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ヤンデレ彼女も異世界へ!  作者: 黄田 望
第二章 【 魔王と神 】
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第84話 謎の男性②



 「おやおや。 来るのが随分と遅いと思えば、まさか君が追い詰められているとはね」



 背後から聞こえてきた男の声に反応した正樹は振り返る。

 しかし

 そこには誰の姿もなかった。


 「む? 不思議なものだ。 君は私の魔術の中で動けるのかい?」


 今度は塔柱の方から男の声が聞こえ再び振り返る。

 

 「・・・誰ですか、貴方は」


 痩せこけた女性が発生させた黒い塔柱の横には1人の中年の男が立っていた。

 長い杖を持ち茶色いローブを身に纏った男だ。

 少し顎に生やした髭を撫でるように触りながら、男は正樹をジッと見つめる。


 「ふむ。 特別な魔術を付与させている訳でもなく何かしらの能力を持っているわけでもない。 これは驚いた。 本当にただの人間が私の魔術の中を自由に動けるとは・・・」


 男は正樹の事を興味深く眺めながらブツブツと独り言を言っているようだ。

 そんな中で正樹はある事に気が付く。

 ここまで男の姿を認識してから周囲の物音が聞こえなくなっていた事に。

 先ほどまで聞こえていた鬼が暴れていた音や国の人々の悲鳴も叫びも聞こえない。

 上を見ると痩せこけた女性に攻撃を仕掛けていた由紀まで空中で浮いたまま動かなくなっていた。


 「アンタ?! 一体何をした!」

 

 正樹は攻撃態勢に入りながら男に怒鳴り上げる形で質問をする。

 

 「む? あぁ今のこの状態の事かな? 心配はいらないよ。 ただ()()()()()()()()()()()()

 「時間が、止まってる・・?」


 男はさも当たり前と言わんばかりに応えるせいで、正樹の状況整理能力がしばらく働かなくなった。


 「つまり・・この周囲一帯はアンタの魔法か何かで時間が止まってるっていうのか?」

 「ん? 少し違うな。 すまない。 語弊がある言い草をした事を謝罪しよう」


 だ、だよな。

 いくら何でも周囲一帯の時間を止めるとか無理だよな。

 多分だけど時間が止まってるのはこの建物の僕達がいるフロアだけの話で実は外は普通に時間が動いているとかいうオチだよな!


 「止まっているのは()()()()()()()()()。 つまり、今この時を持って自由に体を動かせているのは君と私の2人だけだ」

 「 !? 」


 世界そのものの時間を止めている?

 そんな事が可能なのか?

 もしもチートスキルか何かの能力だとしてもそんな只の人間が当たり前のように扱って良い代物なのか?

 兎に角、正樹の思考に浮かび上がったのはたったの1つ。

 

 この男は 危険 という事だけだった。


 「うおぉぉぉぉぉぉぉッ!!?」


 この男の強さがどれだけなのかは分からない。

 だけど何としてでも目の前の男を戦闘不能にしなくてはならないと判断した。

 男に向かって突進して拳を振り上げ攻撃を仕掛けた。


 「むむ。 見た感じからして優男だと思っていたが、結構暴力的な男だな君は」


 男は手に持つ杖を前に出すと短く唱える。


 「 『protect (私を)me.(守り給え)』 」


 すると杖は蒼く光輝きだして男を中心に蒼い球体のような物を発動させた。

 

 「なッ?!」


 男に向かって振り下ろした拳は男に当たる前に蒼い球体に弾かれる形で弾き飛ばされてしまった。


 「なんだ今の魔法?! マリーの女神の加護みたいな結界だな・・ッ」

 「魔法? ははは。 そうか君はこれを魔法と言ってくれるのか。 それはとても嬉しいな」

 

 男は何が嬉しいのか微笑ましい笑顔を見せる。

 

 「はい? 別に褒めたわけでもないんですけど?! っていうか早くこの時間を止める魔法も解いてくださいよ! それに何が目的なんだアンタッ! その女の人の仲間か何かかッ!」

