祖母来星
NGC223年8月16日
夏休みも中盤に入り俺達ゴトウ家のメンバーは母の故郷のある惑星バーシストに向かうための準備をしている。
といっても父さんは俺達が出発する前日とその日に軍からの断れない操縦講習がスケジュールに含まれているため父さんだけ翌日のバーシスト行きの定期船に乗ることになった。母さんの実家に行く理由は母の帰郷もあるが今年はどうもグランマは俺とサヨコに話があるようだ。
俺の部屋で準備をしているときにノックが聞こえ「どうぞ」と進入を許可した後入ってきたのは、サヨコだった。
「お兄ちゃん入るね。」
「サヨコの方は準備OK?俺の方はあともう少しで終わる。」
「私の方は終わった。けどグランマは私達に何の話があるかな?」
「ほら、グランマの家って西暦から続く宮廷料理人やプレジデントクラス相手に料理を提供して財を成した料理人一族の末裔だから秘伝レシピで出来た料理でもご馳走してくれるかと思う。」
俺らの母さんリリアン・ゴトウは旧姓リリアン・レジストといい、先祖は地球にあった王国の宮廷料理人やプレジデント専属料理人を多く排出してきた料理においては名門の一族であり、バーシストに移籍してからもその事を誇りに思い料理人になることが一族の誇りと子々孫々言われてきた。
「そうだと良いけど」
と妹と話をしていたときに自宅の電話に着信音が鳴ったので俺はリビングに向い有線電話の前に行きディスプレイにはアリシア母さん(グランマ)と表示されていた。
「言っているそばからグランマから電話だ。」
ちなみにグランマは英系バーシスト星人だが、バーシスト語と地球語だとグレートブリテン地方の言語は喋れるがヒノモト地方とロシア地方の地球語の会話は理解出来るが喋れない。
その事もあり俺達ゴトウ姉弟妹は全員日系地球人とバーシストのハーフではあるが戸籍上は地球人になっているため、バーシスト語は日常では不要だが年一とはいえバーシスト星に行く都合バーシスト語の読み書きは必然的に覚えることになった。
その事もあり母から週一で終日バーシスト語のみで会話する日(第三者は除く)を設け、喋れないと言うことをなくし、たびたびバーシスト語を喋っていたのはこう言った理由である。
俺は有線電話に近付き受話器を取り
「(バーシスト語)ハロー。」
『(バーシスト語)その声はマサキかい。久し振りだね。』
「グランマ、お久しぶりです。」
『どうやらその様子だとリリィはまだ帰ってきてないのね。』
ちなみにリリィというのはグランマが母リリアンを呼ぶときの愛称である。
「えぇ、仕事を可能な限り休み明けに残したくないということで。」
『全く、料理の道をあきらめた後色々心配していたけど、どうやらうまくやっているみたいね。』
「所でグランマ、今日は一体どんな用ですか?」
『あ、そうそう。いきなりで悪いけど、明後日地球に到着する定期便に乗ってそっちに行くから。』
地球とバーシスト星はNGCで使用されている一般的な惑星間を星間超光速航行なしの通常航行でも半年はかかる程度の距離ではあるが、星間超光速航行を使うと約10時間で到着出来るわりと近い星である。そのため、地球と惑星バーシストは星間超光速航行標準装備の星間航行船の定期便が地球時間で一日2便出ているのである。
「え、藪から棒ですね。俺達3日後にバーシスト行きの定期便に乗る予定で準備していますよ。」
『それは申し訳ないわね。でもこっちも急遽地球のヒノモトに行く予定が入ってきてね。』
「何があったのですか?」
『まず、私がレジスト家の当主を次男のパトリックに譲ったのは知っているわね?』
「ええ、半年前に母から。」
『本来だったら我がレジスト家の人間が銀河の何処でも料理屋を開くときには当主に試食をしてもらうのが習わしなのよ。』
「と言うことは親戚の誰かが地球のヒノモトでレストランやビストロを開くって事ですよね?」
『そうなのよ。だけど、パトリックったら年甲斐も無く奥さんと夜のマット運動頑張りすぎて腰痛めたらしくて、とてもじゃないけど星間航行船での長時間移動は問題無いけど地球を歩き回るのに耐えられないらしいから、急遽私に白羽の矢が立ったのよ。』
パットリック叔父さん何やっているんだよ!とも思ったがあえて声に出さないでおいた。
