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異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


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第十九話:

この章の真相


* カイオスの本当の名は 空牙

* 烏羽姫とセラはかつて深く愛し合っていた

* 二人の仲を妨げた一因に アルテミス の介入があった

* トリートーン は最後に父へ反旗を翻し、命と引き換えにポセイドンを討つ

* ポセイドンはかつてゼウスを陥れた因果のように、息子に討たれた

* その死を待っていた ハデス が姿を現す

第十九章:海神王の処刑台


―神が落ちる日―


 


黒翼の都、最上層。


 


断崖の頂に築かれた祭壇があった。


 


かつて天候を祈り、風を鎮めた聖地。

今は処刑台として使われている。


 


空を覆う海流。

都を包囲するポセイドン本隊。

その中央、巨大な水座に腰掛ける海王。


 


ポセイドン。


 


 


「跪け、愚かな子らよ」


 


 


その声だけで空気が震えた。


 


兵たちは膝をつき、翼ある者たちですら息を呑む。


 


だが、ただ一人。


 


セラだけは立っていた。


 


その隣にはカイオス。

背後には烏羽姫。

さらにトリートーンが槍を握る。


 


 


「……親子揃って反抗期か」


 


ポセイドンが笑う。


 


 


「親子だからだ」


 


セラは短く答えた。


 


「奪われたものを返してもらう」


 


 


烏羽姫が前へ出る。


 


黒翼を広げ、王の威厳で告げる。


 


 


「まず、我が子の名を返せ」


 


 


カイオスが震える。


 


 


「僕の……名?」


 


 


烏羽姫は優しく微笑んだ。


 


 


「お前の本当の名は――」


 


空牙


 


空牙くうが


 


「空を駆け、牙のように未来を切り拓けと、父と母で決めた名だ」


 


 


少年の瞳から涙がこぼれた。


 


 


「……空牙」


 


 


セラは頭を撫でる。


 


 


「いい名だ」


 


 


「父さんが付けたの?」


 


 


「半分な」


 


 


小鴉が後ろで泣いていた。


 


「こういうの弱いんだよ私は……」


 


 


その時、ポセイドンが鼻で笑う。


 


 


「くだらん」


 


「名など支配の札にすぎぬ」


 


 


烏羽姫の瞳が怒りに染まる。


 


 


「お前には分からぬ」


 


 


セラは剣を抜く。


 


 


「よく分かる」


 


「だからお前は一人なんだ」


 


 


海王の顔から笑みが消えた。


 


 


「……殺せ」


 


 


海軍が一斉に動く。


 


黒翼軍も飛び立つ。


 


空と海の総力戦が始まった。


 


 


 


戦場の中、トリートーンは父へ向かっていた。


 


槍を握る手が震えている。


 


 


「父上……」


 


 


「失望したぞ」


 


ポセイドンは冷たく見下ろす。


 


 


「お前は私の傑作だった」


 


 


「違う」


 


トリートーンは涙を流す。


 


 


「俺は……あなたの道具じゃない」


 


 


海王が三叉槍を構えた。


 


 


「なら、壊すだけだ」


 


 


二柱の海神が激突する。


 


波が空へ昇り、雷が海底まで走る。


 


だが父は圧倒的だった。


 


トリートーンの槍が砕け、身体が裂かれる。


 


 


「終わりだ」


 


 


その瞬間。


 


トリートーンは砕けた槍の欠片を握り締め、最後の力で跳んだ。


 


 


「兄上に……謝りたかった」


 


 


欠片がポセイドンの胸を貫く。


 


 


静寂。


 


 


海王の目が見開かれる。


 


 


「……馬鹿な」


 


 


血ではなく、蒼い神気が噴き出した。


 


 


「ゼウス……兄上……」


 


 


かつて神話の時代。

ゼウス を陥れ、王座を奪おうとした因果。


 


その報いのように。


 


今度は自らが、息子に討たれる。


 


 


ポセイドンは崩れ落ちた。


 


海が静まり返る。


 


 


トリートーンもまた膝をつく。


 


 


「兄上……これで……」


 


 


セラが駆け寄る。


 


 


「喋るな!」


 


 


「少しだけ……兄弟らしいことを……」


 


 


彼は笑った。


 


 


「俺は……兄上が、好きだった」


 


 


そのまま、力尽きた。


 


 


セラの拳が震える。


 


憎んだ弟。

だが最後に、ようやく弟になった男。


 


 


その時だった。


 


海の底から、低い笑い声が響く。


 


 


「兄が落ちたか」


 


 


割れた海の裂け目から、黒き王冠を戴く男が現れる。


 


死人の軍勢。

冥府の霧。

死の気配。


 


 


ハデス。


 


 


「待っていたぞ、この時を」


 


 


セラの瞳が揺れる。


 


 


ポセイドンの弟。

そして、自らの出生にも関わる男。


 


 


ハデスは微笑む。


 


 


「さあ、甥よ」


 


「次は家族の続きをしよう」


 


 


神が一柱倒れた日。


 


だが戦いは、まだ終わらなかった。

後書き


第十九章は、この物語における大きな節目――

「父の時代の終わり」 を描いた章でした。


これまで絶対的な存在として君臨していたポセイドン。

力で支配し、血で縛り、感情すら道具として扱った海王は、ついに息子の手によって倒れました。


けれど、それは単純な勧善懲悪ではありません。


討ったのは英雄ではなく、ずっと父に認められたかった息子――トリートーンです。


彼は兄を憎み、父に尽くし、競い続けてきました。

しかし最後に選んだのは、命令ではなく自分の意志でした。


「兄上に謝りたかった」


この一言に、彼の人生すべてが詰まっています。


敵であり、弟であり、被害者でもあった男。

トリートーンは最期の瞬間に、ようやく誰かの駒ではなく、ひとりの人間になれたのだと思います。


一方、セラもまた大きなものを得ました。


カイオスではなく、空牙 という本当の名。

父と母が願いを込めてつけた名前。

それは奪われていた人生を取り戻す象徴でもあります。


名前とは、ただ呼ぶための記号ではありません。

「あなたはこう生きてほしい」と願われた証です。


ずっと誰かに決められてきたこの物語の中で、

空牙が名を取り戻した意味は非常に大きいものです。


そして烏羽姫とセラ。


二人の過去の恋愛が明かされました。

戦乱や神々の介入がなければ、違う未来もあったでしょう。


けれど失われた時間があるからこそ、

今ここで家族として向き合える重みがあります。


しかし、ポセイドンの死で終わりではありません。


神の世界に空いた王座。

割れた海。

残された民。

そして現れた冥王ハデス。


ここから物語は「親への反逆」から、

出生と血脈の真実 へ進んでいきます。


セラは何者なのか。

なぜ生まれたのか。

誰の願いで、誰の罪で、ここにいるのか。


次章は、その核心です。

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