期間限定の相棒SIPPUUカスタムMINATUKI(水無月)
グランマがバーシストに帰る前にあんな事を聞かされて母がその呪いにあることに驚いたが、まぁそれに関しては母さんが調理しなければほぼ関係無い呪いなのでそれほど心配はしていない。
あの後グランマが帰国した後フェルボート姉妹に誘われて最寄りのビーチに遊びに来ていたが俺以外にもフェルボート姉妹の親しいクラスメイト数人も誘われていたので海で泳ぎ、スイカ割り、日本式海の家で昼食等と海を楽しんだ事もあった。
もちろん夏期休暇中にクリスちゃんも正式に我が家に養子になったあと流石にサヨは彼女の出自にも養子になったこともビックリしていたが。
そうこうしているうちに夏期休暇は終了した。もちろん夏期休暇中に出された課題は全部クリアした。
MGC223年9月1日
今日は2期目の始業式と言うこともあって学園長のお言葉とショートホームルーム中にコバヤシ先生がボードにグラップと書いて一定間隔を開けてウォーリアーと書いて、重量PG、標準PGと書いた。
「ソレでは新学期にもなりましたので、二週間後に開催されるクラス別PGグラップ・ウォーリアー対抗戦が行われますので自薦他薦問いませんのでいませんか?」
「某、ウォーリアー重量級に志願します。」
「それならあたしはウォーリアー標準PGクラスにエントリーします。」
センイチとメリッサさんが率先的にエントリーした。
センイチはHONET SPEARをカスタムしたKIJINMARU(鬼神丸)があるから足回りを強化すればウォーリアーで充分勝てる、メリッサさんは特にカスタムしていないRAIUNだから格闘戦や白兵戦をするには諸々カスタムチューンしないといけないようだ。
「それでは私がグラップの重量級に出場します。」
「それじゃ俺は標準級のグラップに。」
ユナさんもウォーリアーにエントリーしようとしたが生憎彼女の機体はHONET SPEARのカスタム機のDIAMOND FLOWERは武器を使用しての白兵戦やウォーリアー使用のためセンイチと出場レギュレーションで被ることからグラップ重量型にエントリーしてロックウッドが標準級グラップにエントリーした。
いや、お前土木作業するためにPG学園入ったのにあえて格闘に参戦しなくても良いのだが。
「他にいませんか?いませんでしたら、今回のクラス別PGグラップ・ウォーリアー対抗戦出場者はグラップ標準級バーナーズ君、同じく重量級はフェルボートさん。ウォーリアー標準級リードさん、同じく重量級はシノミヤ君で決定となります。」
その拍手多数でこのメンバーがクラス別PG格闘戦の出場者が決まった。
今更かも知れないがセンイチが目指しているアークウォーリアーはPGファイトの最高峰大会の名称であってソレのグランドチャンプになることが夢だ。
その後俺達はPGの1期目の復習を兼ねて基礎動作試験をするため第1アリーナに集合し、課せられたが大半の人がブランク無くぎこちない動きをする者もいたがそれほど気にする程でもない。
『ヨハネくん。もう少しスピード緩めて下さい。そのスピードだと曲がりきれませんよ。』
『はい。』
『シノミヤ君。速度はそのままで良いですがもう少し重心を低くして下さい。』
『御意!』
何をやっているかと言えばRAIUNやそれぞれの専用機を使って第1アリーナでランドスピーダを使用してのラントレーニング5周である。
普通そういった復習は歩く、ランドスピーダ無しの走る、飛ぶ、物を掴むと言うのを想像すると思うが、残念ながらPGにおいて最も難しいのは陸用に限ればランドスピーダを使用しながらのボディーバランスキープ力である。
ソレを1年1期の集大成としてこの時期にソレの再確認を兼ねて始業式とショートホームルームの後に1年生全員はこのテストを兼ねたトレーニングが行われるのは恒例行事である。
俺がMUTUKIからSIMAKAZEに乗り替えて直ぐに慣らし運転を兼ねて実地をしていた時に他のメンバーがスラロームトレーニングをしていたのはコレの練習も兼ねていたのである。
もちろん俺もこの訓練は夏期休暇中に教習所に通ってスラロームトレーニングを実技クリアの加点は付けてもらえた
まぁ案の定と言うべきだな、初期シミュレーターで135点以上叩き出したメンバーはブランクを感じさせないライディングテクを駆使していた。
もちろん俺同様夏期休暇中にランディングテクを落とさないように定期的に学園内の教習所に通いブランクをほぼゼロに戻しておいたので特にモーションは問題無かった。勿論SIMAKAZE のスピードと耐Gに体が持つように夏期休暇中は体を鍛えることを重点に置き、父さんが用意してくれたSIMAKAZE用シミュレーターでモーションや最大速度の確認をしていた。ユキトも俺と同様SIMAKAZEのシミュレーターをするために頻繁に自宅に来るようになった。
ユキトがSIMAKAZE専用のシミュレーターをするようになったり俺のSIMAKAZEを使って実機トレーニングをする理由は、どうやら夏期休暇に入って数日後にIPFA(国際Powered Garyフォーミュラ協会)が公式にPGフォーミュラのカテゴリーワン(自動車レースのF1同様レースの最高峰レース)にPGX第1世代(RAIUNとSIPPUU)での出場を停止することが明らかになった。
ソレによりPGフォーミュラカテゴリーワンはレース専用機かマルチフォーム機第2世代のSIMAKAZEと同じく第3世代のOYASIO(親潮)を使用したレースがメインとなる事になった。勿論ソレよりグレードの低いカテゴリーツー以下のレースにPGX第一世代は使えるままである。
『フォールダート君。良い感じよ。特にデルタターンでタイム短縮しているところが』
『ありがとうございます。』
基礎動作試験も無事に終了しクラスのメンバーと昼食を取りこの日の学園生活は終了しPG学園での2期目がSTARTした。
NGC223年9月3日
PG学園も2期がSTARTして最初の土曜日。
PG学園は休校日であるが、クラブに所属しているメンバーは休校日でも学園に来ている。
理由としては月末にある文化祭の出し物、と言うよりメインイベントのクラブ対抗PGフォーミュラレースに出場するための準備をするためだ。
俺は整備クラブのメンバーとレース用PG SIPPUUカスタムのランドスピーダ系と足回りの調整に学園に来ている。
相も変わらずケンのヤツはクラブ紹介に使う名目でビデオ動画を取っているがこいつも整備をさせればフェイには劣るが腕はある。俺が言えた義理ではないがお前ホントにマリンネイチャー志願者か?
