Ver2.16
あけましておめでとうございます
今年も宜しゅうお願いします
そこは洞窟でなければメルヘンの世界・・・と言うような光景だった。
「ただ・・・なんて言うかな~・・・」
白いうす手のローブ姿の少女は、昼にあったキャロぐらい10代前半のように見える。
はかなげな印象のあるうすい表情に、背中まで伸ばして切りそろえた黒髪が映えている。
ソノ周り、30~40cmほどの、チョロチョロしている子犬のヌイグルミ・・・に見えるナマモノがやたら可愛く走り回ってる。
そこまではいい・・・しかし・・・
「なんでこいつらはパンツをはいてるんだ?」
全ての子犬が半ズボン・・・というかトランクスっぽいパンツを履いていた。
その、パンツからは各種の特徴ある尻尾がチョロっと覗いている。
パンツマンな子犬・・・とりあえず候補としてはパンツワンかワ〇パンマン・・・ いやいや・・・ワンパ〇マンだとワを伏せたら、愛と勇気だけを友とした孤独なアンパンヒーローみたいだ。
とりあえず鑑定で『コボルナ』というらしい。
ヒュームのように、先祖がえりした呪いの無いコボルトね・・・
そのコボルナは警戒してるのか、こちらに視線を向け歯をむいて威嚇するように唸る。 ・・・が、小型犬特有の身体がプルプル震えている。
怖いというより・・・哀れというか・・・視線を合わせると逸らすという負け犬根性?
偶に群れの後ろの何人・・・匹? が、ボソボソとゴブリン語で話をしている。 どうやら警戒しているようだ・・・
「ふむ・・・」
ソノ光景を見ながら、腕を組み顎髭を撫でる。
「つまり、あの群れを全滅させればいいと?」
ソナタに向かってゴブリン語で呟き、『ニヤリ』と犬歯を見せる獰猛な笑みを浮かべてみる。
『キャイン!?』
少女を守るように前に居たパンツワン達が、一斉にその後ろに隠れようとワラワラと走り回る。 ・・・護衛はどうした?
「鬼ですか・・・政さん・・・」
「冗談だ」
ジト目で言ってくるソナタに共通語で即答する。
「冗談はさておき・・・あの嬢ちゃんが『白い神』か?」
「ええ、そうです。 ・・・と、言ってもその眷族なんですけどね~。 シロちゃん~連れてきましたよ~」
ソナタがそう言いながら群れに近づくと、左右に割れ少女までの道が開く。
何気に統率がとれているな・・・プルプルしてるが。
「・・・早いですね・・・ソナタ殿。 あとシロちゃんは止めてください」
鈴を転がすような声ってのはこういうのだろう。
静かに耳に心地よい・・・しかししっかりと通る声。
「こんばんは・・・といったところか? 始めまして政十郎という。 あんたは・・・シロちゃんでいいのか?」
「ようこそいらっしゃいました政十郎殿。 私は『シロガネ』と申します。 くれぐれも・・・シロちゃんではありませんから」
厳かに言葉を紡ぐシロガネだがコボルナとお揃いで握った拳がプルプルしている。
お揃いだが意味合いは全く逆の羞恥か怒りだろう・・・ソナタの被害者がまた一人・・・
シロガネ・・・なるほど、まあ安直にそれでシロちゃんね・・・
何と言うか・・・一種独特な雰囲気を持つ神秘的な少女なのだが、ソナタのエアブレイクでそんな真面目な場面はもろくも崩れ去っている。
「すまんね・・・こいつはそこんとこの感性がずれてるから・・・諦めてくれ」
「はあ・・・諦めるんですね・・・」
ため息とも肯定ともとれる気の抜けた返事だった・・・気持ちはわかるが・・・
「まあ、オレはこいつと旧知でね。 偶然・・・ホント~~~にっ! やな偶然だがそこで出会っちまってな」
「心中お察しします!」
オレの苦笑に激しく同意するシロガネであった。
「二人とも~何気に酷くありません~?」
『ピコン!』
『『白き神の試練』クリア条件を達しました。 報酬を受け取りますか?』
神様・・・って言うか、目的の人物にあったからだろうクエストが終った。
実質1時間も経ってねえのを考えるに、壁のぼりに関したら超人的だわな・・・
最後殆ど四つ足で走ってたようなもんだし? 裸足ならもっと早かったかも。
何にせよクリアっと。
『チェーンクエスト『白虎の依頼』を受けますか?』
白虎?
多少気になるが・・・話をしてからだな。
「ああ~・・とりあえず『白い神』さんってのはシロガネさんのことでいいのかな?」
オレの質問にシロガネは少し困った様子を見せる。
「一部のものにはそうでしょうが・・・私自信は神ではなく白虎の眷属・・・巫女みたいなものです」
ゲームじゃ結構メジャーな設定がきたな・・・白虎といえば五行説や風水とかでも有名だが、主に西を司るといわれる霊獣の類で四神とも言われる。
偶に謎解きの題材になったり、まんま敵の中ボス的なものだったり・・・中二病的な技の名前につけられたりする。
「眷属・・・っていうと、他に神様がどっかにいるのか?」
「いる・・・と言えばいるのですが・・・あなたは神にあってどうしようというのです?」
「ん~簡単に言えば頼まれたんで来たんだが・・・ヒュームゴブリンのガ族の守護神になってくれ・・・ていうか、従うから加護をくれって伝えに来た」
オレの言葉に驚いたのかシロガネは眼を丸くしている。 そんなに変なこといったか?
