プロローグ
挿し絵は『朝山なの@ペンギンの人(@asayama7penguin)』様よりいただきました。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ?アイカ」
「あたし、こんなに優しいお兄ちゃんに会ったの始めてかもしれない」
「俺も、こんなにかわいい妹にあったのははじめてだよ」
こちらによってくる『妹』。
その笑顔はまぶしくて、こちらの胸がときめいてしまう。
『妹』はそんな俺を不思議そうに見て
「ほんと?お兄ちゃん?」
「ああ、ほんとだとも、アイカ」
優しい『妹』に料理を作ってもらい。
優しい『妹』と一諸に学校に行き。
優しい『妹』と一諸に夜を過ごす。
こんなに幸せな家族が、かつてあっただろうか。
リビングのソファに二人で寝転がり、そんなことを思う。
日々の疲れを癒してくれる『妹』。
愛情を素直に表現してくれる『妹』。
『妹』が俺の家族であることが、これ以上ないほど誇らしい。
――そして、同時に思うのである
「あーあ。これが『ゲーム』じゃなければなあ」
どうしようもないそのリアルに絶望して。
ぽつりとつぶやいた俺の言葉に
「もう、兄さんったら」
ぷくりとほおを膨らませる『妹』。
「現実のことは持ち込まないでっていっているでしょう?」
怒った彼女もかわいい。
こちらのほおは思わずゆるむ。
だが、そうだ。
彼女の言うとおり。
現実のことは持ち込むべきじゃない。
考えるべきじゃないんだ。
こんなにすてきな生活を送れているというのに。
特に、あの妹のことなんかは……