と思ったが、よくよく思い出してみるとマリンネイチャーは事によっては俺が目指しているエマージェンシーサイバーズエアパイロットと同じ様なことを海中や海上で行うことも求められるので整備技術はなにげに要求されることもある。
俺はクラブ対抗PGフォーミュラレースのクラブ代表のライダーとして選ばれてしまった。理由は整備クラブのメンバーの中でライディングテクが高かったからである。
本来であればコレは2年生が在学中に各クラブ活動を通して陸士免許取得後にどれだけ学園で培った技術をお披露目することから、文化祭のフォーミュラPGロードレースにはパイロットは2年生が選ばれることが多い。
2年生が多く起用されるのはこの文化祭のメインイベントであるクラブ対抗フォーミュラPGロードレースや文化祭イベントにあるPG操作や整備技術を披露することによってPGロードレースと並んでスカウトに自分を売り込む最大のチャンスになるからで有る。
『よーしマサキ、接続できて宙に浮かせたから脚部アクチュエータ系統とランドスピーダ少し動かしてくれ。』
SIPPUUは先程までは地に足が付いていたが転倒防止の為に腰部と肩部にあるEXPソケットを介してワイヤーで床から数十㎝ほど吊した状態にしてある
「わかりました。」と短く返した後、ペダルを踏み込んだ。
股を最大まで上げて、左膝を限界まで曲げて3秒ほどキープした後左足を元に戻し右も同じ様に動かした。その後ランドスピーダのランモードにスイッチを入れて1分ほど空回しさせたが特に問題無く稼働していた。
『どうだ?マサキ。何かアラーム出たか?』
「問題なしです。出力を抑えて地に足付いてない状態でも俺の思い通りに動いてくれます。」
実はPowered Garyを起動させるにはイグニッションカードともう一つ出力を30%まで抑えて各関節を駆動させることの出来るメンテナンス用に使うイグニッションカード、通称メンテカードをスロットに挿入している。
メンテカードをカードスロットに装填するとスラスター最大出力と火器管制に制限が付くが、一般動作には支障をきたさないためテスト動作にはこちらのカードが使われることが多い。
「そりゃそうだろ、この機体、SIPPUUカスタムのアクチュエータ反応速度はお前さんの旧相棒のMUTUKIをベースに調整した機体なのだから。」
なるほどそりゃ俺に馴染むよな。
まぁ何故俺がパイロットになったかと言えばパイロット整備クラブの2年生にはスカウトをまってビッグウェーブに乗ることをせずに堅実に建設土木関係のPGパイロットや整備士になりたい2年生が多いため今回は俺が選ばれた。といってもPG関連の建築業もスカウトに来る事を念頭に置いたらソレすらも棒に振っている気がする。
『よーし、マサキ。ワイヤーを下ろして地に足着けてから足回りに装甲乗せるから一度降りて良いぞ。』
「わかりました」と短く返した後地に足が付いたのを確認した後、メンテカードをスロットから取り出しスリープモードに切り替えてディスプレイ付メットから接続プラグを外し、コックピットハッチを開けてシートが降車位置までスライドしSIPPUUから降車した。
昇降タラップに足を付けた後メットを外し、SIPPUUの足下にいた先輩を含めたクラブメンバーにタラップから顔を覗かせ「俺も装甲取り付け手伝いましょうか?」と聞いたが
「装甲付けたら直ぐに走行テストするから、ソレまで休んでいて良い。」
俺は素直にそれに従った。
流石にタラップや床に直座りする訳で無く整備クラブが活動拠点にしている第4アリーナW-1ピット近くにあるパイロット待機室に移動するとそこには作業用つなぎではなくPG学園の夏服を着ているフェイがいた。
「お疲れ、マサ君。」そういって俺に向けてペットボトルに入ったグリーンティーを投げてきた。
勿論ソレを取り損ねるほど耄碌はしていないのでしっかり受け取りふたを開けて半分近く飲んだ後
「ありがと、フェイ。丁度喉渇いていた所だ。」
「どういたしまして。なんかマサ君、最近整備士よりパイロットの方が様になってきた気がする。」
「そりゃ、エマージェンシーサイバーズエアパイロットって目標出来たしパイロットスキル向上しなきゃ始まらんから。そっちの方がどうだ?」
