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ヤンデレ彼女も異世界へ!  作者: 黄田 望
第二章 【 魔王と神 】
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第57話 ギルドの捜索依頼

 

 「――っという訳で、子供の捜索依頼とか来てないかしら?」


 腕を組み仁王立ちで見下ろす形で鋭い視線で訴えてくるのは自分よりも10以上も歳下の少女だ。

 ここは小さな村にある唯一のギルド支部。

 田舎である為にそれ程上級な冒険者を名乗れる者はいないが、それでもある程度のクエストをこなす事が出来る強者がそこそこいる。

 そんな田舎のギルドには最近S級冒険者に匹敵する新人が現れた。

 その人物こそが目の前に立っている少女、名をユキ・サイジョウと言う。


 「そんな事を言われてもなぁ~。 ここは迷子相談所じゃないからそんな依頼を受けたら冒険者じゃなくて近くの街の衛兵団に通す事になっていてだな――」

 「じゃあその衛兵団に通した依頼を片っ端から迷子の捜索がないか調べてきて」

 「調べてきてってお前さん・・俺もそんな暇なわけじゃ――」

 「へ~~~~~~~~~~。 人に依頼したクエスト報酬を満足に用意もできない職員の癖に断る事が出来るとでも?」


 鋭い視線は冷たい視線へと変化していき、今にも命を奪おうとする殺気を感じながら睨まれている男は頭を抱える。

 彼の名前はグレン・バースト。

 この田舎のギルドで冒険者試験の審査官をしており、更には管理職としても任されている職員の1人だ。

 そんな彼が何故10歳も年下の由紀に冷たい態度を取れているのには理由がある。


 今から1ヵ月ほど前。

 村の周囲に異常なゴブリンの出現報告を受け、ギルド支部は本部からの依頼を含め多くの冒険者をゴブリン討伐への依頼を受理させた。

 そんな中でまだ冒険者登録をして日にちが浅い正樹と由紀、そしてアンナがグレンからもゴブリン討伐を頼み込まれていた。

 最初はゴブリン討伐のクエストを受理しなかった由紀だったのだが、ギルド本部から送られる報酬の内容を見て受ける事にした。

 その内容と言うのが都市国家への旅行券取得という物だ。

 しかし

 ゴブリンの討伐に成功したのは良いものの、ギルドの手違いにより報酬である旅行券が受け取れない出来事が発生してしまった。

 何が何でも都市国家に行きたかった由紀はグレンに旅行券を手に入れるように言い渡すのだが、その後、カガミやマリーのいざこざに巻き込まれ、旅行券の話は自然消滅してしまっていた。

 

 「あ~分かった分かった! その依頼が受注されていないか確認しておくから、また明日にでも顔を出してくれ」

 「あら。 何を言ってるの? 明日まで待てないわよ」

 「え~、じゃあどれくらいまでに見つければいいんだ?」

 「1時間」

 「い、1時間ッ?! いくら何でもそんなすぐには――」

 「なに?」


 無理難題の仕事を押し付けようとする由紀に思わず椅子から立ち上がりそうになったグレンだったが、更に鋭い目つきで睨みつけ、薄っすらと殺気を放つ少女に気圧され静かに椅子に座り直した。


 その異様な光景はギルド職員の中で話題を生み、この間で数人の職員がグレンの仕事部屋のドアを少し開けて様子を見ていた。

 もっと詳しく言うと、グレンの仕事部屋の前でずっとドアの隙間から覗き込む()()()()に釣られて他の職員達も覗き込む形となった。 ――と言うのが、最も正しい状況だ。

 そのある職員と言うのが今も尚ドアの隙間から由紀とグレンの様子を伺っている女性職員、グレンの後輩であるテレサだ。


 「ムムム~ッ! 先輩ってば年下のは興味ないみたいな振りをしておきながら、あんな子供を部屋に連れ込むなんてッ! そりゃあ十代にしかない若さの美貌という物があるのは私も納得はしますが、でもでも流石にダメですよ先輩ッ! 犯罪です! ロリコンです! 捕まる前に私に乗り換えた方が良いですよッ!!」

 「・・・いい加減にしなさいよ。 このおバカ」

 「アイタッ!」


 ポコッと書類を丸めた棒でテレサの頭を叩いたのは、テレサの同期である女性ギルド職員、名をシルと言う。


 「シルちゃ~ん! どうしよう~! 先輩が~! 十代を~! ロリコンに~!!」

 「いや何言ってるのかさっぱり分からないんだけど・・・」


 涙目になりながら上目遣いでシルの顔を覗き込み抱きついてくるテレサに面倒くさそうに肩を落としながら中指で落ちそうになる眼鏡を整える。


 「だいたいアンタ、いつまでこんな所で油売ってるのよ。 早く自分の持ち場に戻って仕事しなさい。 アンタ担当の冒険者達がまだかまだかと待ちぼうけてるわよ」

 「ふぇ?」


 シルが指さす受付場の方を見ると、テレサが担当する受付場には長蛇の列が作り上げられており、男性冒険者が一定の距離で並んでいた。

 さっきまでグレンの部屋の様子に集中しすぎで気付いていなかったが、少し耳を傾けると別のギルド職員が冒険者達に自分達が話を聞くと声をかけると・・・


 『大丈夫だ。 それよりもテレサちゃんの笑顔を見る為に来てるんだ。 いつまでだっても待っていられるさ』

 『我々は冒険者。 例え火の中水の中であろうとテレサちゃんが戻ってくる事を耐えて待っていようッ!』


 ・・・などとセリフを残して他のギルド職員に耳を傾けようとしないのだ。

 その結果、ギルドの出入り口を飛び出すほどの列が作り上げられ、まるでアイドルの握手会のようなイベントが発生してしまっているのである。


 「全く。 一体ここを何処だと思っているのやら。 っという訳でテレサ。 さっさとあのバカ共(男性冒険者達)の相手して解散させてきて」

 「でも・・先輩を見張らないと・・う~、でも仕事はしないといけないし・・う~~ッ!」


 頭を抱え悩む様子を見せるテレサは、数秒の苦悩の末、ある答えを導きだした。


 「・・・シルちゃん」

 「うん?」

 「私、午後休をもらう事にするッ!」

 「却下よ」


 親指を立ててスッキリしたような顔で宣言するテレサにシルは首根っこを掴みズルズルと引きづり受付場へと連れて行く。


 「うわぁ~んッ! シルちゃんのバカ~! これで先輩があの子に目移りしたらシルちゃんのせいだから~ッ!!」

 「あ~はいはい。 その時は土下座でも何でもして謝罪するわよ。 だからアンタは仕事に専念しなさい」

 「わぁ~んッ!! 先輩のアンポンタンッ! 変態! ロリコンッ! 鈍感スケベぇ~ッ!!」


 こうして、シルに連行されて仕事へと戻って行くテレサの声は職員だけでなく受付場で待機している冒険者達にまで響き渡った。

 

 




 「・・・って言われてるわよ」

 「・・・」


 勿論、受付場まで聞こえているという事はグレンの部屋にもテレサのグレンに対する罵倒は聞こえている訳で、由紀がまるで哀れんだような視線でグレンを見る。



 (あのバカ(テレサ)・・・後で仕事を3倍にしてやるッ!!) 

 テレサのグレンに対する罵倒に対して由紀は警戒するように徐々に離れる。


 「まてまてまて。 違うぞ。 違うからね? 俺これでも紳士なおじさんだからねッ!!」

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