表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/78

第七話:

長らく続いた――

学園の片隅で起こる小さな事件。


消えた答案用紙。

放送室の告白。

給食プリン騒動。

図書室の恋文。

そして、学園中を揺らした告白事件。


それらはすべて、ひとときの寄り道。


本来この物語は、もっと大きな運命の渦の中にある。


黒き翼を持つ者。

国を背負う姫。

神々の陰謀。

滅びと継承。

戦乱の果てに問われる、命の意味。


三神凌牙 は、

セラ として目覚める。


月城沙耶 は、

鳥羽姫 として帰還する。


そして、笑いながら全てを見ていた クロガミ もまた、本来の舞台へ戻る。


ここから先は、遊びではない。


だが――

あの騒がしい日々も、確かに彼らの記憶に残るだろう。


次回より、本編再開。

三神凌牙の事件簿


第七話:本編へ戻る扉


夕暮れの校舎。


赤く染まる廊下を、三神凌牙 は一人歩いていた。


今日の事件はすでに解決していた。


理科準備室から消えた答案用紙。

犯人は教師でも生徒でもなく、風で開いた窓から飛ばされ、換気口に詰まっていただけ。


あまりにも平和な結末だった。


神谷が肩を落とす。


神谷拓也


「今回は地味だったな……」


「事件なんてその程度でいい」


「もっとこう、爆発とか変装とか愛憎劇とか!」


「求めるな」



その時だった。


廊下の突き当たり。


存在しないはずの扉が現れる。


黒い木目。

金の取っ手。

表札には、こう刻まれていた。


本編へ戻る扉


神谷が叫ぶ。


「何それぇぇ!?」


凌牙は顔をしかめた。


「嫌な予感しかしない」



扉の前には、パン屋の格好をした男が立っていた。


白帽子。口ひげ。エプロン姿。


黒神田昴


「毎度ー!」


「ついにこの時が来ましたで!」


神谷が指差す。


「またお前か!」


黒神田はニヤリと笑う。


「せやけど、今日はパン屋やない」


帽子を取る。


ひげを外す。


エプロンを脱ぎ捨てる。


現れたのは――


クロガミ


教室がざわつくような不穏な気配。


「スピンオフはここまでや」



神谷が震える。


「終わるのか!?」


クロガミは腕を広げた。


「十分遊んだやろ」


「推理もした」


「プリンも消えた」


「告白も広まった」


「そろそろ本筋へ戻る時間や」


凌牙は睨む。


「勝手に決めるな」



その瞬間。


校舎全体が揺れた。


窓ガラスが鳴る。


凌牙の体が光に包まれていく。


神谷が叫ぶ。


「凌牙!?」


クロガミが静かに告げた。


「お前の名は仮の名」


「ここでは三神凌牙」


「せやけど本来の名は――」


光が弾ける。


黒い翼が背に現れる。


鋭い眼差し。


少年の姿が変わっていく。


セラ


神谷、腰を抜かす。


「誰ぇぇぇ!?」


セラは頭を押さえた。


「……思い出した」


「やかましい学園生活だった」



その時、廊下の向こうから足音。


月城沙耶が現れる。


月城沙耶


彼女もまた光に包まれる。


長い髪が揺れ、華やかな装束へ変わる。


凛とした眼差し。


鳥羽姫


神谷、再び叫ぶ。


「先輩までぇぇぇ!?」


鳥羽姫は周囲を見回し、記憶を取り戻したように目を細めた。


「ここは……妙な夢の国」



セラと鳥羽姫の視線が交差する。


数秒の沈黙。


次の瞬間。


バゴォォン!!


鳥羽姫の拳がセラの顔面へ炸裂した。


神谷絶叫。


「何でぇぇぇ!?」


セラは壁にめり込みながら言った。


「……理不尽だ」


鳥羽姫は頬を赤くして叫ぶ。


「学園で女に囲まれ、先輩と恋愛騒動までしておいて何が理不尽ですか!」


「記憶がない時の話だ!」


「知りません!」


もう一発。


ドゴォ!



クロガミは大笑いしていた。


「最高や!」


「これ見たかったんや!」


セラが翼を広げて怒鳴る。


「全部お前の仕業か!」


「せや!」


「このスピンオフ世界も、学園も、事件簿も!」


「暇つぶしや!」


神谷が呆然とする。


「俺の存在は!?」


クロガミは親指を立てた。


「ノリで作った」


「軽いな!」



扉がゆっくり開く。


その先には、戦火の空。

城壁。

叫び声。

本編の世界。


クロガミが一礼する。


「ほな皆さん」


「次回より、本編へ戻ります」


セラは拳を握る。


鳥羽姫は腕を組む。


神谷は泣いていた。


「俺、消えるの!?」


クロガミは笑う。


「人気あったらまた出すで」


「雑ぅぅぅ!」



最後にセラが扉へ進む。


鳥羽姫も続く。


振り返らず、ただ一言。


「……騒がしかったが、悪くなかった」


神谷が号泣する。


「凌牙ぁぁぁ!」


扉が閉まる直前、クロガミの声だけが響いた。


「次回、本編再開や!」


暗転。

夕暮れの教室。


誰もいないはずの教壇に、ぴょこんと小さな影が飛び乗った。


チャック


「こんちわー!」


「そして、こんばんわー!」


「ラスト進行役、チャックでーす!」


拍手……は、ない。


「最後まで静かな客席やなぁ……」



チャックは教室を見回した。


凌牙の席。

神谷の机。

黒板の落書き。

窓際の夕日。


「終わるんやなぁ……」


少しだけしんみりする。


「プリン事件も」


「告白事件も」


「新人進行役に席取られたことも」


「全部ええ思い出や!」


どこがやねん、と誰かの声が聞こえた気がした。



チャックは急に顔を上げる。


「せやけど皆さん!」


「気になることありますよね!?」


「チャック、本編でもでっまっか?」


自分で言ったあと、自分で緊張する。


「ど、どうなんやろ……」


黒板に文字が浮かぶ。


需要しだいや


チャック絶叫。


「シビアァァァ!!」



さらに別の文字。


戦場に出したら一秒で踏まれる


「ひどっ!」


会議に出したら空気壊す


「否定できへん!」


せやけど可愛い


チャック、感涙。


「最後に優しいぃぃ!」



チャックは教壇の端に立ち、深く一礼した。


「スピンオフ世界、ありがとうございました!」


「もし本編で見かけたら……」


「その時は、生き残れるよう応援してな!」


教室の窓が開き、風が吹く。


チャックの体がふわっと浮かぶ。


「ほな皆さん!」


「また会う日まで――」


「こんちわーーーっ!!」


そのまま夕空へ飛んでいった。


黒板には最後に一行だけ残っていた。


たぶんまた出るで

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