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ヤンデレ彼女も異世界へ!  作者: 黄田 望
第二章 【 魔王と神 】
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第58話 世界の危機


 「いい加減にしてくれないかしら~? カガミ~??」

 「お断り致しますマリー様。 これもすべて世界を守る為でございます」


 由紀が街へ降りてギルドのピースの捜索依頼が発注されていないか確認してもらっている同時刻。

 何故か威圧されて居残りを命じられた正樹と共にマリー達もアンナの家で留守番をしていた。

 しかし

 アンナの家ではテーブル越しにカガミとマリーが顔を合わせて緊張感を漂わせていた。


 「何が世界の守る為よ~。 貴方、一応(わたくし)直属の執事でしょう~? だったら(わたくし)の命令を聞くべきではなくて~??」

 「なりません。 それに私は貴女様の執事であり国王様から保護役としても務めさせてもらっている身。 なれば貴女様の身を守る為には命令に従う事が出来ない事もありますゆえ」

 「あら~。 本当、貴方ってば融通が利かないというか頑固というか~」


 ニッコリと笑みを浮かべて自分の顔が映るカガミの顔を見るアンナの目は全く笑っているようには見えない。

 それが逆に恐怖を上乗せにさせて妙な緊張感が漂わせる。


 (こういう所は奥様そっくりだなぁ~・・)


 そんな呑気な事をマリーの怖い笑みを見ながら考えているのはアンナだ。

 2人の異様な空気に挟まれる形でテーブルの側面側に椅子を置き座り、膝には由紀が出かける前に試作で作ったクッキーを頬張るピースが座っている。

 さて、そろそろ何故2人がこのようなイラついた様子の雰囲気を見せているのかというと理由は勿論・・・正樹にある。


 正樹に対して好意を持ち狙っているマリーを置いて1人で街へ降りた由紀が、思い人を狙う相手がいる空間に正樹を手放すわけがない。

 とは言え、街へ降りればまたも街娘達に正樹のスキル【ハーレム】が発動する事でまたも悪い虫が近づく事は目に浮かぶ。

 その為に由紀は正樹を街へ降りる事に対して否定したのだ。

 では一体、由紀はどうして正樹をマリーがいるにも関わらず留守番を差せたのか。

 その答えはカガミの鏡の中にあった。


 「早くマサキを鏡の中から解放しなさ~い。 カガミ?」


 カガミの顔である鏡の中。

 今は映っていないが鏡の空間のその奥に、正樹はいた。


 「あの重い女(由紀)に何を言われ脅されているのかは分かりませんが~。 いい加減にしないと貴方と言えど邪魔をするなら神の権限(女神の加護)を使ってでもそこからマサキを取り戻すわよ~」


 人差し指をゆっくりとカガミに向けて指をさし、鋭い目つきで見るマリー。

 しかし、カガミはそれでも首を縦に振らずにジッとその場から動かない。

 より緊張感が漂う雰囲気に、様子を見ていたアンナも思わず固唾を呑み込み、クッキーを食べ終え満足そうな顔をしているピースを抱きかかえる力を強める。


 『いやいやいやッ!! 一旦落ち着いてよマリー。 そんな事しても僕は出られないからね?!』


 そんな気まずい空気に耐え切れず、思わずツッコミを入れるように会話に割り込んできた声が聞こえる。

 その声に気が付いたピースは一体どこから聞こえてくるのかとキョロキョロと周りを見渡すと、ある場所でギョッと驚くような表情を見せた。

 声が聞こえる場所、それはカガミの顔についている鏡から息を切らして肩で呼吸を整え目をギラギラとさせている正樹の顔が映っていた。


 「おや。 思ったよりも早く戻ってこれたのですね正樹」

 『ちょっおまッ! ホントにお前ッ! ああいう事は何か一言言ってからにしてくれないッ?!』

 「そう言われましても、ああしなければ危なかったので・・主に私の命が」


 由紀が街へ降りる直前の事。

 由紀がいない間に正樹に対してあれやこれやと色々な企みをしているマリーに対しての防衛として、由紀はカガミに正樹を異空間へと繋がっている鏡の中へ閉じ込めるように指示していたのだ。


 『 いい? 私が戻ってくるまで絶対に正樹さんを鏡の中から出さないで。 もしも約束が守れなかったら・・・』


 由紀はカクンッと首を横に傾け、長髪を横に垂れ流しながら『 殺すから 』とマジトーンでカガミを脅した。

 もう一度いう。 

 お願いではない。  

 脅したのだ。

 脅迫されたのだッ!!

