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リリちゃんを真ん中に手を繋ぐ。
時々大きく手を振ってみたりちょっとだけ高く持ち上げてみたり。
リリちゃんはキャッキャとはしゃぎ、そんなリリちゃんを見てナギくんも嬉しそうにしている。
はぁ、本当にこの兄妹ってば可愛い過ぎる!!
公園はそんなに遠い距離ではなかったので、あっという間に到着してしまった。
お昼ご飯を食べに帰ってしまったのか、公園には他に誰もいない。
奥にある大きな木の下に、バサッと広げた敷物を敷いた。
「それじゃあ、靴を脱いでそこに座ってね〜」
里緒菜は先に見本となるように靴を脱ぎ、敷物の上に上がるとまずバッグからウェットティッシュと小さなビニール袋をとり出す。
「はい、これで手をきれいに拭いたら、この袋の中にポイってしてね」
ナギくん達は小さく頷いて言われた通りに手を拭くと、袋の中にポイしてから里緒菜を挟むようにして座った。
今までナギくんから少しも離れようとしなかったリリちゃんが、ナギくんの隣ではなく里緒菜の隣に座ってくれたのだ。
余りの喜びに、脳内で奇声を上げながら怪しげな喜びの舞を踊りつつ、ゴロゴロと転げ回る。
リアルにやったらきっと逃げられてしまうだろうから、あくまでも脳内で、である。
とはいえ、やはり嬉しさは隠すことはできず、締りのないニヨニヨ顔でバッグから重箱を取り出せば、二人は前のめりになりながら重箱をジィッと見ている。
カパッと蓋を開けた瞬間、二人の口からは
「「わぁっ!!」」
という嬉しそうな悲鳴が飛び出した。
二人にフォークと紙皿を渡しながら、
「好きなだけ食べてね」
と言えば、本当にいいの? といった視線を向けてきたので、笑顔で頷くと安心したように視線を重箱へと戻す。
そしてクイクイっとワンピースを引っ張りながら、ナギくんが質問してくる。
「ねえねえ、これは何?」
「それはね、おにぎりをお肉で巻いて味付けした肉巻きおにぎりだよ」
「じゃあ、これは?」
「それは鶏肉を味付けして油で揚げた唐揚げっていうの。こっちはエビにパン粉をつけて揚げたエビフライ。この白っぽいタルタルソースか茶色いソースのどちらかをつけて食べてね。あとこの黄色いのは少し甘めに作った玉子焼きだよ」
ニコニコと説明していれば、今度は反対側のワンピースがクイクイっと引っ張られて、そちらに顔を向ければリリちゃんがモジモジしながら、
「このお花はなぁに?」
なんて可愛く聞いてくる。
「これは薔薇の花のつもりで作ってみたの。ハムとスライスチーズで作ってあるから、食べられるのよ」
食べられると聞いて、ナギくんもリリちゃんも驚いた顔をしている。
この世界では、食べ物をキレイに飾り付けしたりといったことはしないようである。
タコさんウィンナーとかキャラ弁なんて作ったら、ものすごい驚きながらも喜んでくれそうだな、なんて思って自然に口元が緩んでしまう。
その間にも二人は何から食べようかと、重箱をジィッと見ている。
そしてナギくんは肉巻きおにぎりへとフォークを伸ばし、リリちゃんはまだ迷っているみたい。
「どうしたの?」
と声を掛ければ、
「このお花さん、キレイなのに(フォークを)刺したらかわいそう……」
なんて、またまた可愛いことを言ってくれちゃうから、抱きしめたいのをめちゃめちゃ我慢して頭を撫で撫でする。
「じゃあ、はい」
フォークで掬うようにしてお皿に乗せてあげると、嬉しそうにありがとうと言ってくれて、いやぁ、オネエサンはメロメロですよ。
「美味しい!」
ナギくんが大きな目を更に大きく開いて言うので、
「いっぱい食べてね」
と頭を撫で撫ですれば、ウンウンと頷いてすごい勢いで食べている。
リリちゃんの方を向いて、
「リリちゃん、次は何食べたい?」
と聞けば、恐る恐る玉子焼きを指差して。
「この、黄色いの食べてみたい」
上目遣いで言われたら、もういそいそとお皿に玉子焼きを乗せるしかないでしょう?
まぁ、子どもが大人と目を合わせようと思ったら、上目遣いになるのは当たり前のことなのだろうけれど、いや、このちんまいもふもふちゃんの上目遣いってば、破壊力やば過ぎ!