108.災い転じて福となす?
ユフリーの動きも気になるものの、まずは3つ目の遺跡に向かうべく一行は動き出す。
しかし、ニールはその前に自分以外のメンバーに聞いておきたい疑問がまだ2つあった。
「けどさ、ユフリーが内通者だって分かってたならその事を事前にシリルとかに伝えておく事は出来なかったのか? それ用の連絡手段ってあるんだろう?」
こっちの世界にスマートフォンやインターネットみたいなシステムがあるかどうかは知らないが、そもそもそうした何らかの連絡手段が無ければ、イルダーとエルマンがユフリーから情報を流して貰う事も出来ない筈である。
だが、それについてシリルとイルダーは渋い顔つきになった。
「いや、まぁ、確かにそう言うのはある。あるけどよぉ……」
「あるけど……何だよ?」
「こっちにもタイミングとかがあるんだ。なかなか連絡を取れない事情はね」
「だからその事情を教えてくれと言ってるんだ」
若干イライラした口調でニールが先を急かすと、意を決したかの様にシリルが口を開いた。
「あの女が何時も俺達のそばに居たら、それこそ迂闊な動きは取れないだろうが」
「そうそう。ただでさえ僕とエルマンはユフリーから情報を流して貰っていたのに、そこでシリルともし通話魔術で通信している姿を見られようものなら全て終わりだよ。通話魔術は使えるスポットが限られているんだ」
「ああ。それなりに大きな町だとか、一部の村とかに魔量を使って魔術で通話出来るスポットがあるんだが、なかなか通話出来なくてな。ユフリーがそばに居たからって言うのもあるが、あらかじめお互いが通話出来る場所に居ないといけないんだよ。だから一方が通話スポットに居なかったら、繋がらずにただ魔力の無駄遣いになっちまうんだよな」
つまり公衆電話と理屈は同じらしいのだが、通話したいと思っているお互いがそのお互いの公衆電話がある場所に居なければならないと言う何とも不便なシステムらしい、と地球の電話に置き換えて納得するニール。
「そう、か……」
「ああ。最後に通話が出来たのが俺達がグループを分けてあんたと出会う前だったから、長い事通話出来ていなかったんだよ」
ずっとギルドのスパイのユフリーが近くに居た以上、情報収集の途中で一旦ユフリーと離れたとしても、もし通話している場所を見られたら水面下の計画がダメになる。
だからユフリーの話は聞く事が出来ず、結局判明したのはオルハールの町で偶然合流出来た時だったらしい。
そこでお互いにユフリーの情報を話した後に、ニールの情報もイルダーとエルマンに話そうとしたら、ギルドの連中に見つかってしまったシリルは当然会話を中断してまた逃げ出すしか無かったのだった。
(報告や連絡はやっぱり大切だな)
それにプラスしてタイミングがなかなか合わなかったからこそ、計画が狂ってしまってイルダーとエルマンの2人を何も知らない自分が叩きのめしてしまう結果に変わってしまった。
「でも、それならそうと、宿屋で男女別に部屋を分けた時に自分達がアイクアル王国の騎士団の関係者だと言ってくれれば俺だって混乱せずに済んだんだが」
「済まん。だが、俺達も「魔力が無い人間が居る」って聞いてただけで、あんたもギルドとつながっているんじゃないかと思ったから迂闊に言えなかったんだよ。……でも、結果的にはこれで良かったのかも知れないな」
「何で?」
せっかく集めて回った物を全てユフリーに取られてしまった結果が、良かったかも知れない?
シリルの言い分に若干ムッとするも、その続きが気になるのでニールは黙って聞く事に。
「だってほら、これから俺達は3つ目の遺跡に向かう訳だろ? そこにもしまた封印や宝物があるとしたら、それをあんたが回収した所であの女に後ろから殴り倒されて……って事もあったかも知れない。だけど、その前にあの女が裏切り者だと判明したから少なくともその心配は無くなった訳だ」
「そうそう。それに遺跡から出た所で襲われても私達が居るから大丈夫よ」
「……そうか」
本当にそうなのか? とオルハールの町でギルドの連中に待ち伏せされていた時、それからその前にハーベルクの修練場で待ち伏せをされていた時の事を思い出して、思わず口から出かかった声を止めるニール。
どうやら受け答えの違和感に気が付かれはしなかったニールの目の前で、良かったと思うのにはもう1つ理由があるとの事で、シリルとミネットに続いてエリアスが口を開いた。
「それからさっき言った様に、向こうが何をしようとしているのかと言う事は俺達もまだ調べている途中さ。だけどある程度は今までの騒ぎで分かったからな。あんたが回収したあの剣と盾、そして図書館の破片らしき物を持去ったって事は、それが向こうのやろうとしている事に必要なアイテムだからとは考えられないか?」
「……確かに」
何かに使う予定も無いのに、わざわざあんな複数のかさ張る物を持ち去る事はしないだろう。
もしかしたら換金目的かも知れないが、英雄の彼女だと言う事はその英雄はかなりの金を持っているだろうし、恩恵を受けているのなら金に困る事も無いだろうとニールは考えた。
「だからあの剣と盾とそれから破片以外に、もしこれから俺達が向かっている遺跡にも同じ様な物があるとしたら、あいつ等はまた俺達の前に現れるだろう。そしてそれを奪い取りに来ると思う」