「親戚の誰かが地球のヒノモトで飲食店を開くからグランマが急遽来るのは分かりましたけど、パトリック叔父さんの件はもう少しオブラートに包んで下さい。」
『あら、コレでもオブラートには包んでの発言よ?私が地球に行って試食と観光とそのついでにファリスも連れて行くから私達を地球観光のサポートをお願いしたいのよ。』
「え!?ファリス叔父さんも来るの?頭痛くなりそう。」
ちなみにファリス叔父さんは母さんの末弟になり、当然ながら純血の英系バーシスト星人。
母さんはグランマの第1子になり、グランマの実子は6男5女で養子も含めると15人の大家族である。
しかし、叔父とは言ったがファリス叔父さんはグランマが59才の時に産んだ子で、年齢的に言えば俺より1つ下なので叔父と言うより母方の従弟と言った方が年齢的には合致する。
母とは単純見積もり40以上も離れているので母さんとファリス叔父さんと歩いている時も親子に見えるが、れっきとした姉弟である。
『まぁあの子リリィの子であるあんた達にはろくでなしは承知の上だけど、本家に一人残しても仕方ないからついでに連れて行くけど。』
「分かりました。母にもその旨は話しておきますので」
『そうお願いね。それじゃ今度は地球港で会うことになるわね、またね。』
「ソレでは失礼します。」
俺は受話器を置いて深めに溜息をついた後、寄ってきたサヨコに端的に話した。
「グランマが地球に来るのは別に良いけどファリスおじさんはちょっとねぇ」
「そう言ってやるな、サヨコ。マサキとサヨコは物心ついたときからファリスさんいたからお前達は年の近い従兄弟に近い立ち位置だが、私にとっては今のマサキぐらいの時にいきなり出来た叔父だから私はお前達以上に複雑なんだぞ。」
実は我等の姉ミヤコ・ゴトウもバーシスト星に行くために一度実家に戻ってきており自室で荷造りをしていた所電話が鳴って俺が応対している時にリビングに来ていた。
ちなみにミヤコ姉さんは作業しやすいように赤いTシャツにデニム地のロングパンツとラフウェアであるが、相変わらず母親と共にスタイルは良い。
「そうは言ってもミヤお姉ぇ、私アイツ嫌い。ママを実姉なのにババァ呼ばわりするところが特に。」
「俺だってあの人は苦手だが、質の悪い親戚と割切って無味乾燥の付き合いをすれば良いだけだとおもう。」
「まぁとにかく、この事は私から母さんの方には私の端末からメールを出しておくから、マサキかサヨコはヒノモトでグランマが喜びそうな所ピックアップしておいてくれる?」
「お兄ちゃん、そっち頼んで良い?私は息抜きにお茶入れるから。」
「わかった。それにしても、ミヤコ姉さん。難しい注文だな。」そう言いながらも俺は共用PCの電源を入れて(イングランド系バーシスト星人に向けての最適なヒノモト観光)と検索をかけた。
その2日後俺達ゴトウ家の人間と今回店をヒノモトで出す親戚であるレジスト家の人は地球の衛星にある宇宙港に着ている。
だが正直面識がない。ソレも仕方ないな。今回レジスト家の人間とは言ってもグランマの兄の孫、つまり俺達との血縁は又従兄弟だ。
流石に母親と同じレジスト一族の人間とは言え完全に初めましてなので交わす会話もないとそう思ったとき、俺の知っている女性達が近づいて来た。
「あ、マサキさん。お久しぶりです。」
「マサキ君、ゴトウ先生。私達を迎えに来た・・・・・ワケでは無さそうですね。」
そこに現れたのはクラスメイトのユナ・フェルボート・ベナスとその双子の妹ミナ・フェルボート・ベナスであった。
「あ、ユナさんにミナさん半月ぶりですね。ここに居るってことは今地球に着いたって所だね。」
「「そうなのですよ。」」見事にユニゾンした。流石双子。
「まぁ俺達が宇宙港にいる理由としては母方の祖母が急遽地球に来ることになってそのお迎えに。」
「なるほど。」とミナさんが短く返した。
「ユナさんとミナさんはこれから地球に降りるの?」
「はい。ですが、ここから大気圏シャトルに乗って地球で残りのサマーバケーションを過ごす地に向かいますわ。」
実際この地球の宇宙港に来る方法として宇宙港に直結している衛星軌道エレベーターを使うか、先程ユナさんが言ったように大気圏突入シャトルを使う方法の2つがある。衛星軌道エレベーターの方が安価で1~2時間ほどで地上と宇宙港を行き来出来るのである。
