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mission21 次々と起こるイベントに対処せよ!



 転んで、しまった。



 時空の狭間がすぐそこまできているというのに。



『うにょにょにょ』



 もう駄目だ。これにやられて、一生触手まみれになりたい欲望が消えない人間になってしまう。




 そう思って、目を閉じたその時。






「ほーちゃーん」





 太郎の呑気な声が、聞こえた。




 目を開ければ、すぐそこに太郎がいる。




「どうしたの? 転んじゃった? お尻触ろうか?」

「……今も別に、触るタイミングじゃないな」




 時空の狭間は消えていた。太郎が来ただけで? いや。



「ほーちゃんっ! 大丈夫? けがないっ?」



 春日野みけのもそこにいた。



『いつもの通り、太郎が分かれ道まで歩いていたら、春日野みけのと会ったぷん。それで、みけのイベントが始まってこっちに来ることになったぷん。来たらポーズ使われたからびっくりしたぷん』



 つまり、俺が時空の狭間との鬼ごっこをしている間に太郎達はこっちへ向かってきていたのか。そして、俺が太郎達と出会って正しいルートに入ったから時空の狭間は消えたと。間一髪だった。


『ちょっと待て。太郎に何かあったらテレパシーで連絡するように言ったよな?』


 太郎もみけもいるのでテレパシーで話しかけるが、



『ぷん。ちょっとゲームウォッチに夢中になってしまったぷん』



 思わず怒鳴りたくなる答えが返ってきた。この時代でももう旬は大分過ぎてるだろ。あと飛びながらやるな。


「あっ! ほーちゃん、膝すりむいちゃってるっ!」


 みけのはそれを見て、ポシェットから絆創膏を取り出し、貼ってくれた。


「いたいのいたいのとんでけっ!」


 癒された。


「じゃあ僕も」


 言いながら、太郎はかまきりを同じ場所に乗せてきた。



「ひぐゎっ!?」



 変な声が出た。


「なんでかまきり!? なんで怪我したところにかまきり乗せちゃうの!?」

「ほーちゃんかまきり嫌い?」

「そういう問題じゃなくて、どこに持ってたか分からないかまきりいきなり人の膝に乗せちゃ駄目なんだよ!」


 びっくりして払い除けてしまったが、かまきりは元気に歩いて行った。命を無駄にしないでよかった。次は太郎に捕まるなよ。




 ぶちっ。




「あらっ。こんなところでアイドルの私に出会えるなんて一生分の運を使い切っちゃったんじゃない? もしかして出待ち?」



 意気揚々と腕を組んで現れた宮藤まなみの足元から、不吉な音が聞こえた。というか、こんな道端で出待ちはしないだろう。


「もしかして……ハフハーフちゃんっ!? ドドスカピンポンパンのっ」

「ドドスカポンピンパンね」


 細かい訂正をして、宮藤は何やら腕を振り始めた。



「煌めくステージに咲く一輪の薔薇のようなかすみ草! あなたのハートにピリリとスパイス、これで完成召し上がれ! ハートはドキッと涙はサラッと愛と英知と希望とフラッシュ! あなたのアイドル・ハフハーフ! 雅に素敵に登場よっ!」




 長い。




「わーっ! 本物のハフハーフちゃんだっ!」

「ふふん、見なさい下種ども。これがアイドルを目にした時の正しい反応よ」


 いつの間にか宮藤の中で俺と太郎が下種扱いされていた。それはさておき。



「宮藤」

「何? 挨拶なら事務所を通して頂戴」



 大分調子に乗っているところ申し訳ないが。



「右の靴の裏を見てみろ」



 宮藤は少しの間きょとんとして。


「私の足の裏が見たいなんて……あなたさてはファンの中でも最下層の変態ね!」

「足じゃなくて靴の裏だしファンじゃないし変態でもないし俺は逆に見たくないんだよ。黙って一人で見ろ」


 冷たい俺に慄いたのか宮藤は黙って足を持ち上げた。その時点であまり見ない方がいいものが少し見えてしまったが。




「ひぐゎっ!?」




 変な声を出した。


「え、な、これ、な? 虫?」

「かまきりだったな。お前が潰すまでは」


 宮藤は片足でぴょんぴょん飛び回り、



「え、ど、どうしよう。え、え、お気に入りの靴なのにっ! かま、かまきり? う、うぇ」



 半泣きで混乱していた。さすがに可哀想だな。


「とりあえず家に帰って靴洗ってこい」

「無理っ! 足下ろしたらかまきり踏んじゃう!」


 どちらかというと靴についてる方がかまきりの破片で、潰れた本体は地面に貼り付いているが。……仕方ない。



「じゃあ肩貸すからそれ持ってけんけんして帰れよ。ドラゴン、肩貸してやれ」

「え、僕?」



 見れば、太郎はいつの間にか両肩にかまきりを乗せていた。なんなの? そういう特技?


「無理無理無理っ! 今かまきり両肩に乗せてる人とか無理っ!」

「今でなくても割と無理だろ」


 そんなわけで、太郎とみけに先に行ってもらい、俺が肩を貸して宮藤を家まで送ることになった。時空の狭間は出てこないようなので、これは正しいイベントのようだ。だとしたら太郎に宮藤を送って欲しかったところだが……仕方ない。



「わ、私が肩を持ってあげるなんてなかなかないことなんだからねっ!」

「俺もかまきり踏み潰した奴に肩掴まれるのは初めてだよ」

「わーっ! わーっ! それ言わないで! 足の裏まで臭くなっちゃう!」



 自覚すると足の裏までかまきりの臭いになる方が怖いんだが。というか、かまきりの臭いってそんなメジャーなものなのか?


「ここよ。私の家が分かったからって、今後ストーカーしないでよね」

「かまきりの寄生虫の話でもするか」

「やめてやめてやめて!」


 ようやく肩から手が離れて、太郎とみけの元に戻ろうとしたが。



「そうだった……」



 絶望した宮藤が玄関前で呆然としていた。






「お母さん今日お仕事だ……」






 宮藤の靴の裏は、まだ黒く汚れたままだ。







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