Second Life 16
ブクマ評価感謝です。
隠れていた家から出て、2人1組に分かれてゴブリンに気付かれないように包囲する。
俺とミーサちゃん。ユカとイルミちゃん。ユリア姉とリュークのペア。俺とミーサちゃんのペアは攻撃力は低めだが速度重視。ユカとイルミちゃんのペアは攻撃力と速度が高くバランスを重視。ユリア姉とリュークは近距離と遠距離を意識して分かれた。
意識して分かれたと言っても、俺の場合ステータスは皆より劣っている。けど、その中で俺が何に1番優れているかと言われたら、速度だ。つまり敏捷性に優れている。だから、敏捷性に優れているミーサちゃんとペアを組んだのだ。
「さっきまで落ち込んでた私が言うのもなんですが、お兄さん自信無いんですか?」
俺の不安そうな顔を見て、ミーサちゃんが心配そうにこちらを見てくる。
「まぁね。この中じゃ俺が1番レベルが低くて、装備を整ってない。あいつの攻撃パターンの予測も俺が1番出来なくて、攻撃を喰らうと思う。まともに喰らえば死んだも同然にもなる。足手纏いだからな」
「そんな事無いですよ。さっきの魔法だってイルミちゃんだけじゃ時間稼げませんでした。それに、あそこまで高い性能のポーションを2日目で作れるなんて凄い事ですよ」
「そう言ってもらえると助かるよ」
本当に優しいな。
ゲームで思いつめすぎって言われたらお終いだが、俺はゲームで他のプレイヤーに負けたくない。全てで勝てなくても1つくらい勝てるものを持っていたい。
でも敵わない敵だっているし、プレイヤーもいる。そんな時はとにかく落ち込むし、挫折だってしそうになる。悔しくてしょうがない。
IGOの時は俺は仲間を作ろうとしなかった。拒絶していた。だから落ち込んだ時に励ましてくれる奴はいなかった。
けど、今はこうして近くに何人も助けてくれる仲間がいる。励ましてもくれる。
こんな嬉しい事を拒絶していたなんて本当に勿体無い事をしていた。
昔の自分が馬鹿みたいだ………。
「そろそろですね」
この3組で同時にゴブリンに攻撃をする訳ではない。
最初にユカとイルミちゃんのペアが攻撃を仕掛ける。ある程度注意を惹いといて、その間にユリア姉がスキルが発動しない程度の魔法の詠唱を始める。その間のユリア姉を守るのがリュークだ。ゴブリンが怯んだ時に俺とミーサちゃんがアーツをぶち込むと言う作戦だ。
「やぁッ!!」
「タァッ!!」
ドンッ!ボンッ!
2人の声と共に鈍い音が聞こえる。
「お兄さん私達も行きましょ」
「了解だ」
武器を取り出し、全速力でゴブリンに突っ込む。
「テイッ!!」
「ハッ!!」
ユカとイルミちゃんは片方がゴブリンを攻撃して、もう片方がゴブリンの反撃を弾いて対処している。
「「お兄ちゃん(さん)!!」」
「分かってる!」
怯んだゴブリンの胸元の高さまでジャンプする。
剣を構える。剣は白く光り始める。
胸元を十字で切り裂き、十字の中心を突く。
するとゴブリンは体勢を崩し、尻餅をつく。
「ミーサちゃん!」
「はい!」
俺と交代でミーサちゃんがアーツを撃ち込む。
「ユカちゃんお願い!」
「おっけい!」
ユカは1度剣を鞘に仕舞う。
柄を握ったままゴブリンの目の前まで間合いを詰める。
鞘から光が漏れている。
「デルクロス!」
技名を叫ぶと、5本の光の残像が現れる。
残像が消えたと思ったら、ゴブリンは衝撃と共に吹き飛ぶ。
「イルミちゃんパス!」
「任せて!」
イルミちゃんはユカよりも速いスピードでゴブリンとの間合いを詰める。
ある程度間合いを詰めると、高くジャンプする。着地点はゴブリンの胸元辺り。回転を加えながらイルミちゃんはゴブリンに落下していく。
「爆拳!」
右拳が赤く光り始め、その拳をゴブリンの胸にぶち込む。
綺麗に吸い込まれていく拳はゴブリンに触れると共に大きな爆発を起こす。
「皆下がって!」
ユリア姉の方も準備が完了したみたいだ。
ユリア姉のすぐ後ろには20近くに及ぶ青い弾が浮かんでいる。
「アクアショット!」
ユリア姉の魔法は全てゴブリンに吸い込まれていく。
「俺行きます!」
ユリア姉の魔法と共に駆け出していたリュークがすかさず攻撃を続ける。
「デルクロス!」
ユカと同じ技を放つリューク。
ユカの時と同じくゴブリンは吹き飛ばされる。
しかしゴブリンのHPは削りきれていない。
「これで決めるぞ!」
「うん!」
「「はい!!」」
反動で動けないリュークと魔法職のユリア姉以外の俺たち4人はゴブリンに一斉に駆け出す。
「爆拳!」
「アークスロウク!」
2人のアーツが直撃して、俺とユカが入れ替わりで攻撃をする。
「デルクロス!」
砂煙を巻き起こす。
「お兄ちゃんいっけーーー!!!!」
「クロスエイド!」
2つの十字の残像が2つうっすらと残っている。
残像が徐々に消えていくとほぼ同時、
「ガ、ガァァァァッッッッーー!!」
ゴブリンは断末魔を残し、ゴブリンはデータ片となって消えていく。
「やった……」
「お兄ちゃん!!」
「やりましたねお兄さん!」
「お疲れユホ」
「お疲れ様ユホちゃん」
「あめでとうございますお兄さん」
視界には、クエストクリアの文字が見える。
今ので倒せなかったらと思うと、ゾッとしてしまう。最初に攻撃されていたのは位置的に俺だからな。
「これで目標達成だなユホ」
「あぁ。約束破る形になっちゃってごめんな」
時間を見ると約束の時間を30分程過ぎている。
相当時間を掛けたらしい。
「気にするなよ。普通に冒険するより楽しかったからな。こっちこそ遅れてすまなかったな」
「来てくれただけでも嬉しいよ。それに、お前が来てくれなかったら死んでたしな」
互いに感謝をし合う。
良い仲間を持ったな。
村は、徐々に光となり空へと消えていく。
クエストが終了したから元の草原に転移するのだろう。
周りの家が消えると全体が眩い光に包み込まれる。
目を開けると綺麗な星が輝く夜空が見える。
目の前には少女と長老が立っていた。
「ありがとうお兄さん達」
「皆様本当にありがとうございました」
深々と頭を下げる少女と長老。
「これしか報酬として渡せる物はありませんが、是非受け取ってください」
目の前にはアイテムの名前が表示される。
「《水鬼の笛》?」
「このアイテムは初めてね」
「その笛は遠い昔にこの村に訪れた冒険者が置いていった宝です。危機を救った物に渡してくれとの事ですので」
「これはどんなアイテムか調べる必要があるね」
「まぁそれは戻ってからにしようユカちゃん」
「そうだね」
「じゃあ、俺たちは帰りますね」
「本当にありがとうございました冒険者様」
「お兄さん、これうけ……とって……」
「俺に?」
「う…ん。助けに…きてくれお礼」
少女が差し出してきたのは、チケットくらいの大きさの文字の刻まれた皮?のようなもの。
「契約書だな」
「契約書?」
「まぁその事も戻ってからにしよう」
「それもそうだな」
ゴブリン討伐依頼を完了し、俺たちは少女と長老に別れを告げ、フィールドを後にした。