が、地上に降りてから各方面のリニアレールか航空機に乗らなければならないのでなれていない人には酷な経路なのである。
対して大気圏突入シャトルは宇宙港から各地域の大気圏用シャトル発着対応している各エリアの空港に直接行けるので衛星軌道エレベーターよりは目的地に直通出来るが運賃が割高である。
「ソレじゃあ私達は迎えの大気圏突入シャトルがもうじき来る頃なので失礼しますね。」
「ソレではマサキさん、ゴトウ先生また学園で」
俺は軽く手を振りフェルボート姉妹はシャトルポート方面に歩いて行った。
???「(バーシスト語)おやおや、マサキにあんなかわいいガールフレンドが出来たのかい?しかもベナス星のお姫様姉妹なんてますます隅に置けないね。」
声のするほうに視線を向けてみるとそこには俺達のグランマのアリシア・レジストがTHE中世イングランド人の旅行スタイルでボバリング機能付き旅行カバンをひっさげて現れた。
「(バーシスト語)グランマ、お久しぶりです。彼女達とは学友ですけど、まだそんな関係じゃないですよ。」
「マム、久し振り。」
「リリィ、あんたも元気そうで何よりだわ。」そう言い終えて母とグランマは再開のハグ&ライトキスをしていた。
ただ、俺達からすれば祖母や母との再会に喜んでいるが、又従兄弟の兄さんは元とは言えレジスト家の御当主様で、しかもこれから店を開くに当たって自慢の料理を評価される事をふまえるとあまり喜んではいないようだ。
まぁ仕方ないな。レジストの名を名乗って料理人で生きていくには相応の根性と腕前が必要になるから。前記したとおり、レジスト家は西暦の時代より宮廷料理人やプレジデント専用料理人として財を成してきた一族だからと言うのもある。
「おいおい、マムだけじゃなく俺も居ること忘れんなよ。」
そう声をかけてきたのは俺達兄妹には戸籍上叔父さんになるファミリオン・レジストになる。ファリスというのは愛称である。
「あ、いらしてたんですねファミリオン叔父さん。」と明らかに事務的な対応且つ冷淡にサヨコが返した。
「相変わらずかわいくねーな流石ばばぁのむす・・・・・いってーな」
案の定実の姉をばばぁ呼ばわりしたことにグランマから鉄拳制裁が飛んできた。
「ばばぁじゃなくて姉さんでしょうが!あんたは何時になったらその悪癖直すんだい?」
ちなみにファリス叔父さんは料理の実力は全く無く包丁すら握るのが面倒くさいらしく、目玉焼きはおろかカップラーメンですら作らない。
パトリック叔父さん曰く(よくあれだけ料理に無関心で勘当されないのが不思議)とつぶやいていた。
ちなみにグランマとファリス叔父さん以外にレジスト家の関係者は本来であれば当主様専用料理人チームとお世話係のメイドさんも一緒に来ているのだが、今回は数名のメイドさんのみである。ただし移動中はスタンダードなレディスーツであった。
グランマが到着した後に軌道エレベーターに乗り込んだ後ヒノモトカントウ地方方面のリニアライナー乗り込んだ後、グランマはカントウ地方の一等地にあるグランドホテルを予約していたらしくカントウに到着してタクシーと言うよりコッチも手配していたリムジンに乗り込んだ。
リムジンの移動中にグランマが
「そういえばマサキにサヨコは丁度良い年齢だし我が家の呪いのことを話すことにするわ。」
「我が家ってレジスト家のことですよね?」
俺がそう訪ねるとグランマは肯定の方向にうなずいた。
「マム、別に話さなくてもいいんじゃね?ばば・・・・クソ姉貴はもうレジストの人間じゃないし。」
「ファリスあんたは黙っていなさい。私の娘の子供達には知っておいた方がいい話よ。」
「へーい」と心ない返事をした後ファリス叔父さんはだまりグランマが語り出して話をまとめると・・・・
ご先祖様が地球に居た頃ある一族の料理人が呪術師のお客様に料理やおもてなしは問題無かったが、最後の最後に一族の恥とも言えるポカミスをしてしまいその呪術師に(お前達の一族の料理人で実力試験を受けた者が10位前後の料理人は適量な調理法をしても炭と塵しか作れない呪いをかけてやる)と言われたらしい。
