第22話「滅茶苦茶ピンチ!」
昨日風呂場前に蛇が出たらしくビクビクしながら書きました。
A.
秋影 月夜は春野 緋美華たちの前に現れる前夜、椋椅と金城が入院している病院に侵入していた。椋椅の危機に現れたのは彼女だったのだ、これはその時の出来事である!
「私の名を知らないとは世間知らずかにゃあ?」
「貴様ぁさては能力者だなぁ、ならばオラの能力で常人にしてやろうぅ」
「相手の能力を捕食し肉体を強化する紅鴉の配下・七翼の六番手、能喰ベゼブ。要は私の下位互換だね」
「貴様ぁ紅鴉様を呼び捨てにするとはぁ!」
「貰った!」
月夜は突進してくるベゼブを顕現したサーベルで貫いた。巨体は一突きで沈み、自身の飼っていた蝿に自分が集られる羽目になってしまった。
「なぜ動ける、確かに怠惰に身を落とした筈!」
「貰ったって言ったでしょ」
「な....体から力が抜け、やる気が無くなっていく。間違いない、これは我が能力によるもの!」
「どう?自分の能力に自分の引導を渡される気分は!」
「貴様は能力を奪い我が物とするのか〜〜〜」
「私の能力を知ったからには消え失せな!まあどのみち殺したんだがな」
そう言って月夜はベルフェにサーベルを突き立てた。夜の病院にまた一つの死体が増え、今宵は多くの仲間が出来たと安置所に眠る亡者達は喜びに浸るのだった。
第22話「滅茶苦茶ピンチ!」
B.
夜の病院にて悪党退治を終えた秋影 月夜は、春野 緋美華の前に現れ殺害宣言をしたが、同じ悪を討つ者として何故に彼女を狙うのだろうか?
「警察が近くに居るのに襲ってくるなんて!」
「警察も私たち能力者の前には無力ということを忘れたの?」
「要するに彼らも守るべき人達ってわけだよね!」
緋美華は拳を月夜の顔面に食らわせ、よろめき乍も繰り出されるサーベルによる突きを避け切った。
「緋美華、何時もより気を引き締めて。コイツは私たちの不死の儀式に対抗できる術を持っているみたい」
「う、うん....嫌な予感はそれだったんだね」
「あははは、それを分かっていて逃げないんだ?まあ逃げたら政府の犬を虐待しちゃうけど」
緋美華も水無も能力を持たない者の前で出来れば能力を使いたくは無かったが、危険の種を放置して逃げる訳にもいかない。
「私の愛する人の命を狙う者、赦せる筈はない」
津神の台詞に相変わらずなんて大胆な事をと、風見ひよりは隠れた店の中で顔を赤らめた。
「こ、これが能力者か....争いを止めねば」
店の外で緋美華が白い炎を、津神が水玉を放ち、月夜がそれをサーベルで捌く光景を見た中年の警察官が拳銃を取り出そうとしているのを見た風見は慌てて彼の前に立ちはだかった。
「駄目ですよ、死んじゃうわ!銀髪女のセリフを聞いたでしょ」
「しかし....ならば責めて赤髪の娘達の援護を」
「私の幼馴染は貴方達を守る為に戦ってるのよ、彼女の思いを無駄にしないで下さい」
幾ら銃を使っても能力を持たぬ者では能力者に容易く返り討ちにされてしまうと、強く訴え掛けて来る目に警察官は銃をしまい、地面に目を伏せ拳を強く握り締めた。
「申し訳ない....若者が命を懸け戦っているのに大人である我々は何もしてやれない。くっ、なんて無力なんだ私は....」
「....」
風見ひよりは警察官の気持ちが痛いほど分かった。自分も戦うことで愛する幼馴染の救いになりたいのに、そんな力は皆無、寧ろ足手纏いになるだけの現実に悩まされているから。
「はあはあ、サーベルが溶けちゃった」
「これで終わり....!?」
武器が白い焔に溶かされて溜め息をつく月夜に、津神は水の刃を飛ばそうとしたものの何も起こらなかった....直ぐに別の技を使おうとしてみるも結果は変わらず!
「どうしたの水無ちゃん?」
「能力が使えない」
「え!?」
「あはははは貰ったよーん、自分の力に溺れな!」
二人に押し寄せて来る小規模だが人を溺死させるには十分な津波、これは間違いなく津神水無の技の一つ!
「これは水無ちゃんの技っ!」
「くっ、コイツは能力を奪う能力を持っていたのか」
「私の奪楽借はやっぱり無敵だね!」
春野緋美華も能力を使用しようとしたが、津神同様に何も起きず火の粉さえも出ない様だ。
「うう、私のも盗まれたみたい!」
「嘘....不味いじゃない!」
能力が無ければ圧倒的不利、後は素の強さに頼るしかないが無能力者が二人がかりで能力者に挑んでも勝率は零に等しい。
「やはり我々が行くしかない、若者を見殺しにはできん!行くぞ!」
「ハッ!!」
「待ってダメっ....う!?」
命を投げ捨てんとする警官達を止めようと、風見ひよりはドアの前に両腕を広げて立ち開かるも腹に拳を浴びて膝をついた。
「ごめんな嬢ちゃん、俺らはバカだからよ」
そう言って頭をかいた警官やその部下達の顔は、これから死に行くと言うにも関わらず恐れを感じさせない満面の笑みを浮かべていた。
C.
