にするのもお前の力だけじゃない、みんなの力や知恵が必要だ。意見は言って構わんが、お互いにちょこっとずつ優しくしてさ、仲良くやろうぜ。
その時、珍しく先輩がぱっと俺の腕に組みついて来た。
「どう?これがあたしの後輩。清水火炉人よ。バカさ加減が気持ちいいでしょ?」
「…本当に。」
ひどい言われよう…。ウィンドウも否定しろよ!俺そこそこいいこと言ってね?なんで最後俺がバカだってことで話がまとまるわけ?まあ賢かねぇけどさ。俺がぶつぶつ言ってる様子にウィンドウは笑いを堪えてるようだった。あーもう!んな時は声上げて笑え!合理性一本槍の面は割れてんだ!今更ミステリアスきどってんじゃねえ!なんか疲れるなぁ、このパーティ構成。
話は丸一日前に遡る。
太陽神エル・エソォの力を借り、海魔ウァルセル・ウァルハァを撃退した俺。みんなとの再会を喜びたいとこだったが、ぶっ倒れて一日寝込んだ。ファムは回復魔法を施してくれたらしいが、目を覚まさなかったそうだ。もったいねぇ!全く身に憶えがない!神の力を借りたツケかな?前回ぶっ倒れるほどじゃなかったが。いじけ生活で体力落ちてるのか?気付けば船室でファムに介抱されてた。船室の晩餐で、改めてみんなと再会を喜ぶ。無茶振りの…ン・エレレン…なんだっけ。
「エレレンナンシュタトなんて名前、長すぎて誰も呼ばん。エレンでいいで、ン・ヒロ。やて。」
ヒロでいいっす。クマゴリ…ィアゴの群れに襲われて以来っすね。あんときゃありがとうございました。お陰でファタリも無事で。
「聞いたでヒロ。あの後大活躍やったらしいな。うちも最後まで付き合いたかったわ。やて。」
や、それほどでも。アベさんやみんなの力添えがあってどうにかこうにか。
「王都では早くもお前の噂で持ちきりや。ン・ティガ・ポも引っ張りだこで毎日毎晩どこかに呼ばれちゃお前の歌を歌っとる。特に巨大ィアゴを倒すくだりは子供に人気でな。ウェルトゥの騎士ヒロが伝説になるのも時間の問題や。」
…にゃろう。
「ィアゴはうちも見てるから、誇張だってのは分かるが…その後の話はどこまでほんまなん?光の騎士にはさっきなっとったな?空も飛んでたし。巨人になって巨大な怪物を倒したってのは?」
…すんません。事実です。
「にわかに信じがたいが、お前が言うなら真実だろう。…さすがアンパンマ○の血を引く勇者。うちら凡人とはあらゆる意味でスケールが違う。やて。」
○ンパンマンと親戚じゃないってば。たまたま場が上手く転がっただけで。俺だって筋金入りの凡人ですよ。そこは自信あります。エレンは笑った。
「光って飛んで巨人になるような奴が、凡人なわけあるか。さっき海魔を撃退した時のお前。あれだけでも充分伝説になる。神話にも登場し、神々と世界の覇権を争った古き悪魔の一柱をたった一人で退けたんやからな。煌めく鎧、輝く剣、真っ白な翼。海魔の呼んだ雨雲にでっかい穴を開けて、降り注ぐ日の光と共に稲妻のような一撃!ああ、伝説の英雄ってこういうことなんや、と実感したわ。やて。」
…うーん、他人から見るとそう見えるのか。ヤケ半分、捨て鉢半分の出任せ攻撃だったんだが。
「お前と、も一度旅ができて嬉しい。今度は最後までとことんついてくからな。宜しく頼む。やて。」
こちらこそ。エレン。…ン・ヴァルキュリアス。元気そうで。あ、足。人間バージョンに。
「水臭いな、ヴァリーって呼んでくれ。仲間はみんなそう呼ぶんや。今更やけど、うちもヒロって呼んでええか?やて。」
いいよ。…ヴァリー。なんか呼ぶほうが恥ずかしいな。なんでだろ?