少し間をおいて落ち着いた所で、探るような目線を投げかけ言葉を選ぶように聞いてきた。
「あなたは人間ですよね?」
「ああ、そうだ。 別に木の股から生まれたとか桃から出てきたってもんじゃないな」
「神の眷属、白虎の代理として聞いています。 茶化さないでください」
至極真面目に諌められる。 ふむ神様の眷属ってぐらいだから、外見とは歳が違うのかもな静かな迫力を見せる。
「すまなかった。 真剣に答えよう」
「お願いします。 人間ならば何故ゴブリンの言葉を伝えにきたのです?」
心底不思議そうに聞いてくる。 まあ、フツウは敵対してるしなあ・・・気持ちも分からんでもない。
「たまたまゴブリンに気の合うやつが居た。 そいつが弟子にしてくれといって了承した。 ソノ弟子に頼まれたから来た。 ただそれだけさ。」
またまた目を見開くシロガネ・・・そういう表情は外見の歳相応に見えて可愛らしいんだがな。
「あなたは人間なら光の陣営ではないのですか? 闇の陣営のモノに組すれば光に背くとは思わないのですか?」
シロガネの問いかけはさっきと違い、縋るような問いかけだった。
「生憎とオレはまだ信仰する神さんはいないんでね。 それに人は清濁合わせて人だと思ってる。 光と影、白と黒とはっきり分けられるモンでもなかろ?」
ワザと皮肉げな意地の悪い表情で言う。
「大体自分の周りの世界を敵と見方の二つだけに分類するなんぞ、血液型占いで一生を決めるより愚かなことさ・・・あ、言っとくがだからと言って占いを全否定するわけじゃねえぞ」
しまった・・・また癖でおどけちまったか・・・まあ、これがオレのフツウだししゃあないってな。
「フフ・・・あなたは不真面目な様で芯が通った考え方をしているのですね。 そのおどけた話し方も、相手を思ってのことだと分かれば好感が持てます」
軟らかく笑うシロガネは緊張も取れて、先ほどまでの拒絶のようなものが無くなっていた。
「そういってもらえれば気が楽だ。 お前さんのような別嬪さんに言われりゃ多少照れるがな?」
心なしかシロガネの顔に赤みが差したような?
「んん! ・・・と、とりあえずそちらの話は分かりました。 しかし残念ながら・・・すぐにそれを叶えることはできません」
「理由を聞いても?」
コクリと頷き、シロガネは語り出す。
昔の神の戦いで四神の白虎と玄武は獣の神として闇についた。
特に光だから正義、闇だから悪って単純なもんじゃなく。 たまたま一番上の神が光と闇を司っていたかららしい。
そんな中で神の一柱である蛇神が倒れ封印されたが、その身体から溢れる呪毒は凄まじく両陣営の神も恐れた。
そこで封印の結界の構築に、両陣営から四神が選ばれ呪毒が漏れぬ様に結界を張った。
それが今まで続いているため白虎の神としての力が行使できないらしい。
しかも最近その封印が弱まってきてるとのこと。
「そこであなたにお願いしたい」
『チェーンクエスト『封印の探索』を受けますか?』
なるほど・・・ここでクエストか・・・内容は四神の封印場所の探索ね・・・やりがいがありそうだ。
「分かった乗りかかった船だ・・・その仕事請けよう」
『はい』を選択。
「ありがとうございます」
シロガネは心から喜んでいるようだ。
「私はここから動けませんが、あなたの成功を願い祝福を授けましょう」
シロガネが祝詞のようなものを唱えると、オレの手の周りを色んな光る字が回りだす。
ガ族の集落の転移の印のようなものか?
それが手の甲に集まり曼荼羅のように整列すると、一瞬熱を持ち甲に写った。
『ピロン!』
『『白虎の加護』を受けました』
どうやら『白虎の加護』はスキルのようだが、既にMST状態でLVが上がらない類のスイッチのようだ。
「ありがとうよ」
「その印が封印の地にあなたを導くでしょう・・・ 全ての封印に赴く途中、必ず白虎に行き着くはず。 その時こそあなたの願いが届くでしょう」
「分かった。 まあ・・・気長に待っててくれや」
「御武運を・・・」
シロガネの祈りの言葉を聞き洞窟の出口に向かう。
今回のスキル
R『白虎の加護MST』SW
白虎の巫女がくれた加護 勇猛の祝福
攻撃力 +10%
移動速度 +20%
SP +5%
恐怖耐性 +5%
取得条件 巫女の祝福を受けると取得 白虎に不利益な行動をすれば効果を失う
お待たせした方には本当にお待たせしました
仕事も年末年始の色々も何とか終わりましたので早速お送りします