「がはっ....!」
能力を奪われた二人は、今まで使って来た自らの能力にジワジワと甚振られ苦しめられていた。
「なぜ直ぐに殺さない、不死身ではなくなった今なら....」
「ええ?だってえ私ってサディストだからぁ。可愛い娘を楽に死なせるとか勿体無くてえ!でも、そろそろ殺すよ!」
月夜が白い焔を左手に、渦を右手に纏い、それらを二人の顔面に振り下ろそうとしたとき銃弾の嵐山が彼女の背を撃ち抜いた。
「そこまでだ、潔く降伏しろ」
気付くと警官達がニューナンブM60の銃口を向けて月夜を囲んでいた。彼らの目は正義感に駆られた修羅の如く!!
「痛い痛い、でも再生しちゃいましたー便利ぃ!てゆーか負け犬どもがイキるなよな」
月夜の声のトーンが重くなり、緋美華はハッとした。間違いなく彼女は自分を攻撃した警官達を殺してしまう!
「ダメだよ逃げて!殺されちゃう!!」
「逃げるのは君たちだ、店の中にいる娘を連れて逃げろ!」
「でも....」
「逃げよう、緋美華。殺されたら終わりだよ」
「うぅ」
津神の説得に緋美華は拳を握り締めながらも逃亡する決断をして風見ひよりの居る店内へと駆け出した。
「それで良い」
「ははははは、焼け死ねや!」
「ぐああああああ」
警官達は白い焔に包まれたが倒れず、若者達の逃亡の為に少しでも時間稼ぐため月夜の体を押さえ付けた。
「うわキモっ、熱い!焼け死にながらセクハラすんな!」
「うおおおおお!」
月夜は水を降らせ消火したが軽い火傷を負い、舌打ちして焼死体に唾を思い切り吐きかけた。
「糞野郎どもが、手こずらせやがって」
「これくらい足止めできりゃ、十分逃げ切れた筈だな。脚速いみたいだしよ」
残ったのは中年の警察官ひとりだけ、彼は絶望的な状況で有りながら余裕の笑みで煙草を吸いながら銃口を月夜の後頭部に突きつけた。
「アイツらなぶり殺したいんだよ邪魔しないでよ、逃げられちゃったじゃんかあ」
「逃がしたいから邪魔してたんだよ」
「あっそ、じゃあ死ね!」
窮地から数キロ逃げた先で緋美華達は銃声と爆発音を聞いた。彼女達はそれが勇敢なる命の恩人達の最期を告げる音だと、嫌でも理解せざるを得なかった。
D.
私達は負けた、能力を奪われてしまえばこんなに無力だなんて。警察の人達が命を引き換えに戦ってくれなかったら私も水無ちゃんも死んでいた。
「再生能力も奪われたいま、襲われたら終わり。ここから出れないね」
「私のせいで警察の人達が」
「貴女一人が背負わないで、私だって....」
水無ちゃんの目が潤んでいる、私には彼女を抱きしめて悔し涙を溢す事しか出来なかった。
「アンタら弱気になってんじゃないわよ....って言いたいところだけど、どうすれば良いのか思い付かないわね」
「まだ私たちが居ますわ!」
「あ、金城さん....椋椅さん」
包帯を巻いた金城さんと彼女のメイドである椋椅さんが転移能力を利用して侵入して来たんだろう、押し入れから現れた。
「何時ものウザイくらいの元気は何処に行きましたの?」
あはは、流石に今は何時もの元気は出せないよ....私を助ける為に何人も死んじゃったんだから。
「アンタまさか戦う気?相手が誰か分かってんの?」
「お二方の能力を奪ったらしいですわね。心当たりが有りますわ」
「病院に現れて私たちを救ってくれた方です、浴衣を着ていました」
俄には信じられない....人の命を嗤いながら平気で奪う彼女が椋椅さんを助けたなんて。でも椋椅さんは嘘をつく様な人じゃないし本当なんだろう、訳わかんないよ。
「間違いなく奴ね、でも残虐なアイツが椋椅さん達を助けるなんて信じられないわ」
「いくらワタクシたちを助けてくれたといえ、話を聞いた限り悪人です。許して置くわけにはいきませんわ」
「無茶だよ、そんな体で戦うなんて」
幽輪の爆破能力で全身に火傷を負って、今も立っているのも辛そうな状態なのに....自分から命を捨てるようなものだよ!?
「このぐらい平気ですわ、それに落ち込んでる風見さんの元気を取り戻したいですし」
「別に落ち込んでなんかないわよ....」
どう見ても落ち込んでるよ、ひよりも私達と同じく責任を感じているみたい。
「嘘が下手ですわ。まあ見てて下さいまし」
「ご安心を、わたくしが付いている以上はお嬢様を死なせはしませんから」
「では行ってきますわ」
「ちょ、ちょっと!?」
金城さんが顔の包帯を外して、ひよりの頬っぺたにキスをした。ひよりが凄くテンパってる!
「おーほっほっほ、御機嫌よう!」
今のキスは無事に帰って来ると言う誓いの証だ。昔みた少女漫画にそんなシーンが有ったし、金城さんにとってのヒロインはひよりなんだね。
そんな想いを誰が止められるだろうか、高笑いしながら戦いの場に転移する金城さんと彼女の腕にしがみつく椋椅さんを、私はただ見送るしか出来なかった。
つづく
特撮好きな人なら気付いてると思いますが、登場人物の殆どが特撮キャラの名前から来てます。