「こいつは新しい相棒の魔法の槍、シャベリン。冗談みたいやけど言葉話すんやで、こいつ。ほら挨拶しいや。」
低いこもった声で槍がしゃべる。
「始めまして。ヒロ。うちはシャベリン。太古に造られた魔法の槍。以後お見知りおきを。やて。」
ファム、お前まで声低くしなくてもいいぞ。
「おもろいやろ?ちょっと理屈っぽくて生意気やけど、そこそこ使える槍やねん。」
「そこそことは聞き捨てなりません、ヴァリー。あなたは短絡的で直情的過ぎる。身体能力に任せ、考えなく動くだけ。うちがいなければ先ほどの戦いでも…」
「分かった分かった。こいつは世界一賢く、主人思いな優秀な槍、シャベリン。これでええか?」
「必要充分と思われます。ヴァリー。」
…テイルズオブ・ヴァルキュリアスでも作って貰って独立したら?お前もう、その槍いればピンで行けるよ。それより何より二人のやり取りを声マネで演じ分けるファムが俺的にツボ。…宜しくね、ヴァリー。シャベリン。ヴァリーが屈託ない眩しい笑顔で笑う。うーん、ジャニーズチック。ジャニーズっぽい爽やかイケメンに負の感情を抱いてしまう所が、俺の人間らしい所。
…ご無沙汰です。アベさん。またこうして会えて嬉しいです。
「すまんな、ヒロ。死ぬような目に会いながらようやく帰れたのに、十日と待たず連れ戻して。」
いえ、いいんです。ありゃどう見たって俺の世界の連中です。俺を呼んだアベさんの判断は正しいと思います。それに約束でしたし。
「約束?」
アベさんが呼んだら、聞き届ける。ウェルトゥの騎士の名にかけて。
「…律儀なやっちゃ。お前は、も少し損得にさといほうがええ。出世しないぞ。やて。」
師匠譲りで、損な役回りが好きみたいっす。初代ウェルトゥの騎士は。アベさんはバルディア、と呟いて笑った。あれか。
「バルディア」ってコナンの世界で言うと「バーロー」に当たる言葉か。
「そのウェルトゥの騎士だが。」
え?何?もう資格とり消し?調子に乗って結構な回数、随所で名乗っちゃったけど。
「うちが魔の森の主として王に認められ、うちが認めた『ウェルトゥの騎士』も王下公認の騎士資格となったんや。」
…でっ!マジで⁉ いつの間にか異世界で就職…。しかもそこそこいい立場の、国家公務員!
「申請すれば禄も出る。公の施設にも騎士待遇で出入りできるし、有事の際は領民に協力の要請や徴発の依頼も可能や。禄の申請、しとくか?」
いやいやいや、そんな恐れ多い。給料分の仕事する自信ないし、いつ向こうに帰っちゃうかも分からないのに。とりあえず、保留で。
「まったくバルディアが付くほどの欲の無さやな、ヒロは。貰えるもんなら貰っときゃええのに。」
いやでも…こんな、なんちゃって騎士が給料もらっちゃ…あ、そうだ。480ウラーってどの位の金額ですか?すげえ額?
「いや、城下の酒場で酒付きで一食、食べるくらいや。」
千五百円から二千円くらいかな。1ウラー三十円から四十円くらいってことか。太陽神様の神殿か祭壇って王都に?
「あるで。南の神殿がまるまる太陽神の神殿や。」
じゃあそこに480ウラー、俺の名義で寄進を。なんか早く払わないと高額の利子とかつきそうで…。取り敢えずそれだけお願いします。
「…あのな。騎士の禄やったらその二十倍はあんで?しかも神殿に寄進したんじゃ、結局ヒロの手元には一銭も残らんやないか。」
まあ、そっすけど。この任務の間…向こうに帰るまでの間だけ、飲み食いとか宿代とか世話になっていっすか?今回も公務で費用、国持ちですよね。
「ああ、経費の手付けは預かっとる。突然呼んだのはこっちや。そこは心配すんな。食糧も装備も充分な量用意して貰えたしな。」
そういや鎧、新調したんですね。深いグリーンの革の鎧、金細工の小さな紋章…それでも革なんだ。樹脂で煮固めてある硬い革鎧。前までなめした柔らかい革鎧だったから、若干防御力は高まってんのかな。それでも動き易さ重視か。魔の森の主らしい装備?
