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後編10 信太朗⑬

「いやあ、あの時の信太朗殿の戦いは見事でした。」


 熊谷小次郎直家がそう言ってくれる。相変わらずいいやつだ。

 なんかすごくこそばゆい。


 俺は、熊谷郷近くの盗賊との戦いで、スコップを横にして戦い、3人の賊を気絶させた。


 俺の近接用武器の、軍用スコップは、アンダーソン少佐が選んでくれた。


「シンタロー。お前の性格では、刃物を振り下ろせまい。しかしこのスコップなら、相手を殺さずにノックダウンできる。スコップを横にした広い面を相手にたたきつければな。」

 しかし、いつかはスコップを縦にして戦わなくてはいけないかもしれない。


「へえ、信太朗はそんなに強いのか?」


 那須与一が意外そうな顔で言う。


「そうだな俺の家で手合わせした時は、棒で戦ったからな。信太朗、今度はその、ぐんようすこっぷを使って俺と戦おうぜ。」


 曽我十郎は戦いたくて仕方ないようだ。ここまでの道中、敵らしい敵に出会わなかったからな。


「兄上、信太朗お兄様は今日元の世界に帰るのです。そんな時間はありません。」


 曽我五郎こと、とらちゃんは、少し寂しそうに言った。

 俺ととらちゃんは道中仲良くなり、いつの間には俺のことをお兄様と呼ぶようになった。


 そう呼ばれるたび、敦ちゃんの眼が紅く光るように見えたのは俺の気にしすぎか。


「それでは一同。今宵、敦盛殿と信太朗が一度元の世界に戻る。我々は明日出立し、阿波勝浦へ移動潜伏する。」


 熊谷次郎直実が皆をよくまとめてくれる。


「2月19日に源九郎義経公が海を渡ってくる。我らはそれを波際で待ち受け、討つ!」


 皆が緊張感に包まれる。


「敦盛殿が戻られるのは20日後で間違いないな信太朗!」


「はい。それまで直実様は、この青葉の笛を肌身離さずお持ちください。」


 俺は、この熊谷直実という人と作戦などを話し合ううちに、この人の人柄に惹かれて言った。


 この人の元で働きたいという気持ちさえ芽生えた。

 敦ちゃんがこの数か月学んだ農学の知識。彼女はそれをこの時代に役立てたいという。

 俺もそれを手伝えられたら……。


「なあ、信太朗はもう戻ってこないのか?こっちで一緒にくらそうぜ。」


 与一が言う。


 俺は、何と答えていいかわからなくなった。


 熊谷家のみなさんはみんか良い人だし、旅の仲間とも別れたくない。

 しかし、元の世界にも大学のことや将来のこともあるし、なにより、姉ちゃんをひとり残していくわけにはいかない。


「信太朗様は、あちらの世界の生活があるのです。」


 俺の代わりに敦ちゃんがぴしゃりと答える。


「……。」


 このことは敦ちゃんとも話し合った。

 結論、それぞれ元の時代に戻り暮すのが一番良いということになった。



「それではもうすぐ約束の時刻です。」

 

 小次郎直家が言った。


 すこし気まずい雰囲気で、俺たちは屋敷の外に出た。


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