第42話 不死身①
気が付けばカガミは簡略に自分の事を話してくれた。
ここが旧神殿と言っていた教会である事。
永遠の美貌を手に入れようとしている魔女がいる事。
そして、千年前も前から賢者の石を探していた事を。
「つまり、カガミは本当は魔術師で未来予知っていうのは只の占いだったって事?」
「はい。 私は何処にでもいる只のしがない占いを得意とする魔術師でした。 しかし、この千年という長い年月で時代は随分と変化していった為、世の中を知る為に執事という形で生活をしていました」
魔術師では面倒な事に巻き込まれる事も視野に入れ、世間の詳しい情報を手に入れる目的としても執事という役割は最適だったという。
「でも執事様。 貴方は一体どうやって千年も生きているのですか?」
「アンナ様が今手にしていらっしゃる本です」
カガミは洞窟でアンナに手渡していた本に指をさす。
「その本は元々この場所で保管されてあった魔術書なのです。 私は女王陛下の命により不老不死の方法を探しにここへやってきました。 そして見つけたのがその魔術書です」
魔術書には古代文字で記されている不老不死とだけ書かれたページが存在していた。
「えぇ、先ほど私もそのページを見ました。 しかしこの本に書かれているのは―――」
途中まで言いかけた言葉を呑み込むように黙り込み、アンナは天井を見上げる。
「アンナ? どうかした?」
「・・・これは・・・」
天井を見上げるアンナに釣られ正樹もまた天井を見上げる。
よく見ると時々天井が地震のように揺れてパラパラと天井の破片が落ちて来ていた。
「揺れてる? そういえばここ地下だっけ?」
「そうです。 そして正樹。 それとアンナ様。 どうか警戒を」
「え? なんで?」
かなり力が戻ってきたのかカガミはゆっくりと起き上がり両手で地面を押さえながら座る態勢をとる。
忠告するカガミに対して正樹はキョトンとした表情で不思議そうに首を傾ける。
「私の占いによると、そろそろやってきます」
「だから何が??」
天井を見上げると徐々に揺れが大きくなって言っているのが分かる。
まるで巨大な何かが何度も地面を殴りつけているような音が。
「なぁカガミ。 これ上で何が起きてるの? 巨人でも住んでるの?」
「・・巨人族なら、私も肩の力が抜けるのですけどね。 アンナ様なら、この揺れの正体をご理解されているのでは?」
「え? そうなの?」
隣に座って天井を見上げているアンナを見ると、思わず言葉を失ってしまった。
今まで出会って来てからのアンナは可愛らしい少女という印象が強い。
喜怒哀楽がハッキリとしており、家事に料理を完璧にこなし街の人々とも馴染んでいる。
しかし、目の前にいるアンナはこの一ヵ月以上一緒にいた中でも今まで見た事がない表情をしていた。
まるでそれは、仇敵に出会ったかのように怒り狂った顔だった。
「さぁ、来ますよ」
カガミがそう言葉に出したと同時に、大きな揺れが起こったと同時に天井が崩れ落ちてきた。
そんな状況の中、正樹は目を疑う光景を見た。
崩れ落ちてくる天井の瓦礫と共に何かが一緒に落ちてくる。
それは悲鳴のような雄叫びを上げながら祈るように両手を握る巨大な女神像と、そして――
「由紀ちゃん?!」
その女神像に対して攻撃的に黒いオーラを放つ由紀の姿が瓦礫と共に落ちてきた。




