Second Life 21
更新再開です。
一昨日はさんざったな……はぁ。
あの羞恥心を味わった日から二日後の夜。俺は一人で素材収集をしていた。
昨日はIGOのメンバーで狩りをした。俺は殆ど後ろで見てただけだけど……
なぜ素材収集をしているかと聞かれれば、エレナさんに卸すためのポーションの素材が全体的に足らなくなってしまっているからだ。
まだ一人じゃ危ない時もあるが、最近ではレベルも上がってきて、少し前よりは安定した素材収集が出来るようになった。
でも……昨日はボコボコにされた。
誰にかだって?それはゴブリンバースだよ。
《星月の姫》内のスキル、【天星の領域】を使えば簡単に倒せたが、このスキルはこれと同等以上と言われるスキルが出るまでは使うつもりはない。
それ以外はぼちぼち使っていこうとは思っている。
でもまだそれは先になりそうだ。
生産系スキルをもっと取っておきたいし、ユニークスキルを育てるよりも通常のスキルを育ててからじゃないと宝の持ち腐れになる気がする。
どんなゲームでも良くある事だと思う。
装備の性能に任せての攻略じゃ、プレイヤースキルは全く身に付かない。
だからこそ一定以上の実力を手に入れてからじゃないと、武器や防具の性能をフルに活かせないし、実力も上がらない。
この事に気付かないでいる人も仮想世界にはたくさんいる。
気付けないやつは気付くまで一定のレベルを超える事はできない。超える事が出来るとしてもそれは、パーティーでの結果であって、一人での結果ではない。
色々な事で上を目指すのはこの類のゲームでは絶対に必要な事だ。
俺は、私はここまでのレベルまでいければもう十分、満足と思う人もいるだろうけど、上を目指さなくなった時点でもうその人が手に入れた技術は廃っていく。
これは絶対的法則だ。
上を目指さなくなった者は自身が気付かないうちに自分が手に入れた技術を腐らせ、少しずつ忘れていく。
俺はこうやって時間を費やしたものを失っていく人を多く見てきた。
だからこそ俺は、こんな事にならないようにしたいと思っている。
協力してくれたプレイヤーもいた大切な物を簡単に失うわけにはいかない。
「なに難しい顔してるの?」
黙々と作業している空間には合わないテンションの声のした方を向くとニコニコと興味深そうにこちらを見ているマロンがいた。
「難しい顔なんかしてたか?」
「うん。とっても難しい顔をしていたよ。どうかしたの?」
「いやなんでもないよ。ただ昔のことを思い出していただけだよ」
「ならいいんだけど。でも相談があったら気にしないで相談してよね!」
「分かったよ。その時がきたら頼らせてもらうさ」
「ありがと!」
相変わらずだなこいつは。
悩みなんて何一つ無さそうな奴だな。
「それで今日はどうする?」
「今日は少し奥にでも行ってみるか?無理そうなら俺らの適性地でやればいいし」
「ならそうしようか。準備はもう出来てる?」
「あぁ大丈夫だ。早速いくか」
俺とマロンは、ハルアさんの店で働いた翌日から次の約束の日まで一緒にパーティーを組む事にした。
理由は一人よりも二人のほうが生産者としては安全に素材を集められて、互いにトレードも出来るからだ。
武器や防具などの素材も次までに集めとけば、何かしら依頼する事も出来るからな。
今回素材収集に来た場所は、街の西側の門から出てすぐの場所にある、『サルザウンド山脈』と呼ばれている、文字通り山が連なるフィールドだ。
「本当だったら登山スキルが必要なんだよな?」
「そうだね。登山スキルが必要ないのはここと、次の山脈ステージくらいだね。その次からは登山スキルが無いと一定の高さを超えるとステータスにマイナス補正が掛かるんだ」
「そうか。でも俺らみたいな生産中心のプレイヤーはそんな高い場所には行かないから、あまり必要なさそうなスキルだよな」
「まぁね。とゆうか、登山スキルを取得しているプレイヤーは殆どいないかな」
「なんでだ?上の方でしか取れないアイテムとかあるだろ。なのに登山スキルを取らないのか?」
「山の山頂付近でしか入手できないアイテムは、山を中心に狩りをしているプレイヤーに依頼して取ってきてもらうんだよ。この中には在りがちだけど、『山神』って呼ばれるプレイヤーもいるよ。山の攻略を目指しているギルドもβテストの時にはあったくらいだよ」
「でも、他のギルドに比べたら規模は小さいんだろ?」
「それはそうだね。どうしても不人気スキルをメインに使うステージ攻略を目指すギルドは人気が無いからね」
「まぁ、俺らは生産職だからな。正直言って俺たちは最悪依頼すればいいからな」
「それはそうだけど、お金が無いと今の僕たちみたいにこうやって素材を採りに来るんだけどね」
「俺達の場合、依頼する金額よりも生産に使う金が多いから少しでも節約しなきゃいけないんだけどな」
ポーション一つ作るのにもタダで作れるわけじゃない。
道具さえ揃えてしまえば良いが、道具が無い時は節約して買うか、道具を貸してくれるプレイヤーから有料で借りるかしなければならない。
道具を一度揃えば良いと言うわけでもない。
安い物は使っていれば壊れるし、安い物だと加工できなかったりもする。
だから、生産職は永続的に金が必要になる可能性だってある。
俺みたいに一つの生産だけじゃなく、幅広くしようとすると通常の何倍も金が必要になってくる。
俺みたいなやつは殆どいないみたいだ。
当然と言えば当然だけど、全てに通ずる事が出来ればそれだけ困った時に助けてくれる人が多くもなる。
後々の事を考えると、俺みたいな選択肢はギャンブルみたいなものかもしれない。
でも、折角ゲームの世界なんだから、ギャンブルの一つや二つやらなきゃこの先楽しんでなんかいけない。
「よし、ここらへんで目当ての物を探そうか。ここらへんだと今の僕らじゃ手に負えないモンスターもいるだろうから、その時は全力で逃げよう」
「そうだな。逃げるのも生きていくには大事な事だからな」
「気を引き締めていこう」
「あぁ」
山頂付近まで上り、俺達は採集を開始した。




