馬鹿は俺の方だった……
下らない話なので、鼻で笑ってやってください。
「うぐっ」
荒れ果てた荒野にて、激しい戦闘は激化し、その戦いは終盤を迎えていた。
勇者アレクとその一行。
対するは、魔王デモンとその影武者であるロン。
魔王デモンと同じ姿をしたロンは、勇者アレク一行を撹乱していた。
「ふはははっ! どっちが本物か分かるまい!」
「愚かな者どもよ。砕け散れ」
同じ声に同じ声量。
見た目も瓜二つの2人。
ロンは勝利を確信していた。
──勇者たちは我々の見分けがついていない。勝利は我らが魔王様のものだ!
しかしながら、ロンの考えは間違いに終わる。
「はぁぁぁっ!」
「ぐっぐぁぁぁぁぁうっ‼︎」
勇者アレクの剣が運悪く魔王デモンに突き刺さる。
聖剣の効力によって、魔王デモンは大きなダメージを負った。
更に追い討ちをかけるかのように勇者パーティの僧侶と魔法使いが魔王デモンに強力な攻撃魔法を撃ち込む。
──馬鹿め! そっちは本物だ!
「こ、この俺が…….負けるとは……」
魔王は赤黒く発光し、その体を消滅させていく。
「やった……やったぞ! 魔王デモンを討ち取った!」
「流石アレク様ですわ!」
「我々人類の勝利だな!」
──あれ?
ロンは今更ながら気が付いた。
魔王軍は魔王デモンが負けてしまったら、それで終わりだということに。
ロンは魔王の影武者として生きてきたため、自分がやられてはいけないという意味不明な錯覚をしていたのだ。しかし、彼は本来、魔王デモンの代わりに討たれておかなからばならなかった。
「ま、魔王様〜!」
時すでに遅し。
魔王デモンを犠牲にして、影武者のロンは命拾いをしたのだった。
「……あ〜、これはやっちゃったわ」
そんな軽いやらかしではない。しかし、ロンはこの敗北した状況下で、その一言を言うのが精一杯なのであった。
お読み下さり、ありがとうございます。