王子お披露目 午前お茶会2
品の良い赤で染められた布と多くの色を混ぜ合わせて作られた贅沢な黒色の布で作られた礼装に光沢のある滑らかな生地に金糸で王家の紋章が大きく入れられている厚みのあるマントを羽織った子供がゆっくりとした足取りでダスクウェル家が取り仕切るテーブルへと向かってくる。
淡い金髪がさらりと肩から流れ、美しく整った顔立ちと大きな瞳を見れば、何も知らないものからは少女と誤解されてもおかしくはない。エメラルドグリーンの瞳が爛々と輝いており、楽しそうに表情を和らげながらメルネアとエルーナに目を向ける。
「本日の主役がいらっしゃったようだ。」
ダスクウェエル公爵が小さくつぶやきながら顔を向けたので、他の者も同じように柔和な笑みを浮かべて子供に注目する。
本日の主役。ルディウス王子がテーブル近くに到着すると、ダスクウェル公爵とメルネアの間にただ一つ空けられている席へと向かい、側近に手伝われながらも優雅に座った。その身のこなしからも十分に教育がいきわたっていて、噂通りに優秀であるということが伝わる。
「本日は私のためにお集まりくださり、誠にありがとうございます。ご歓談の途中かと存じますが、ご挨拶させていただきたく思います。」
小さく頭を下げながら前置きを述べてから、自己紹介を始める。王子とはいってもこの国では爵位を持つ貴族よりは身分が低い。そのため、王族であっても目上の者が集まるこの場では頭を下げて立場をわきまえながら話を進めなければならない。
「この度5歳の誕生日を迎え、正式にこの国の王族として公の場に出ることとなりました。ルディウス=エル=ダナトゥーラと申します。以後お見知りおきを。」
挨拶を終えたルディウスはゆっくりと頭を上げてダスクウェル公爵を見る。ダスクウェル公爵は小さくうなずいてから微笑んだ。
「貴殿の門出に幸多からんことを願います。また一段と立派になられましたよ。ルディウス王子。」
「ありがとうございます。ダスクウェル公爵。」
祝いの言葉を贈るダスクウェル公爵に少し照れたような顔をするルディウス。薄く頬を染めるその姿は可憐な少女のようにしか見えない。
「新たなる出会いに感謝を。貴殿の門出に幸多からんことを願います。お初にお目にかかります。私はモルゴ=コーラルと申します。以後お見知りおきを。噂にたがわぬご立派な姿に驚きました。」
コーラル侯爵を初めとして初対面の挨拶を交わしつつルディウスを称賛する。見目の美しさから努力のうかがえる動きまで、ダスクウェル公爵からぐるりと一回りするまでその調子で褒められるので、ルディウスははにかみながら抑えきれない喜びと気恥ずかしさで頬を染める。
カトリーナのあいさつが終わり、同じ年頃の子供のあいさつに移り、メルネアから回って最後にエルーナの番が回ってきた。エルーナは他の人と同じように笑みを深くして祝いの言葉を述べた。
「新たなる出会いに感謝を。貴殿の門出に幸多からんことを願います。お初にお目にかかります。私はエルーナ=ベッセルと申します。以後お見知りおきを。本日は5歳のお誕生日おめでとうございます。」
無難なあいさつを終えると、ルディウス王子は他の人への対応とは違って興味深そうにエルーナを見つめた後、穏やかな笑みを見せた。
「以前からエルーナ様のお話は伺っておりました。こうして本日お会いすることができてとてもうれしく思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」
話はメルネアから聞いていたのだろう。その証拠にメルネアが少しばかり恥ずかしそうな顔をした。
「先ほどまではどのようなお話をされていたのですか?」
全員のあいさつが終わるとルディウスはダスクウェル公爵に話の続きを促した。
「先ほどまではエルーナ様がご病気から復帰されたお話をしておりました。」
「かなり悪くしたと聞いています。もうお体に障りはないのでしょうか?」
心配そうにエルーナをうかがうルディウスに、エルーナはしっかりとうなずいて見せた。
「今はもう大事ありません。このように社交の場に出ることも許されておりますので、ルディウス王子が心配されることはありません。」
「エルーナは体が弱いので病気にかかりやすいのですが、最近は調子の良い日が多く、むしろ前よりも健康になっているのかもしれません。」
エドワルドの言葉もあって、ルディウスは安堵の表情を取る。優秀なだけではなく優しい一面もあるようだった。
「それはそうと、ルディウス王子は既に魔法に関しての勉強を始めていると聞きましたが。」
「まだ書物に書かれたことを読み進めているだけで、実践しているわけではありません。ですが、今後のためにも早めに勉強しておいたほうがいいと・・・」
話がエルーナの病気の話からルディウスの教育の進度についてに変わり、しばらく話し終えた後でルディウスは席を立ち、次のテーブルへと向かっていった。