 

 (お、おぅ・・・カガミの空間にいるせいか、どことなく心の声が聞こえる・・)


 因みに正樹は一言も声をかけられず、急に背後からカガミに鏡の中へ吸収され、空間の奥まで引きづり込まれた。

 その為、鏡の出入り口であるカガミの顔までずっと走り続けていた。

 息を切らしているのはそのせいだ。


 「それで~? (わたくし)の神の権限でもそこから出る事が出来ないとはどういう意味ですかマサキ~?」


 正樹の顔が見られたおかげなのか分からないが、さっきまでのあからさまに不機嫌な雰囲気が消え柔らかい笑みを浮かべるマリーはテーブルに乗っかり鏡の中にいる正樹へと顔を近づける。


 『い、いや~それは~・・その~・・』


 しかし、正樹は近づいてくるマリーの顔を直視せずにおもむろに顔を横に向けた。

 その様子を見たマリーは何やらクスクスと笑いながら更にテーブルに乗っかり近づく。

 

 「あらあら~。 何故こっちを見てくださらないのマサキ~。 (わたくし)、貴方の顔が見たいわ~。 だから、こっちをいてくださらない?」


 どことなく色気のある声色で近づいてくるマリーに正樹は一歩鏡から後退する。


 『いや、だ、だったらさッ! その・・ふ、ふふふふ・・・()()()()()()()()()()ッ!!』


 色々と言葉を必死に考えながら正樹は声色を震わせながら告げた。

 そうなのだ。

 由紀が家を出たその瞬間、マリーは何故が急に上着を脱ぎ捨てたのだ。

 ――と言っても真っ裸ではなくスカートは脱がずに上着だけを脱ぎ捨て下着を露わにしている状態である。

 更に、今はテーブルに四つん這いで乗っかる形で鏡の中を覗き込む形のせいで嫌でも男子である正樹には自然と視線が胸部へと向かってしまう。


 「あらあら~! いいではありませんか~! そんなに恥ずかしがらずとも~。 (わたくし)と貴方は夫婦となる身。 ありの姿を晒した所で結局は行きつく所は一緒なのですから~」

 『ちょッ! まだその話続いてたのッ! 待って、ホントに待ってッ! 話をしようッ! 一旦話をッ!!』

 「えぇえぇ~! 話をしましょう~? だからまずはその鏡から出て(わたくし)とあちらの部屋へ――」

 『絶対ダメだからねッ! その誘導はダメな奴だらからねッ!!!』


 あからさまに誘惑をするマリーに対して顔を真っ赤にしながら見ないように必死に視線を別の場所へと向ける正樹。

 

 実は正樹がカガミの顔から出てこないのは出られない訳ではない。

 由紀が家を出てすぐに行動を起こしたマリーに対して正樹は本能的に察知したのだ。



 ―― このままだと、世界が滅ぶと ――



 もしもあのままカガミに鏡の中へと吸い込まれていなければ今頃、神の権限で誘導されてマリーの思惑通りに事が進んでいた可能性があった。

 そうなれば、その状況を由紀が知れば、間違いなく世界など気にせずに神の権限を発動して暴れ狂うに違いない。

 だから正樹は背後からカガミに吸い込まれた時は、心の底から安心したのだ。

 実際、カガミも正樹を解放しようと思えばいつでも鏡から出す事が出来る。

 しかし、今ここで由紀が戻ってくる前に正樹を解放してしまえばどうなるのか占いをせずとも予測できてしまった。

 だからカガミは由紀の協力(脅迫)を素直に受ける事にしたのだ。


 「ねぇ~、いいじゃないですか~。 早くそこから出てきてくださいよ~」

 『だったらまず上着を着てッ! そしてテーブルから下りてッ! まずはそこから始めようかッ!!』


 そんな小さな子供には見せられない光景が続く中、アンナはピースが視界に入らないように背を向けて窓から見える青空を眺めていた。

 太陽の日差しが丁度ピースの身体を包むように差し込んで温かくなったのか、ピースはアンナに抱きかかえられながら静かに寝息を立てていた。

一方、ピースの捜索依頼が発注されていないか確認に来た由紀は・・・

 

 「ところで、今日は旦那の方は一緒じゃないんだな」

 「えぇ。 ここに来るよりは安全な場所へ居てもらっているから」

 「オイオイなんだよそりゃ。 それじゃまるで街へ降りてくる方が危険みたいなセリフだな」

 「だって、実際そうなんだもん」

 「・・・」


 正樹が街へ降りてくる度に街娘達が群がってくる光景を思い出したグレンはこれ以上野暮な事は聞かない事にした。

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