表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/79

第三十五話:

登場人物


セラ(三神凌牙)


本編主人公。前世は現代日本で孤独と理不尽の中を生きた男。いじめ、搾取、裏切りを受け続け、事故をきっかけにこの世界へ来た。ポセイドンに“器”として利用されるため召喚されたが、今はその運命に抗い、自分の意思で生きることを選んだ戦士。不器用で寡黙だが、芯は誰よりも強い。


鳥羽姫


黒翼の国を率いる姫君。知略と政治力に優れ、乱世においても民を守り抜く名君。セラの過去を深くは問わず、ただ今の彼を信じて支える存在。静かな強さを持つ女性。


空牙カイオス


鴉天狗族きっての豪傑。豪快で騒がしく、場の空気を変える男。武勇に優れ、仲間思いで義理堅い。セラの数少ない本音を見せられる友でもある。


焔牙


冥王ハデスの血を引く少年。赤髪と黒炎を操る危険な力を持つ。感情が高ぶると暴走の兆しを見せるが、根は素直で人懐っこい。セラを父のように慕っており、今回も「父さん」と呼び続けている。


ダーマネッギ


ネッギ帝国最強格の将軍。双槍の達人で、冷静沈着な現実主義者。厳格だが情に厚く、息子への愛情も深い。連合軍では軍事面の中核を担う。


ダーラキッギ


熱血で真っ直ぐな若き槍騎士。勢い余って失敗も多いが、今回は焔牙の暴走を体当たりで止め、被害を防いだ。父に認められたい気持ちが強い努力家。


アテーナー


戦略と知恵を司る女神。世界の危機に際し、地上へ降臨した。セラの前世と転生の真相を知る存在であり、彼に真実を告げた導き手でもある。


ポセイドン


海を支配する神王。かつてセラの魂を利用し、自らの器としてこの世界へ引き込んだ張本人。すでに命を落としているが、その意志と因縁は今も世界に影を落としている。


クロガミ


未来を語るだけでなく、未来そのものを歪めようとする存在。歴史の裏で暗躍する黒幕。白き王都ルクシアで待ち受ける最大の敵。


白き王都ルクシア


かつて理想国家の中心だった白き都。現在は廃墟となっているが、世界を書き換える“門”が眠るとされる。連合軍の次なる目的地。


ネッギ帝国


圧政と支配で恐れられながらも、物流・治安・軍事で世界を支える巨大国家。矛盾を抱えた現実の象徴。今回、連合軍の大戦力として進軍する。



人物関係


セラ × 焔牙


血縁はないが、父子に近い絆が芽生えている。


セラ × 鳥羽姫


過去ではなく今を見て支え合う特別な関係。


ダーマネッギ × ダーラキッギ


厳格な父と、認められたい息子。少しずつ通じ合い始めた親子。


セラ × ポセイドン


利用する神と、運命に抗う人間。物語の根幹にある因縁。


連合軍 × クロガミ


世界の未来を賭けた全面対決へ向かう構図。



この章の位置づけ


世界を救う進軍の章であると同時に、

セラ個人の“始まり”が明かされた章。


英雄誕生の物語ではなく、

捨てられた一人の男が、自分の意思で立ち上がる物語へと変わった重要回。

第三十五章:白都進軍


夜明けと共に、連合軍は動き出した。


黒翼の旗。

ネッギ帝国の赤槍旗。

鄒魔境の紫黒旗。

白翼残党の銀羽旗。


本来、同じ道を進むはずのなかった軍勢が、一本の街道を埋め尽くして進軍する。


目指すは――白き王都ルクシア


滅びた都。

世界を書き換える門が眠る地。



先頭を歩くのはセラだった。


その横には鳥羽姫、少し後ろに空牙カイオス


さらにその隣では、焔牙が落ち着きなく跳ねている。


焔牙


「なあ父さん!」


「父ではない」


「俺、今日すげえ活躍する気がする!」


「嫌な予感しかしない」


「なんで!?」


鳥羽姫が静かに言った。


「その予感は私も同じだ」



後方では、鎧の音と共に若者の声が響いていた。


ダーラキッギ