「いや、これはいつもの武具屋からや。塔の一件以来、うちやヒロの剣や鎧を売った武具屋としてえろう繁盛しとるらしくてな。なんも言わんのにあつらえて持って来てくれてん。今後とも是非ご贔屓にってな。」
…イチローモデルみたいなことか。
「ヒロのも預かっとる。…タチ、ヒロの鎧、持って来れるか?」
…皆の給仕をしてた少年が頷くとパタパタ走って行った。
「お前は必ず来るおもてな。積んで来たんや。まさかあんなタイミングで、おまけに巫女まで連れて現れるとは思わんやったけどな。」
…すんません。剣とアドバイス、助かりました。
「謝る奴があるか。助かったのはこっちや。ガイコツたちや異界の連中はともかく、海魔は…ヒロとン・ファタリが来んやったら間違いなく全滅やった。」
…いや。あれは太陽神様のお力で。次に似たようなことがあっても期待しないで貰えます?神様がそう何度も助けてくれるとは思えないので。
「太陽神様に気に入られるってのはもう一つの才能やで。前回の力の使い方が神様にとっても相当愉快やったんやろな。」
そういうもんすかねー。なんか怖いので、なるべく自分たちの力でなんとかしたいっす。
「その殊勝さにまた力貸したくなるんやろな…お、来たで。鎧下の綿着も剣も新品や。前の鎧と同じサイズやろうが、念の為合わせてみい。」
…。おおっ!アベさんと同じく固い革鎧!色は濃いブラウン。…!。肩当てが付いてる!ほつれ止めのふち金具が金色でいいアクセントに。おわっ!襟元に…なんか紅い宝石っぽい石が!
「…武具屋の親父、奮発したな。ネッタグアの石や。世界の始まり…原始の炎が結晶になったもの、と言われとる。消えない炎。武運と戦勝を呼ぶ石。武具の装飾の中では最高級やで。」
あ!剣にも!こんなん貰っちゃっていいのかな?
「もろとけもろとけ。あの親父、ヒロをダシに高い鎧や剣を売りさばく気や。ネッタグアも大量に押さえとるんやろ。今話題のウェルトゥの騎士、異世界の勇者ヒロが使っとるのがこのタイプです、なんて揉み手しとる様が目に浮かぶわ。逆にお前が身に付けんと親父が困るで。嘘の商品説明になってまうからな。やて。」
…持ちつ持たれつ?ごそごそごそ。おお!鎧はぴったし!前のよりむしろ!前のは出来合いを手直しして貰ったやつだったけど、今回は目分量であつらえてくれてるっぽい!…剣!…良かった。長さや重さ、刃渡りもグリップの太さ長さも、ほぼそのままだ。親父分かってるなぁ。これ変わると一からノウハウ蓄積し直しだからな。鞘も使い慣れた後ろ腰水平タイプ。抜いたり刺したり…あ!これ刀身と刃の金属が違う!刃紋が出来てる!
「ほう。そこに気付くとはな。鋭くなるが割れやすい硬い鋼を、しなやかで粘りのある柔らかい軟鉄で挟んで研ぎ出してあるそうや。最近開発されたばかりの技術で、手間暇はかかるが斬れ味も剣自体の寿命も全然違うらしいで。」
…妙な分野でサムライの国出身であることを実感。…あとで振ってみとこ。マントもおニュー!ちょっと白っぽ過ぎないか?マントって実は敷物にしたり布団にしたり雨具にしたりのユニバーサル布だからこんなに白いと汚れが目立つなぁ。まあタダだからいっか。着装!RPGフォーム!なんか…かっこ良くね?俺。よくソフトのパッケージにこんな格好の奴いるよ。いかんと思いつつ浮かれる心。
「馬子にも衣装ね。」
ウィンドウ。お前俺の記憶から余計なことわざ勝手に検索すんじゃねえ。…ん?なんか視線を感じるな。あ、さっきの少年がじいっとこっち見てる。タチ…だったっけ?口の端で笑ってちょいと手を振る。…あ、視線そらされた上、逃げられた。傷つくなぁ。
ウィンドウの説明によると、消失したウェルトゥの場所はある程度検討は付くらしい。元々ウェルトゥが安定して存在し易いポイントが何ヶ所かあり、大概そういう場所は、宗教施設や霊山になってると。
