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異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


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第十二話:

家族とは、血で決まるのだろうか。


同じ血を引けば親子なのか。

契約で結ばれれば夫婦なのか。

生み出されたなら、従うべきなのか。


神々はそう考える。


命を作り、名を与え、役目を押しつける。

愛と支配の違いすら曖昧なまま、誰かの人生を決めていく。


けれど人は違う。


傷つき、迷い、拒み、

それでも自分で選び直すことができる。


セラは神々の都合で生まれた。

リナは神々の都合で縛られた。

アルテミスもまた、神の名を背負わされた人間だった。


そして今、現れる新たな子ども。


血を与えられ、育てられ、武器として磨かれた少年。

感情も未来も奪われた、哀れな後継者。


これは戦いの章であると同時に、問いの章でもある。


親とは何か。

子とは何か。

そして、本当の家族とは何か。


神々が決めた運命に、

人の心が牙を剥く時が来た。


登場人物


セラ


本作の主人公。

神々の思惑によって生まれた特異な存在。

前世は三神凌牙という人間で、孤独な人生を送っていた。

今は過去に縛られず、「今ここで守るべきもの」のために戦うと決めている。



リナ


ルナ村の少女。

明るく芯の強い女性。

神儀契約によってトリートーンに縛られ、血を利用されていた過去を持つ。

少年カイオスを前に、怒りと母性の間で揺れる。



トリートーン


ポセイドンの実子であり、セラの弟。

正統な後継者として育てられたが、兄への嫉妬心と支配欲を抱く。

カイオスを自らの後継として鍛え上げ、セラの前に差し向ける。



ポセイドン


海の王。

神々の秩序を重んじる支配者。

セラを監視し、トリートーンを溺愛してきた。

カイオス育成にも関わっている。



カイオス


リナの血を元に造られた少年。

トリートーンとポセイドンにより後継者として育成された。

感情を抑え込まれ、命令に従うことだけを教え込まれている。

この章の鍵を握る存在。



イネ


猫族の村出身の少女。

かつてセラに村を救われ、その恩返しのため現れた。

明るく積極的で、セラの妻になると公言している。

場をかき回しながらも、空気を変える力を持つ。



アルテミス


月と狩猟を司る女神。

その魂の正体は転生者・花下翼(26歳)。

ポセイドンによって命を救われ、アルテミスの器へ魂を宿された。

セラに共感し、彼の味方として戦う。



花下はなした つばさ


アルテミスの前世。

現代日本を生きた26歳の女性。

不器用ながら真面目に生きていたが、事故に遭い転生した。

人間だった頃の感情が、今もアルテミスの中に残っている。

第十二章:猫耳と嫉妬と海の軍勢


―偽りの契り、真実の名―


 


朝から村は騒がしかった。


 


「セラ様ー! 朝にゃ! 起きるにゃー!」


 


扉が勢いよく開き、猫耳少女が飛び込んでくる。


 


イネ は布団ごとセラへ飛びついた。


 


「重い」


 


「愛が重いにゃ!」


 


「降りろ」


 


「いやにゃ!」


 


 


その光景を、入口からリナが無言で見ていた。


 


笑顔。


 


だが目が笑っていない。


 


 


「……朝から仲良しね」


 


 


セラは危険を察したが、遅かった。


 


リナはイネの尻尾を掴み、引き剥がす。


 


「この猫、外に干していい?」


 


「やめるにゃああ!」


 


 


村に久々の騒がしい朝が戻っていた。


 


だが、その空気を裂くように鐘が鳴る。


 


 


見張り台から叫び声。


 


「海だ!!」


 


「海が来るぞ!!」


 


 


この地に海はない。


 


だが村の外、平原の彼方に巨大な水壁が進んでいた。


 


波の上を軍勢が進む。


 


甲冑を纏う海兵。

海獣。

槍を掲げる兵団。


 


先頭に立つのは、青き王子。


 


トリートーン。


 


その隣には、一人の少年がいた。


 


銀髪。

青い瞳。

幼い顔に不自然な無表情。


 


 


リナの顔色が変わる。


 


 


「……まさか」


 


 


トリートーンの声が響く。


 


 


「兄上。今日は返還を求めに来ました」


 


「私の妻と、私の後継を」


 


 


村人たちがざわめく。


 


リナは唇を噛んだ。


 


 


「言ってなかったことがある」


 


 


セラは黙って聞く。


 


 


「形式上の契約だけじゃなかった」


 


「神の儀式で、私の血を使われたの」


 


 


彼女は少年を見る。


 


 


「……あの子は、私の血から造られた存在」


 


 


少年は人形のように立っている。


 


 


トリートーンが微笑む。


 


 


「母はリナ。育てたのは私と父上――ポセイドン」


 


「神の兵として完璧に鍛えました」


 


 


リナが震える。


 


「……子どもを、兵器にしたの?」


 


 


「誇り高き教育です」


 


 


セラの目が冷える。


 


 


「名は」


 


 


少年が初めて口を開く。


 


 


「カイオス」


 


 


感情のない声だった。


 


 


その時、イネがセラの腕にしがみつく。


 


 


「大丈夫にゃ!」


 


「イネがセラ様の妻になって支えるにゃ!」


 


 


沈黙。


 


 


「誰が決めた」


 


「今決めたにゃ!」


 


 


リナが額を押さえる。


 


「増やさないで……問題を……」


 


 


 


その時。


 


空に月光が走る。


 


海の軍勢の前へ、一人の女性が降り立った。


 


銀の髪。

白い衣。

神気を纏う女神。


 


アルテミス。


 


だが彼女は静かに言った。


 


 


「……もう隠しても意味はないわね」


 


 


セラが見る。


 


 


「私も転生者よ」


 


 


村中が固まる。


 


 


「前世の名は――花下はなした つばさ


 


「二十六歳。日本で生きていた女」


 


 


セラの瞳が揺れる。


 


 


「事故で死にかけた時、ポセイドン に拾われた」


 


「その時、瀕死だった本来のアルテミスの器に、私の魂を入れられたの」


 


 


トリートーンが舌打ちする。


 


「余計なことを」


 


 


アルテミス――いや花下翼は続けた。


 


 


「私は神じゃない」


 


「でも、アルテミスとして生きてきた」


 


「そして……セラを見て、前世の孤独を思い出した」


 


 


セラは静かに問う。


 


 


「お前も、人だったのか」


 


 


「ええ」


 


「恋も失敗したし、仕事も大変だったし、上司は最悪だった」


 


 


「……少し親近感がある」


 


 


リナが睨む。


 


「そこ共感しないで」


 


 


イネは尻尾を逆立てる。


 


「ライバル増えたにゃ!」


 


 


トリートーンが槍を掲げる。


 


 


「茶番は終わりです」


 


「兄上、その子と妻を返してもらう」


 


 


セラは一歩前へ出る。


 


 


「断る」


 


 


「妻でもない。子も物でもない」


 


「お前ら神の所有物ではない」


 


 


地面が震える。


 


月光と水流が交差する。


 


 


アルテミスは弓を構え、

リナは少年カイオスを見る。

イネは爪を立てる。


 


 


偽りの家族。

奪われた未来。

そして選び直す今。


 


海の軍勢との戦いが始まった。

この章の真相


* リナはトリートーンと形式以上の神儀契約を結ばされていた

* 少年カイオスはリナの血を元に、トリートーン と ポセイドン に育成された兵器的後継者

* イネ は本気でセラの妻になるつもり

* アルテミス の魂は転生者 花下翼(26)

* セラとアルテミスは「元人間同士」という新たな繋がりを得る

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