第18話 判決
(な、なんでこんな所に女の子が?!)
散歩で近くの小川まで足を運んだ正樹は、川沿いで仰向けで倒れている女性を発見した。
日光により輝く白銀の長髪をひとまとめにしており、山を登るには少し場違いな高貴そうな服装を身に纏っている。
所々、服がはだけており呼吸によって上下に動く胸元が見えそうで、本来は脚が隠れるまで長いスカートも風のせいなのか真っ白な太ももが見えるくらいまでめくれ上がっている。
その姿は何処か色っぽく、多感な年頃の正樹には刺激があまりにも強い。
もしもこの場に由紀がいたならば背中から包丁で刺されるかもしれないような下心を正樹は抱く。
「・・・ってそんな事思ってる場合じゃない!」
自分の欲望を押さえる為、両頬を引っ叩き倒れている女性に声をかける。
「あの、どうかしましたか? 大丈夫ですか?」
この辺りは温厚な環境であるとは言え、つい数日前までゴブリンが出没していた森である。
そんな森に服がはだけた美女が小川で倒れていれば何かあったのではないかと危惧するのは当たり前だろう。
正樹はとにかく倒れている女性の意識があるのか確認する為、少し大きめの声量で声をかける。
「・・・ん・・」
女性はすぐに呼びかけに反応して薄っすらと目を開ける。
どうやら普通に眠っていたようだ。
「よかった。 大丈夫ですか? ここは穏やかとは言え森の中で寝てたら何があるか分からないですよ?」
「・・・」
女性は寝ぼけているのか正樹の顔を呆けた顔でしばらく見つめる。
意識が戻ったせいなのか動きがあったせいではだけていた服が更に見えそうな状況になり正樹は思わず顔を90度に曲げ視線を逸らす。
「あの! 大きなお世話かもしれないんですけど! こんな所でその服の着方は色々と危ないと思いますッ!」
彼女がいるとは言え女性の身体に耐性がない正樹は頬を赤らめてさせる。
一方、女性はまだ寝ぼけているのか未だに呆けた表情で正樹を凝視していた。
「・・・アナタ、誰?」
呆けた表情から怪訝そうな表情へと変化させた女性の最初の一言がそれだった。
「ぼ、僕は安生正樹っていう者です! 決して怪しい者ではありませんッ!!」
「・・あんじょう・・まさき?」
女性は寝転んだまま顔を傾け正樹の名前を反復する。
すると、段々と何かを思い出したように意識が覚醒していきゆっくりと座る態勢に起き上がり正樹の顔を覗き込む。
その態勢は胸元を緩めている服装では更に谷間が見えてしまう形となってしまい、正樹は更に顔を真っ赤になりながら視線を逸らす。
「・・なんでそんなそっぽ向くの?」
この女性はもう少し自分の状況を理解してほしい。
そんな事を心の中で叫ぶように思いながら正樹はカタコトな言葉使いで服が乱れている事を指摘する。
女性はしばらくまた呆けた表情をしながら自分の胸元を見る。
そして何事もなかったように再び正樹の顔を見るとニコッと笑みを向けた。
しかし、正樹はその笑顔に見覚えがあった。
いや、普段からよく見た事があるような感覚を感じた。
男性なら誰でもその笑顔を向けられれば自分に気があるのではないかと勘違いする表情のハズなのに、ピリッと肌に感じる空気がひりつく感覚と瞳の奥が全然笑っていない目。
それは、由紀が他の女性と正樹が会話をしている時によく向ける笑顔と同じものだ。
そんな事を思っていると、女性は緩んだ服の胸元を隠す仕草をしながら正樹に指をさす。
そして満面な笑顔でこう言った。
「 死刑♪ 」
その瞬間、周囲の地形が変形するような大爆発が正樹を襲った。
途中、街で買い物をしていたアンナと合流した由紀。
「今、とてつもなく危険な女の存在を察知した気がする」
(多分当たってるんだろうな~・・)
 




