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後編09 信太朗⑫

「で、その少数精鋭の輩ってのが、俺たちってえわけか。」


「兄上、これは思った以上に需要な任務ですよ。」


「それでは俺たちはこれから熊谷郷に行き、合流して義経公を討ちに行くのか?」


「与一殿。与一殿には前にも何度も説明したでしょう!」


「そう怒るな。それに『与一』でいいってば。話しがすんだら、さあ曽我十郎。手合わせと行こうぜ!何にする?剣か、棒術か?弓はやめとこうか、おれが絶対勝っちゃうからな、はっはっはっ!」


「何言っていやがる。それじゃあその弓で勝負だ、那須与一!」


「私も混ぜてください兄上!」


 3人はもう庭に出て弓勝負の準備をしている。

 こいつら大丈夫か、と思いながらも、俺は頼もしさを感じた。

 隣を見ると、敦ちゃんが何かソワソワしている。


「信太郎さま……。」


 何かをねだるような顔つき。可愛いけど、何だろう?


 ああ!そうか!


「いいよ。参加しておいで敦ちゃん。」


 敦ちゃんは嬉しそうに笑うと与一たちの方へ走っていった。


「おーい。私も参加するぞ~!」


 曽我荘で突如行われた武芸大会。

 参加者は以下のメンバー。


①弓の達人、那須与一宗隆。下野国那須神田城出身、16歳、男性。


②相模の怪童、曾我十郎祐成。相模国曽我荘出身、14歳、男性。


③天才少女、曾我五郎時致。別名とら。相模国曽我荘出身、12歳、女性。


④平家の貴公子、平朝臣敦盛。別名敦ちゃん。山城国京都出身、16歳、女性。


⑤大学生、信太朗。東京都出身。


「え?俺も出るの?」


「そうですよ、信太朗様も修行の成果をみんなに見せてあげてください。」


 見せてあげてくださいて言っても、俺のはちょっとインチキ入っているからな……。

 まあいいや、いい機会だ。これから仲間になるんだから披露しておこう。

 俺はリュックサックからクロスボウを取り出し、スコープを取り付けた。


「なんだ、信太朗その弓は?俺もいろんな弓を見てきたが、そんなの見たことがないぞ。」


  与一が反応する。


「私は書物で見たことがあります。石弓ですね。それ。」


 とらは、物知りだ。


「さすがわが妹。何でも知ってやがんな。賢いし可愛いし最高だな。」


  十郎はちょっとうるさいな。



  第一回戦は弓術だ。

  30メートル程離れた板の的に、10発づつ射る。

 的に当たった回数で勝負。


「ちっ、少し外しちまったぜ。」


 十郎は10発射って的中8だった。


「うう。兄上に負けてしまいました~。」


 とらは的中7。

 悔しがり方が可愛い。


「まあこんなもんですかね。」


 敦ちゃんは的中9。

 嬉しそうだ。


「南無八幡大菩薩、我が国の神明、日光の権現、宇都宮、那須の湯泉大明神、 願はくは、あの扇の真ん中射させてたばせたまへ。」


 与一は全発的中。さすがだ。

 しかし、射るたびに「南無八幡……」とやるから、少しイライラした。


「さあ、最後は信太朗様の番です。」


  俺は立ち上がり、クロスボウを構える。


 アンダーソン少佐の言葉が頭をよぎる。


「シンタロー。味方や敵に舐められないためには、最初にガツンとかましてやるのが肝心だ!」


 スコープで的を合わせる。クロスボウの引き金を引く。


 放った矢は、初速300FTS(秒速90メートル)で飛ぶ、的の板には惜しくも当たらなかった。

 しかし矢は勢いそのまま、数メートル先の土壁まで飛び、壁に深く突き刺さった。


 既に威力を知っている敦ちゃん以外の面々が、驚きで目を見開いている。


「兄上……。あれは石弓……ではなさそうですね。」


 第二回戦は剣術だ。


 俺の提案で、棒を使っての勝負となった。


 勝ち抜きトーナメントのくじ引きの結果、俺は十郎とあたった。


「信太朗様、ファイト!」


「ふぁいとって何ですか敦盛様。」


「がんばれってことよ、とらちゃん。」


「へえ。兄上!ふぁいと~!信太朗さんもふぁいと~!」


 いつのまにか敦ちゃんと、曾我五郎時致とらは仲良くなっている。


 試合は、始まって早々、俺は十郎の棒で、しこたま頭を叩かれ敗退した。


 メガネを外しておいてよかった。

 あんな早いのよけられないって。


 なんだかんだで、トーナメント決勝戦は、十郎ととらの兄妹対決となった。


 ふたりが相対し構える。


 十郎の方が、とらより20センチほど上背があり、普通に考えると十郎の圧勝なのだが……。


「はじめ!」


 与一が号令をかける。


 次の瞬間、十郎は脛をかかえ、地面を転がっていた。


 とらの勝利だ。


「見えた?敦ちゃん。」


「いえ、見えませんでした、早すぎます。私との対決の時も、一瞬でした。」


 俺も全く見えなかった。

 十郎もだが、この兄妹の腕はえげつない。


「やったー!わたしの勝ちだ~!」


「いやあ、相変わらずとらは強いな~。」


 十郎は負けたのになんか嬉しそうだ。


 ちなみに与一は、俺を負かした十郎と戦い、接戦の末敗北している。


「では日も暮れたし、そろそろ夕餉にしようぜ。明日からは熊谷郷に向かい当分旅の空の下だから、腹いっぱい食ってくれよ。」


 十郎が俺たちを邸内に案内した。


 それにしても頼もしい仲間たちができた。


 与一の弓と。曽我兄弟の剣術。


 それに俺の近代兵器と、熊谷家の武力が加わって、源義経を討つ。


 あの日話した蛭尾教授の作戦が現実味を帯びてきた。


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