↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/111

第十話:

人は、生まれだけで決まるのか。


神の子として生まれれば神になるのか。

呪われた子として生まれれば災いになるのか。

誰かに愛されなかった者は、永遠に孤独なのか。


セラはずっと、他人が決めた名前で生きてきた。


海神の子。

失敗作。

災厄。

罪人。


だがこの章で明かされるのは、もっと古く、もっと弱く、もっと人間らしい真実。


誰にも選ばれず、誰にも愛されず、

それでも最後に誰かを助けて死んだ、一人の男。


その魂は神々の遊戯に巻き込まれ、再び世界へ落とされた。


けれど――


たとえ始まりが偽りでも、

今ここで流す涙も、怒りも、守りたい願いも、本物だ。


これは出生の章ではない。

これは、自分で自分を名乗る章である。


神に与えられた名ではなく。

過去に縛られた名でもなく。


一人の男が、初めて「俺は俺だ」と立つ物語である。


この章の真相


* セラの魂の正体は、現代日本の男性 三神 凌牙(37歳・独身)

* 凌牙は事故死後、ハデス により転生の器として利用された

* セラ誕生時、ポセイドン が父を名乗り監視していた

* アルテミス は以前からセラの人間性を知り、密かに守っていた

* セラは初めて「自分の意思」で神の使徒を打ち倒した

第十章:神殺しの雨


―三神 凌牙―


 


雨は止まなかった。


 


村を打つ冷たい雨。

血の匂い。

焼け跡の煙。


 


セラの腕の中で、リナの呼吸は弱い。


 


その前に立つのは、海神の使徒。


 


青銀の鎧を纏う処刑者、ネレウス。


 


「罪人セラ」


 


三叉槍が向けられる。


 


「父なる ポセイドン の命により、ここで終わる」


 


 


セラは答えない。


 


ただ、雨の中で立ち上がる。


 


その瞳は、これまでと違っていた。


 


怒りだけではない。


 


もっと深く、もっと古い感情。


 


 


――知らない景色が見える。


 


狭い部屋。

積み上がった本。

光る画面。

誰もいない食卓。


 


 


「……なんだ」


 


 


頭の奥が割れる。


 


雨音に混じって、別の声が響く。


 


 


『思い出せ』


 


 


低く、暗く、底知れぬ声。


 


 


『お前はセラだけではない』


 


 


世界が揺れた。


 


 


 


見えたのは、異世界ではない。


 


日本の片隅。

薄暗いアパート。


 


男が一人、コンビニ弁当を食べている。


 


疲れた顔。

猫背。

無精ひげ。


 


年齢、三十七。


 


独身。


 


恋人なし。


 


友人も少ない。


 


誰にも求められず、誰にも選ばれなかった男。


 


名は――


 


三神(みかみ) 凌牙(りょうが)


 


 


「……俺?」


 


 


記憶が雪崩れ込む。


 


仕事に追われた日々。

報われない努力。

誰にも愛されない孤独。


 


そしてある雨の日。


 


交差点で子どもを庇い、車に轢かれた。


 


そこで人生は終わった――はずだった。


 


 


『終わっていない』


 


闇の声が笑う。


 


 


『お前の空虚な器に、我は種を落とした』


 


 


黒い王座。

冥府の炎。

死者たちの呻き。


 


そこに座す神。


 


ハデス。


 


 


『兄たちの世界を乱す駒が必要だった』


 


『だからお前に、第二の生を与えた』


 


 


凌牙の魂に、冥界の神性を宿し。

異世界に生まれ落ちた子。


 


それがセラ。


 


 


だが海の神 ポセイドン は、その異質さに気づいた。


 


海の血ではない。

死の気配を持つ子。


 


ゆえに、自らの子として囲い込み、監視した。


 


父を名乗りながら、拒絶し続けた。


 


 


「……俺は、道具か」


 


 


『そうだ』


 


ハデスは即答した。


 


『だが人間時代も同じだっただろう?』


 


『使われ、捨てられ、忘れられた』


 


 


凌牙の胸が軋む。


 


否定できない。


 


 


『ならば今度は奪え』


 


『神々から、世界から』


 


 


その時――


 


別の光が闇を裂いた。


 


銀の矢。


 


月光。


 


 


『黙りなさい、冥王』


 


 


現れたのは白銀の狩人。


 


アルテミス の使者たる白鹿が、光の中に立っていた。


 


その背後に、彼女の声が届く。


 


 


『セラ。いいえ、凌牙』


 


