表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/64

Second Life 29

 ミサちゃんと絵実ちゃんが泊まりに来た翌日、俺は三人分の朝食を作り家を出た。

 唯姉に指定された時間は午後2時頃だが、今は午前10時30分ほどだ。予定の時間まではあるが、今日は久しぶりに一人ぶらぶらと買い物をしたい気分だから家を出た。

 まず、家にいても邪魔になるだろうし、丁度いい。


 

 目的地は駅近くのデパートだ。

 家からは徒歩で20分程だ。今から行けば、十分に見て回れる。




「お兄ちゃんどこか行くの?」



 いつも思うが、こ言う時の優花のタイミングは本当に悪いな。

 折角気を利かせて、こっそり出掛けようと思ったのに、家を出るタイミングで下りて来るとは。



「まぁな。たまには買い物でもしようと思ってな」


「駅近くのデパートに行くの?」


「そのつもりだけど」


「それなら丁度いいや。私達も行くね」


「俺と一緒じゃなくてもいいんじゃないか?」


「そんな事言わないで一緒に行こうよお兄ちゃん」


「付いて来ても面白くないだろ」


「もぅ、付いていくって言ったら付いていく!二人も呼んでくるから待っててね!いい!?」



 この状態の優花は断っても、結局付いて来てしまう。

  

 諦めるしかないか……久しぶりにゆっくりと買い物が出来ると思ったんだけどな。



「分かったよ。二人も呼んできてくれ」


「分かった!」


  

 優花は明るい笑顔を見せ、部屋へと駆けていった。



 15分程経ってから三人は部屋から出てきて、一階へと下りてきた。



「雪穂さん私達も付いていってお邪魔じゃないですか?」



 この感じだと、優花は俺が誘ったみたいな言い方をしたんだろうな。



「うん。大丈夫だよ。二人だけを置いていく事も出来ないからね」


「さっ!二人とも行こ!」


「お前は少し落ち着け」


 

 優花は、頬を少し膨らませながら、「いいじゃんよ」と言って先に外に出た。



「優花ちゃん落ち着いて」


「ミサはもう少し楽しそうにしなよ」


 

 流石に今から楽しそうにするのは早すぎないか?


 ミサちゃんは困惑しながら絵実ちゃんに手を引かれ外へと連れて行かれた。

 俺はその後を微笑ましく眺めながら追った。





 30分後、予定より時間は掛かったが無事デパートに到着した。

 デパートは休日と言う事もあり、多くの人で賑わっている。



「俺は1時20分頃までしか居られないから、その後は三人で楽しむって事でいい?」


「それなら、私達はその時間には帰る?」


「その方がいいと思う。一度戻って荷物の整理とかもしないといけないし」


「いいのか?俺に合わせる必要はないんだぞ?」


「遅くり過ぎてもいけないですし」


「そうだよお兄ちゃん。さっさと回ろう!」



 




「ふぅ、短い時間で結構回れたな」



 現時刻は1時15分。

 色々な店を見て回った。飲食店もちょくちょく寄ったし、新作のパンも買えたし満足だ。


 俺の予定で回ってばっかでは悪いので、三人の意見を聞きながらも回った。三人の本当の目的は、最近オープンした洋菓子店のケーキを買うことだったらしい。

 

 丁度今、そのケーキを食べている。


 俺が食べているのはショートケーキ。優花は柑橘系のケーキ。ミサちゃんはチョコレートケーキ。絵実ちゃんはモンブランを食べている。

 どれも見た目から美しく、引き込まれる。


 味も文句をつけれないほど美味い。

 スポンジがしっとりとしていながらも、口の中を包み込むような甘みがあり、イチゴは程よく甘みがあり、酸味が甘さ控えめのクリームとマッチしている。

 相当レベルの高いケーキだ。なのに、値段も高すぎない。文句のつけようがないな。




「さすがプロだな」



 ショートケーキを堪能していると、優花がこちらにフォークを突き出してきた。



「私の一口あげるよ」


「いいのか?」


「どうぞどうぞ」


「ならお言葉に甘えて」



 うん、優花のもとても美味い。

 吹き抜けるようなオレンジなどの爽やかさと絶妙な甘さが上手く合わさって心地良い味だ。



「お兄ちゃんのも一口ちょうだい」


「あぁ、いいぞ。ほれ」


「う~ん、美味しい!」


 

 優花の場合なんでも美味しく食べれると思うがな。



「どうかした?」


「「い、いえなんでもないです」」



 ミサちゃんと絵実ちゃんが、顔を軽く赤らめながらこちらを見てきていた。

 何か変なことでもしたかな?



「お兄ちゃんのが一口欲しいんじゃない?」

「え……」


「そうなの?欲しいならあげたのに。はいミサちゃん」


「い、いえ悪いですよ」


「大丈夫だよ。気にしないで」


「ミサちゃん貰っときなよ」


「で、ではいただきます」



 ケーキを一口食べるだけなのにこんなに顔って赤くなるものなのだろうか?



「お、お兄さん私も食べたいです!」


「うん。いいよ。はい絵実ちゃん」


「あ、ありがとうございます!」



 絵実ちゃんにもミサちゃん同様にケーキを取って口へと運んであげる。

 絵実ちゃんもミサちゃんと同じように、顔を赤らめながらケーキを食べた。


 本当に二人ともどうしたんだろうか?



「二人とも大丈夫?」


「は、はい」


「気にしないで下さい」



 二人は今にも湯気が出そうなくらい顔が赤くなっている。

 本当に大丈夫かな?


 心配だけど、唯姉との予定もあるしもう帰らなければいけない時間だ。



「優花二人を頼んだぞ。調子が良くなってから気をつけて帰るんだぞ」


「大丈夫だよお兄ちゃん。二人ともすぐに治るからさ。それよりも早く行ったほうが良いんじゃない?私達はもう少ししたら帰ることにするよ」


「そうか。わかった。でも、調子が悪いのが治らなかったら母さん呼んで迎えに来てもらって、送ってってあげてくれ」


「分かったから早くいきなよ」


「あぁ」



 心配だがもう時間も時間だ。


 気になりながらも俺はデパートを出たのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
href="http://narou.dip.jp/rank/index_rank_in.php">小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