更にウィンドウがもつ探知アイテムは元祖ウェルトゥに共鳴する性質があり、弱い魔力を込めることでウェルトゥのあらかたの方角が分かるそうだ。またウィンドウはウェルトゥスポットを把握していて、探知アイテムの共鳴具合と鑑みて、現在のウェルトゥの位置をある島だと推定した。ウィンドウは俺かファムに事情を聴こうとアベさん家へ。
アベさん家には訓練キャンプに来ていた無茶振りエレンとイケメン☆ヴァリーが。で、4人で王都へ。ファムに会いに行くも禊の儀式中で断じて会わせる事はできぬと門前払い。ウェルトゥ探索に向かうから巫女を借りれないかと相談した所、ラムだっちゃ姉さんがついて来た。アベさんは王に謁見し、全ての事情を報告。協力を要請した。すると王から正式にその島の調査依頼が。
実は暫らく前からその島におかしな連中がうろついていると近隣の漁民から通報があったと。ただ余りに辺境なのと、ウェルトゥ活性化騒動への対処で調査に人が割けず、後回しになっていたそうだ。漁民の話では鉄でできた帆のない船やカミナリのような音を立てる飛ぶ機械を見たとか見ないとか。
アベさんは俺の世界の奴らじゃないかと直感。ウィンドウもウェルトゥ最終使用者の俺やファムが何をしたか確かめる為、俺を召喚。バハムート扱い?しかし不発。事が事だけに悠長に待ってもおれず、ばたばた準備してその日の内!に出発。出港から二日目。風向きと潮目の予期せぬ変化から船は禁断の「海魔の盃」と呼ばれる海域に迷い込んでしまった。脱出しようと必死の操船をあざ笑うように突如襲い来るガイコツ軍団。敵の数の多さに辟易するアベさんたち。このままじゃ…という時に、新大阪で降りたつもりで俺とファムが降り立った、と。
消えたのが分かってて、ある場所が分かってるなら…俺、いらなくね?
「おかしな連中の情報がないと、島に着いてからどう動くか決められない。それに島…ウェルトゥがあると思われるポイントがね…ちょっと一癖ある場所で。」
…また試練?
「正解!と言っていいでしょうね。」
うっわ嬉しくねえっ!
「旧帝国のウェルトゥ用神殿があった島なの。まあわたしの塔ほど凝った趣向はないわ。侵入者を食べる森、挑戦者を呑む砂漠、それを越えれば楽園に誘う女神の泉が待つ。」
…女神の泉だけコースでお願いします。
「塔を長年管理してきたけど、ヒロほど短時間で各試練を乗り越えたチャレンジャーはいないのよ。結局仲間から一人の死者も出さずに。あなた…なんていうか場慣れしてる?感じがするんだけど…普段どんな暮らしをしてるの?」
…普通の学生だよ。
「石像の間の時、石像が動く!って一人で見張ってたでしょ。」
…そか。お前モニターしてたんだったな。見事にはずしたよ。悪かったな。
「どうしてそう思った?以前にそういう罠を経験してるの?」
…えーと。
「階段の堂々巡りも、死ぬまで気づかない挑戦者も大勢いる。鎧の王も仲間がやられたら余計に鎧を倒そうと躍起になるのが普通。闇の間の心の怪物…ニセ巫女を見破ったのはともかく、あんなにあっさり自分の心が生んだ怪物だって気が付くなんて。」
…なんて説明すればいいのか。パターンだからな。
「パターン?」
ゲームや、マンガや、映画の。…つまりおとぎ話や創作冒険譚のさ。石像は結局動かなかったし、階段や王の絵、ニセファムナだってもっと早く気付くべきだったと思ったぞ、あの時は。
「そういう…魔法や試練や罠が登場する冒険譚を沢山知ってる、ってこと?」
いや自慢するほどじゃないよ?けどま、平成を生きるオタク青年としては人並みに。
「あなたの言葉、言語中枢と記憶野を参照しても意味が良く掴めない単語が混じってるけど…わたしたちより、魔法や試練や罠のパターンを多く知ってるわけね?」
…そうだな。そうかもな。
「じゃあ呼んだのは正解じゃない。」
……。裁判長!誘導尋問です!
「ウェルトゥの縛を解いたのはあなた。取りに行く先の試練や罠に詳しいのもあなた。呼ぶ前に自分から謝罪とともにやって来るべきじゃない?移動の面倒みてあげただけ有難いと思って欲しいわ。」
…このブラックマジシャンガールが!女だから殴らないけど、いつかギャフンと言わせてやる!




