107.見えて来た野望
大体の話はニールにも掴めて来たが、もっと細かく掘り下げて貰わないと分からない部分もまだまだある。
「ちょっと整理させてくれ。君達5人はアイクアル王国って所から来た。そしてその王国の命を受けてこっちの帝国の調査をしていた。これで合ってるか?」
「ああ、大丈夫だ。それで俺達はあの女から定期的に情報を仕入れていたんだ。カラリ何とかって言う見慣れない武術の使い手と一緒に英雄様の彼女が旅をし始めたとか、その見慣れない武術の使い手が遺跡の封印を解いて秘宝を手に入れたとか、修練場に向かうからそこでその魔力を持たない男……つまりあんたを仕留めてしまっても構わない様に、部外者を装って自分が修練場の冒険者達に善意の通報をした……とか色々こっちに報告して貰ってたんだよ」
エルマンからの今までの経緯を聞かされ、少しずつニールもユフリーの行動を思い出しつつ納得する。
「やはりユフリーが善意の……って奴だったか。大体、あのタイミングでトイレに用を足しに行ったと聞いた時から怪しいとは思っていたんだが、確固たる証拠が無いから決めつける事も出来なかったんだよな」
何にせよ、ユフリーが自分達の事をギルドに色々と流していたと分かった。
「それで、丁度僕達があの国立図書館のあるオルハールの町に居てね。そこに辿り着いたユフリーから連絡を貰って彼女を含めてそっちのパーティを追いかけ始めたんだよ。だって、そこで本気で追い掛けないと僕等もユフリーからスパイだってバレちゃう訳だしね」
「まぁ、それは確かに」
「しかもユフリーからも「私の事は気にしないで良いから、他のメンバーにバレない様に本気で追い掛けてね」って言われてたからギルドの他の連中も言われた通り本気で追い掛けてたよ」
そして、その途中で上手く身を隠したユフリーからニールが向かいそうな場所に幾つか見当をつけて貰って、その可能性が最も高いあの国立図書館にイルダーとエルマンが向かって最終的にバトルになった、と言う流れだった。
だが、そこから先がイルダーとエルマンにとって予想外の展開になった。
「本当はあそこであんたを俺とイルダーで捕まえて、隙を見て正体をばらしてからこっちに協力して貰おうと思っていたんだけど……あんた、なかなかやるじゃねえかよ」
「まさか僕達2人掛かりで負けてしまうなんて思わなかった。手錠で拘束された後は本当にどうしようかとエルマンと悩んでいたんだからね」
「え、ああ……でもあの状況で最初からケンカ腰で来られたら仕方無いだろう。だったら最初に機密書物庫の中に入って来た時に自分達の正体をバラシてしまえば良かったじゃないか」
そうすればもっとスムーズに事が運んでいたかも知れないのに……とニールは反論するものの、イルダーとエルマンにも言い分はあるらしい。
「でも、例え僕達が「違う王国の騎士団員なんだ」と言った所で素直にそれを信じるかい?」
「……いいや、信じないだろうな」
町中を追い掛け回され、やっとの思いで潜入出来た機密書物庫の中で突拍子も無い事を言われても、確かに信用する気にはなれないだろうな……とその時の自分の心境を思い返しながらニールは呟いた。
「それで、結局あの破片みたいな物は奪われてしまった訳だし、それ以外にもシリルがワイバーンと共に預けて来たって言うあの剣と盾も無くなっちゃってるんでしょ?」
エリアスの確認にシリルは頷き、そして謝罪する。
「済まねえ、俺がもっと管理をちゃんとしていれば……」
オルハールの町の管理場所に、ワイバーンと共に荷物として預けておいたあの遺跡から回収したロングソードと盾が、ユフリーが取りに来てそのまま何処かに持って行ってしまったのだと言う。
「で、そのユフリーに渡してしまったって言う管理場所の職員は、ユフリーがどっちに向かったかって言う話はしていなかったのか?」
「うーん……新たに1匹別のワイバーンを借りた後にそのまま東の方に飛んで行ったって言う証言がある位だね」
「じゃあ、東に向かえば追いつけるかも知れないんだな」
だったら早く追いかけようとニールはパーティメンバーを急かすものの、何故かここでシリルからストップが掛かる。
「待てよ。あいつはまた絶対俺達の前に現れる筈だ。それも向こうからな」
「何故分かる?」
その理由を説明してくれないと納得出来ないニールに対し、シリルはこれからのユフリーの行動を自分の推測と予想を交えて話し始める。
「あんたが回収したあの剣と盾……あれを持ち去ったって事は多分、考えていたあいつの予定が機密書物庫で狂ったんだ。3つ目の遺跡の封印を解いて、そこにあるだろう宝物をあんたが回収した時に自分の正体をバラし、そしてそれも一緒に持ち去る計画だったんだろうが、その前にオルハールの町で自分の正体があんたにバレてしまった。そしてこれから俺達はその3つ目の遺跡に向かう……後は分かるな?」
「つまり、俺達が宝物を回収して遺跡から出て来た所を、ギルドの仲間を率いて大勢で狙えば……」
そう言う事だ、とニールの呟きにシリルは無言で頷いた。