『あなたは駒なんかじゃない』


 


 


「……アルテミス」


 


 


『私は知っていた』


 


『あなたの中に、人の魂があることを』


 


『だから……放っておけなかった』


 


 


白鹿が頭を垂れる。


 


月の加護が、セラの身体へ流れ込んだ。


 


 


『選びなさい』


 


『冥府の怒りか。人としての願いか』


 


 


現実へ戻る。


 


雨の村。


 


ネレウスの槍が目前まで迫っていた。


 


 


セラは片手でそれを掴む。


 


金属が軋む。


 


 


「な……!」


 


 


ネレウスが目を見開く。


 


セラの背後で、水が黒く染まっていく。


 


海ではない。


 


冥府の河の色だった。


 


 


「俺はセラだ」


 


 


槍をへし折る。


 


 


「三神凌牙でもある」


 


 


地面が震える。


 


空から降る雨粒一つ一つが、刃へ変わった。


 


 


「そして――」


 


 


リナを見る。


 


血に濡れ、なお生きようとしている少女。


 


自分を庇った人間。


 


 


「今は、この村の男だ」


 


 


無数の雨刃がネレウスへ降り注ぐ。


 


絶叫。


 


鎧が裂け、神の使徒が地に沈む。


 


 


村人たちは震えた。


 


神を倒した。


 


神の子ではなく、人間だった男が。


 


 


セラは膝をつき、リナを抱き上げる。


 


 


「……死ぬな」


 


 


リナが薄く笑う。


 


 


「今の……告白?」


 


 


「違う」


 


 


「じゃあ、次はちゃんとして」


 


 


セラは顔をしかめる。


 


だがその目は、もう孤独ではなかった。


 


 


遠く海の彼方。


 


ポセイドン が立ち上がる。


 


「ハデスめ……」


 


 


冥府では、ハデス が笑った。


 


「面白くなった」


 


 


そして月の神殿で、アルテミス は静かに祈る。


 


「生きて、凌牙」


 


「今度こそ、あなた自身として」

第十章は、セラという存在の核心に触れる章でした。


彼は神の血を引く少年でありながら、その魂は現代日本を生きた男・三神凌牙でもありました。

報われず、孤独で、愛されることに縁がなかった男。


だからこそ、リナの温もりは眩しく、

アルテミスの想いは深く、

弟トリートーンの歪みもまた理解できてしまうのです。


この章でセラは神の使徒を倒しました。

ですが本当に倒すべき敵は、外にいる神々だけではありません。


「自分には価値がない」

「どうせ誰にも必要とされない」


そう信じてしまった、過去の自分自身です。


次章からは、恋と過去、そして選択の章へ進みます。

リナという現在。

アルテミスという過去。

そして凌牙としての人生。


セラが何を選ぶのか、物語はさらに揺れていきます。


⸻


登場人物


セラ


本作の主人公。

海神の子として育てられたが、その正体は現代日本の男性・三神凌牙の転生体。

孤独と拒絶の人生を歩んできたが、村で人の温もりを知り始める。

第十章では怒りに目覚め、神の使徒を討つ。


⸻


三神(みかみ) 凌牙(りょうが)


セラの前世。37歳、独身。

恋愛経験に乏しく、仕事に追われ、誰にも求められぬ人生を送っていた。

事故から子どもを庇って死亡し、その魂が異世界へ送られた。


⸻


リナ


ルナ村の少女。

明るく真っ直ぐで、セラの心を最初に照らした存在。

過去にトリートーンとの形式上の契約を結ばされていたが、心は一度も従っていない。

第十章ではセラを庇い重傷を負う。


⸻


アルテミス


月と狩猟を司る女神。

セラの中にある“人の魂”を見抜き、密かに見守ってきた。

冷たく見えて、誰より情が深い。


⸻


ハデス


冥界の王。

三神凌牙の魂を利用し、神界を乱す駒としてセラを誕生させた張本人。

静かに笑いながら世界を動かす策士。


⸻


ポセイドン


海の王。

セラの異質さに気づき、父を名乗りながら監視し続けた。

神界の秩序を乱す存在としてセラを排除しようとする。


⸻


トリートーン


セラの弟。

父に愛され、正統後継者として育てられた青年。

穏やかな顔の裏で、兄への嫉妬と排除欲を燃やしている。


⸻


ネレウス


海神直属の使徒。

セラ粛清のため村へ降臨するが、怒りに覚醒したセラに敗れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。