その当時は変な格好をした奴の戯言だと思ったが、翌年から行われている族長の前で披露される宮廷料理人昇格試験で異変は起きた。
実力試験で1~9位までは問題無かったが、本当に10位と11位になったモノはその後炭と塵しか作れない状態となった。その後レジスト家出身の料理人で宮廷料理人になれるのは実力試験の上位8人までとなりそれ以外は塵と炭を作らないなら宮廷以外で腕をふるうことは許された。
しかしNGCになってもグランマの一族は呪いの一種とも言えるほど根強かったのである。
そのため希に適量な調理法をしても塵と炭しか作れない人物が希に出てくる事態である。
ちなみに母は元々プロの料理人を目指していたが調理学校の実力試験で12位の成績を収めて卒業後から適量な調理法をしても塵と炭しか作れない体質になってしまった。
「そうか、母さんが的確な火加減と調理法をしても塵や炭しか作れなかったのはそういうことだったのですね。」
「でも今となってはそのおかげでエイタさんと結ばれたけどね。」
その後紆余曲折あって父さんに胃袋をがっちりホールドされ結婚して今に至る事を母さんに聞かされた。正直砂糖を吐きそうだった。
その翌日ヒノモトにビストロを出す予定である又従兄弟の料理試食が行われて見事合格し出店を許されたのであった。
又従兄弟の開いた店とあって我がゴトウ家も定期的に外食をそこですることになった。
NGC223年8月18日
ここはPG学園の防音と電波遮断が出来る会議室の一つでコウ・リンシーが勤めているファクトリーのメンバーが作業用のつなぎでなくスーツ姿でPG学園に来ていた。
この会議室にいるのは学園長であるジェームス・アンダーソンjrとコウ・リンシー副班長とシュナイダー・ウッドマン班長の3名のみだった。
理由は納品でなくあるPGの解析結果が出たのでソレの報告に来ていた。
「報告は書面の分と先程の説明で以上なります。」
「そうか、報告ありがとう。すまなかったね、夏期休暇返上でODINの解析と解体を依頼して。」
「コレも仕事ですから。」
「しかし、解せないな。OSこそ強化人間専用メサイヤを搭載していたのにスロットやペダルはカスタムアップされていても一般人PGライダー反応速度の許容範囲に調整されていて、パーツも強化人間用にチューンされていない仕様になっているのは。」
「あの機体は外見こそアレクト製ですが、パーツ類はJAXION製やライセンス契約したアレクトのパーツなら混ざっていても不自然ではないですが、フェイロンがオリジナルPG開発に着手する前にフェイロンオリジナルと言っても疑問があるアレクト製の第2世代のメーンフレームを素体にフェイロン製のパーツが組み込まれていたことが不自然でしたね。」
「フェイロンはオリジナルPG作成に着手した記者会見は先月の28日、それ以前にフェイロンのパーツがある。・・・・・・と言いたいがメーンフレームに装備するアクティビティパーツはフレームとセットでないとオリジナルとは言い難いですからね。」
「学園長ここからは俺の推測にしかならないが、いいか?」
ウッドマンが進言したのでジェームスは「どうぞ。」と短く許可した。
「もしかしたら鮮血の狼はあの野郎と機体を早急に発見させたかったのでは?」
ウッドマンの進言に少し思考したジェームスは
「一理ありますが学園の入学試験時に身分ははっきり分からないなんて事は有り得ません。誰かが偽造をしなければね。」
「なるほど、学内の人事じゃ俺達には関与できないから報告は終わったから退出する。」
そう言った後ジェームスは肯定の方向に首を振った
「ソレでは学園長失礼します。」
コウ・リンシーがそう言った後ウッドマンとリンシーは退出した。
「さて、学内にいる獅子身中の虫は早急にあぶり出して処分しないといけませんね。」
「いかが致しましょう?学園長。」
学園長の真横には先程までは居なかった諜報部の人間が片膝立ちで待機していた。
「現状は発見してもある程度泳がせておきましょう。次にモーションを起こす可能性があるのは文化祭前後ですので、その近辺になったら証拠が集まり次第確保して私の前に連れて来なさい。ソレが生徒なら表向きは自主退学、教員なら自主退社する方向で行きます。」
「分かりました。」
そう言い残した後戸から出て行かずいきなり消えた。