「うん、ボクは相も変わらずじっちゃんの、と言うよりリンシーファクトリーで仕事したいのは変わってないよ。ここで教えてくれる整備技術はじっちゃんに比べるとちょこっと低いかな。」
「いや、バンセイさんの整備術が群を抜いて卓越しているし、なによりPGレーサー界の整備の神様だったからね。といっても俺にとっても機械のメンテナンスがうまい幼馴染みのじいちゃん位の認識しかなかったけどね。」
「ボクもじっちゃんの凄かった時代はデーター上でしか知らないし。ソレとクラスの方の出し物も良い感じに出来て来ているけど、クラスの催し物の都合上コッチには顔を出せないけどその分、こんな風に差入れ持ってくる位しか出来ないかな。」
「それでも充分だよ。」
フェイと雑談をしていたときにインカムに
『マサキ、脚部装甲組み付け終わったからガレージに戻って来てくれ。』とケンから連絡があった。
「分かった直ぐ行く。」と短く返した。
「今のケン君?」
「ああ、SIPPUUの足に装甲付け終わったからテストだってさ。」
「そっか、頑張ってね。マサ君。」
「お茶、ごっそさん。」そう言って待機室を出た。
ガレージに戻りSIPPUUのコックピットシートに座りシートがコックピットに収まりハッチを閉めた後イグニッションカードを挿す前に
『所でマサキ。テストランする前にそろそろこのSIPPUUカスタムに名前付けたらどうだ?』
と言うのもクラブ対抗PGフォーミュラレースに出場する全てのクラブに共通でSIPPUUが支給されジェネレータ交換やスラスター出力調整をせず飛翔能力を持たせない事を除けば、カラーリング、機体ネーム、足回り、装甲等が自由に選択できるので有る。
「そうだな、せっかくだしこのSIPPUUカスタムは俺がパイロットの間はMUTUKI(睦月)と同じように旧暦に使われた月の名称から取ってMINATUKI(水無月)にするぜ。」
『OK!MINATUKIだな。よし登録完了したぜ。』
「ありがとございます!」
名前を決めるやりとりをした後ガレージからコースまで出ると俺ら以外にも調整とランテストをしている他のクラブのSIPPUUが数機走っているがその中でもとてもSIPPUUとは思えない程ハイスピードで慣らし運転をしている。
ちなみにクラブごとに提供されたPGにそれぞれクラブごとにエンブレムは設定されており、我々パイロット整備クラブは左側面を向いたRAIUNのヘッドパーツの下に操縦グリップと簡素化されたトルクレンチが書かれている。
そして、SIPPUUと思えないほどスピードを出している機体のエンブレムはフォーミュラ研究会というクラブである。
フォーミュラ研究会はPGフォーミュラを歴史、パイロット、整備士からの視点で研究していく文系クラブかと思えるがここは文系理系が両立している。ちなみにエンブレムはデフォルメの擬人化したチーターがパイロットスーツをきてピースをしている風に書かれている。
SIPPUUであんなにスピードを出してもバランサーを崩さず姿勢制御をほぼ完璧に出来るヤツはPG学園のパイロット科1年生で出来るヤツは俺も含め数人しかいない。
だがフォーミュラ研究会はれっきとしたレーサー志願の2年生が搭乗している。ちなみにユキトもこのクラブに参加しているがあくまでサブパイロットである。
「それじゃテストランしてくるぜ。」ピットからピットゾーンまで歩いていたがそこからはランドスピーダ展開状態でないと入れない仕様になっている。ランドスピーダを展開しスピードを上げつつピットゾーンからコースにエントリーした。
最初は慣らし運転でスピードもそこまで出していないがある程度スピードを出し始めカーブも最初の内はヘヤピンをデルタターンや減速ターンでクリアしていた。
フォーミュラ研究会のエンブレムを付けたSIPPUUカスタム STURMPITONが整備クラブに俺が乗っているのを知っているらしく光信号で(勝負しろ)とサインを出してきたがピットにつないで「どうする?」と言ったとピットクルーから『手の内晒すことになるからヤメトケ』と来たので僅かに減速させ距離を取った。
どうもソレであちらさん、納得はしないようだが手の内を晒して得意走法を封印されるのはルール上問題無いが好まれるランディングテクではない。
テストランを終えて整備クラブが使用しているピットに戻りMINATUKIのチェックとランデータの吸い上げが終わって今日の所は解散になった。