 「おいおい質問が多いな。 そんなに一度に質問されてもどれから返したらいいか迷うじゃないか」


 そういうと男は再び杖を持ち上げ唱え始めた。


 「『get rid of it.『排除したまえ』 Get rid of it.『駆除したまえ』This is『これは』 God punishment.『神罰なり』」


 男が持つ杖は少しずつ蒼く光り輝き始めたと思うと、今度は電撃のような物が放出され始めた。

 その杖の矛先は正樹・・ではなく今も上空にいる由紀に向けられた。


 「ッ!! まさか!?」

 「 【 雷槍(サンダー スペアー) 】」


 杖から放出され続けた電撃は周囲を巻き込みながら真っ直ぐと由紀に向かって放たれた。


 「由紀ちゃんッ!?」


 男が発動させた魔法は由紀に直撃して大爆発を起こした。

 完全に無防備状態であった為に周囲の建物がえぐれる雷撃をくらえば例え神の権限を持っている由紀とは言え無事ではないだろう。


 「ふむ。 すまないね。 本当は普通に君の質問に答えても良かったのだがあの娘の事が少し気になってしまってね。 先に排除させてもらったよ」


 男は悪気もなく、まるで邪魔な虫を排除したかのように自然な表情をしていた。


 「さて、君の質問だったね。 どれから答えたものか・・まずは―――」


 男がまた髭を触りながら正樹の質問を答えようとした時だ。

 正樹は男のすぐ目の前にまで距離縮めて拳を振り上げていた。


 「~~~~~ッッ?!?!」


 正樹の拳は男の顔面に直撃して、男はそのまま二転三転と吹き飛ばされた。


 「む、むぅ~ッ・・やるじゃないか。 少し意識が飛びそうになった」

 「黙れ」

 「~~ッ?!」


 男はふらつきながら立ち上がろうとしたが、また正樹は一瞬で男の目の前にまで距離を縮め、今度は男の頭を踏みつけ地面にめり込ませた。

 

 「お前は絶対に許さねぇ」

 「~~~~~~~ぅ!?」


 踏みつけられながらも男は杖を小さく振り先ほどとは威力の小さい電撃を放出された。

 しかしそれでも直撃すれば人間であれば気絶するレベルの威力はあった。

 ・・・が、正樹はその電撃を簡単に避けきった。

 流石にその場ですべて避ける事は不可能だった為男との距離は先ほどと同じ距離を開けてしまう形となる。


 「ふぅー・・ふぅー・・・まったく、何なんだ君は。 色々と常識外れな男だな。 本当に人間か?」

 「黙れしゃべるな」


 杖で支えながら立ち上がる男に正樹は冷たい目つきで男を見下ろす。


 「お前みたいな外道が常識を語ってんじゃねぇよ。 僕はお前を許さない。 覚悟しろよ下衆野郎」

 「・・・やれやれ。 今日は予想外の事が次から次へと。 まぁ、これも試練と思えばよいか」

 「! 傷が・・」

 

 先ほど男の顔を殴りつけて地面に踏みつけた事で、少なくとも鼻の骨を折る重傷は負わせていたはずだったが、男は手で顔を覆い次に顔を見せた時には傷が完治しているようだった。


 「本当は君の質問に答えてあげたい所だったがね。 私もそれほど時間が無いんだ。 今日はこれで失礼するよ」

 「なんだよそれ。 まさかこのまま簡単に逃げれると思ったのか? あんまり舐めるなよ」

 「逃げる? 違うよ。 これは定められた運命なんだよ。 私は今からここから去る。 それはすでに決められた未来なんだよ」

 「何を訳のわからない事を・・・!」


 いきなりの事だったが、周囲の時間が再び動き出した。

 聞こえなくなっていた鬼の声や人々の悲鳴が聞こえてくる。


 「さて、これで失礼するよ。 君も早くこの国から離れた方がいい」

 「・・ッ、まてッ! どういう意味だ!!」

 「言葉通りの意味だよ。 今からこの国に神罰が下る。 遥か昔、この国に誕生した()()()()()の罪を受けるためにね」


 そうして男は姿を現した時と同じように、急に姿を消した。

 天まで貫き上っていた黒い塔柱と女性と一緒に。

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