「今回こそ汚名返上! 名誉挽回! 父上に認められる!」


ダーマネッギ は馬上で頭を抱える。


「静かに歩くだけでいい」


「了解しました! 全力で静かに歩きます!」


「意味が分からん」


空牙が笑い転げた。



進軍から半日。


白き平原へ入った時だった。


焔牙が急に立ち止まる。


「……熱い」


その身体から黒い炎が漏れ始めた。


地面が焦げる。


兵たちがざわつく。


鳥羽姫が剣へ手を伸ばす。


「来たか」


焔牙は頭を抱えた。


「なんか……中で誰かが笑ってる」


セラの顔色が変わる。


「ハデスの血か」


焔牙の瞳が赤黒く染まる。


「燃やせって……言ってる」


黒炎が爆ぜた。



兵たちが吹き飛ばされる。


空牙が飛び出す。


「坊主ぉ!」


焔牙は咆哮し、巨大な炎柱を放った。


だがその前へ、一人の影が飛び込む。


ダーラキッギだった。


「ここは俺に任せろぉぉ!」


「お前か!」


誰もが思った。


ダーラキッギは槍を地へ突き立てる。


「帝国式制圧陣・螺旋杭!」


大地が回転し、炎柱の勢いが逸れる。


さらに彼は焔牙へ飛びついた。


「落ち着け! 俺も若い頃は暴れた!」


「今も若いだろ!」


焔牙が叫ぶ。


「細かい!」


そのまま二人は転がって丘の下へ落ちていった。


沈黙。


空牙が呟く。


「……名誉挽回、なのか?」


ダーマネッギが遠い目をした。


「一応、被害は止めた」



その騒ぎの後。


軍は一時停止し、セラは一人、崖の上へ出た。


風が吹く。


白き王都ルクシアの廃墟が遠くに見える。


その時、背後から声がした。


「思い出す時だ」


振り向くと、アテーナー が立っていた。


「何をだ」


「お前がこの世界へ来た理由を」



アテーナーが指先で空へ触れる。


すると景色が変わった。


現代日本。


雨の路地。


一人の男が歩いている。


三神凌牙、若き日の姿だった。


痩せた身体。疲れた目。

制服姿の高校生たちが笑っている。


「おい、財布出せよ」


「走ってジュース買ってこい」


「使えねえな」


凌牙は何も言わず従った。


殴られ、金を取られ、物のように扱われる日々。


やがて社会へ出ても、利用され、捨てられた。


それでも生きた。


孤独に。


誰にも必要とされず。



そしてある夜。


仕事帰りの交差点。


凌牙は空を見上げていた。


「……もう自由でいいだろ」


その背後から、笑い声。


高校生たち。


「うわ、こいつ昔の!」


背中を押された。


車道へ倒れる。


ライト。


クラクション。


トラックの影。


そこで記憶は途切れていた。



次に目を開けた時。


そこは深い海の神殿。


巨大な玉座。


そこにいたのは――


ポセイドン


『哀れな人間よ』


『誰にも望まれぬなら、我が器となれ』


『復讐と支配のために』


セラの拳が震えた。


「……俺は」


アテーナーが続ける。


「お前は選ばれたのではない」


「捨てられた魂を、利用されただけだ」


沈黙。


だがセラの目は静かだった。


「そうか」


「なら、なおさらだ」


「今の俺は、俺が選ぶ」



アテーナーが微笑む。


「それを言えるなら十分だ」



その頃、丘の下。


焔牙とダーラキッギは泥まみれで座っていた。


「お前いいやつだな」


「当然だ!」


「でもちょっとうるさい」


「よく言われる!」


二人はなぜか仲良くなっていた。



セラが戻る。


鳥羽姫が問う。


「何かあったか」


「少し昔を思い出しただけだ」


彼女はそれ以上聞かなかった。


ただ隣に立つ。



白き王都ルクシアは近い。


滅びた都。

歪められた歴史。

そして、セラ自身の始まり。


連合軍は再び歩き出す。


