閑話 私の姉
「何だ、この点数は!あり得ないだろう!30点だと!?」
「ごめんなさい。ごめんなさいっ…」
またやってるよ。最っ低。理科は満点のお姉ちゃんにそんなに怒るなんて。30点は確かにひどい成績かもしれないけれど、いくら何でも怒りすぎなんじゃないの?満点の凄さも知らずに。
私・生野由美には一つ上の姉、絵梨花がいる。お姉ちゃんは理科のテストで満点以外を取ったことがない天才なのだが、他の教科は大体30〜40点というひどい成績だ。そのため、理科以外のテストが返ってくると、
「もう二度とこんな点数取るんじゃねぇぞ!」
「はいっ、ごめんなさい…」
この始末だ。もう慣れたが、父の怒鳴り声はとにかくうるさい。近所迷惑なんじゃないかと思うくらいだ。その大声を間近で聞いてる私や姉、母の気持ちになってほしいと思う。本当に迷惑なのだ。
夕食の後、私はお姉ちゃんの部屋に向かった。お姉ちゃんは父のことをどう思っているのだろうか。
「ねぇ、お姉ちゃんは父さんのこと、どう思ってるの?テストのたびに怒られてるじゃん、視野狭すぎじゃない?」
「でも…悪い点数取った私が悪いから…仕方ないよ…」
「でも理科は満点じゃん!それって凄いことだと思うよ?」
「他は酷いから…」
無理矢理貼り付けたような笑顔でお姉ちゃんは笑った。お姉ちゃんはもう諦めているんだな。でもこれは、おかしいんじゃない?
「学校でもからかわれてるし…ホント憂鬱。」
学校でも嫌な思いをしているのか。初めて聞いたな。お姉ちゃんは学校にも味方がいないらしい。妹なのに、姉の事を知らなかった無力感で押しつぶされそうになりながら私はお姉ちゃんの部屋を出た。
それから半年が過ぎ、私も中学生になった。真新しいセーラー服に腕を通すと、これで私もお姉ちゃんの事を知ることができると思い、胸が高鳴った。
初めての定期テスト。私は全教科平均点程度だった。父は平均点を取れていれば満足らしく、私が怒られることは無かった。お姉ちゃんは今回も怒鳴られてた。理科以外が30点程だったそうだ。父は今日も視野が狭い。お姉ちゃんの悪い所ばっかり見て、いい所なんて目も向けない。
一学期の期末テストが返ってきた。中間より少し点数が落ちている。勉強しないと…そんな中で気になったことが1つ。
「ねぇ、お姉ちゃんまだ?」
そう、姉の絵梨花が帰ってきていないのだ。もう19時だというのに。今日は部活もない。というか、お姉ちゃんは部活に入っていない。絶賛帰宅部である。
「さぁ…?とりあえず先にご飯食べちゃいましょ。」
「あいつの事だ。相当低い点数とって俺達に見せられないからだろ。」
お姉ちゃんが進級して、母もお姉ちゃんに冷たくなった。お姉ちゃんの悪い所ばっかり見て。理科の満点は知らないフリしている。
次の日もお姉ちゃんは帰ってこなかった。学校にも来ていなかった。そして、1週間が経った。流石に両親も警察に行方不明届を出していたが、特に心配はしていていないようだ。私は庭にでて空を見上げる。夏の夜の生暖かい風が私の髪を揺らした。
「お姉ちゃん、貴女は今、この空の下にいますか?いますよね。いると信じています。
ごめんなさい。父さんを止められなくて。
ごめんなさい。上手く寄り添ってあげられなくて。
戻ってきて欲しいです。
また会いたいです。
顔を見たいです。
戻ってきて欲しいです。
元気な姿でまた、理科の知識、教えてくれるのを、待っています。」
私は自分に言い聞かせるように言いたいことを全部言って、溢れてきた涙をぐっと拭った。
こんにちは!ラビットスター☆です。今回は短編ということで、2日連続の投稿となります!今回は、木島みのかさんの書いた話をベースに少しいじってこの話になりました。いつもの理系少女とは雰囲気が全く違う重い話になりました。そして今回、木島さんにひと言もらっているので、ぜひ読んでください!これからもリカの活躍にどうぞご期待ください!
はじめまして!今回の短編を執筆いたしました、木島みのかと申します。今回は主人公である絵梨花の妹、由美が主役の短編でした。絵梨花が異世界に転生してリカとなり、地球ではどういう扱いになっていたのか。絵梨花&由美姉妹の日常が少し覗くことができる短編になったと思います。「理系少女」らしからぬ暗ーい話になりましたね。妹の姉への想いはいかに。この後も時々私が書かせていただいた短編をこちらに投稿させていただくことになると思います。その時はどうぞよろしくお願いいたします!