今度こそ、自分の意思で。





―三神凌牙とアテーナーの会話―


進軍の夜。


連合軍の野営地は静かだった。

兵たちは明日に備えて眠り、焚き火の火だけが揺れている。


その外れ。崖の上に、三神凌牙――セラは一人立っていた。


遠くに見える白き王都ルクシア。

月光に照らされた廃都は、美しくも不気味だった。


背後から足音がする。


「一人で悩む癖、前世から変わらぬな」


振り向くと、アテーナー が立っていた。


セラはため息をつく。


「気配を消して近づくな」


「気配を消していたのではない。お前が鈍い」


「神は言い方が嫌味だな」


「お前ほどではない」


アテーナーは隣へ並び、同じ景色を見る。



しばし沈黙。


やがてセラが口を開いた。


「……俺は、本当にただ利用されただけなのか」


アテーナーは即答しなかった。


「ポセイドンは確かに、お前を器として呼んだ」


「だが、それだけで異界の魂は定着しない」


「どういう意味だ」


「この世界が、お前を受け入れたということだ」


セラは眉をひそめる。


「世界が?」


「そうだ。絶望しても壊れず、憎んでも腐らず、誰にも見られずとも立っていた」


「そういう魂を、この世界は欲した」


セラは苦笑した。


「評価が遅すぎる」


「神々は見る目が遅い」


「お前も神だろ」


「私は例外だ」



アテーナーはふっと笑った。


その表情は女神というより、一人の女性のようだった。


「前世のお前は、誰にも認められなかった」


「だが今は違う」


「国が動き、人が集まり、少年に父と呼ばれている」


「最後のだけはいらん」


「贅沢だな」



その時。


背後から、妙に静かな声がした。


「……楽しそうですね」


二人が振り向く。


そこには、扇を持った 鳥羽姫 が立っていた。


笑っている。


目は笑っていない。


セラの背筋が寒くなる。


「な、何か用か」


「いえ?」


「ただ、夜更けに二人きりで語り合うとは、随分と親しいのだなと」


アテーナーは面白そうに口元を押さえた。


「嫉妬か?」


「違います」


即答だった。


「では怒っているのか」


「違います」


さらに即答だった。


「ではその扇を握り潰しそうな手は何だ」


「癖です」


セラは小声で呟く。


「絶対違う……」



鳥羽姫はセラへ近づく。


「セラ殿」


「……はい」


「女神との密会は、もう終わりましたか?」


「密会ではない」


「そうですか」


「では次からは私も同席します」


「何でだ」


「監視です」


「監視!?」


アテーナーが肩を震わせて笑い出した。


「ははは……! 面白い姫だ」


鳥羽姫はじろりと睨む。


「あなたも、あまり距離が近いと槍より先に扇が飛びますよ」


「怖いな」


「本気です」



セラは頭を抱えた。


「世界の危機より疲れる」


鳥羽姫は腕を組む。


「それは結構」


「私が気にしている証です」


一瞬だけ、頬が赤かった。


セラは言葉を失う。


アテーナーは満足げにうなずく。


「なるほど。この男にはお前のような者が必要だ」


「放っておくと、すぐ一人で背負う」


鳥羽姫は静かに答えた。


「ええ。ですから逃がしません」


セラは空を見上げた。


「……敵より味方が強い」



その頃、少し離れた焚き火の前。


焔牙 が空牙へ聞いた。


「父さん、モテるの?」


空牙カイオス は笑った。


「いや、振り回されてるだけだ!」


焔牙は真剣にうなずく。


「大人って大変だな」



明日、白き王都へ進軍する。


だが今夜だけは、戦の前の小さな騒ぎが、皆の心を少し軽くしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