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Ver1.253 (強制命令! 闇に紛れた魂の咆哮)

 展望レストランの各所に設けられたモニターにも上位者のプロモーションは映っていた。


 その店内で俺達は5人テーブルに陣取りモニターを見ながら食事をしていた。


「政十郎さんだ・・・やっぱり・・・」


「順位発表を聞いたときは驚いたが・・・あの人ならやりかねねえってとこか?」


「そうだね~街での身のこなしとかNPCノンプレイヤーキャラクターとの交渉は上手くやってたけど・・・1位ってことは戦闘も上級者ってことなのかな?」


「流石、我らが師匠ってとこかしら」


「なりゆきで・・・すっごく軽い弟子入りだったけどね~♪」


 俺達は大学の何でもサークルメンバーで今回のテストに5人PTパーティで応募した。 


 何でも・・・と言うのはメンバーの誰かが興味を持ったことに皆がじゃあ『面白そうだからやってみよう』ってノリで挑戦してみる好奇心の塊みたいな連中が集まった集団と言っても過言では無い。


 何にしても当たればラッキー程度の考えで・・・しかし全員が当たれば良いな、と願ってたのは応募者のほぼ全員が思ってたことだろう。


 結果として奇跡的に当選して晴れてテストに参加した。 最初は皆で駄弁る良い場所を探して回っていた・・・のだけど途中に壁に向かって突進してる面白そうなお爺さんを見つけた。 NPCのイベントかと思ったけどプレイヤーだったその人が『政十郎』さんだった。


 彼は気さくな人で、賞金がかかってるゲームの中では自分のスキル配置や取得方はアドバンテージになるというのに、惜しみも無く俺達に教え取り方さえも己で簡単に取れるように考えて俺達に指導してくれた。


「そういえばさ、その政さんから個人チャットが狩り中に来てたんだけど・・・」


「なんでお前だけに?」


「ん~『ステップ』についての話でね。 どうも政さんは僕が『ダッシュ』取って『ステップ』売るっていうぼやきを憶えてたみたいでね」


「言ってたっけ?」


「そう言えば師匠にあって駄弁ってたときぼやいてた?」


「うん、僕も言うほど気にしては無かったけどね。 まあ、話を戻すと・・・売るのは待てって言うんだ。 結論から言うと『ダッシュ』『ステップ』は用法は被るけど効果は加算されるかもって」


「へえ~実際どうなの?」


「『ダッシュ』はLVが幾つか上がってたからそのまま。 『ステップ』は1LVのままだったけどつけるとつけないではステップの距離と無敵時間が変わった」


「ふ~ん・・・あ、始まるぞ!」


「おっしょさんのターン♪」


 画面には何故か可愛らしい小さな女の子が泣きながら現れる。


 モニターを見ていた何人かがフラフラ歩く膝に怪我をした女の子の出現に疑問符を浮かべてることだろう。


 その子がアップになった路上の石につまずき倒れそうになるところがスローになった。 あわや地面と接触・・・の瞬間画面が急に黒い影に覆われた。


 影から少しカメラが離れると誰かの背中だと判明する。 そのままその人物を中心に捕らえ視点は移動すると、驚いた女の子がその手に抱かれ少し困ったように笑う政さんの顔が映し出された。


 画面は変わり政さんがスクロールを使って女の子の怪我を治すと驚いた女の子は花が咲いたような笑顔に変わる。 それを見た政さんも彫りの深い慈愛に満ちた神父のような笑みを浮かべる。


 また場面は変わり商店通り。 女の子が政さんの右肩に乗りキョロキョロしていると何かを見つけたように騒ぎ出す。 その子が見つけたものを政さんも確認し降ろしてやると駆け出していく。 その姿を見てる政さんの様子が慌ててるように見えるのは、おそらくその子がまた躓くのを心配してのことだろう。

 すぐにそれもほころんだ。 画面には再会したであろう親子が映し出され、周りの商店のNPCもそれを見て多種多様に微笑んでいる。 その姿に俺達は驚いた。 主要キャラだけでなくNPC全部に感情がある?


 場面はドンドン変わっていく忙しないものだがよく作られていると思う。


 ギルドでの依頼


「おお~こりゃ凄い! あそこまでNPCが押しかけてりゃギルドも大変だな」


「直接受けてないけどあのクエストの出だしはこうだったのね・・・」


 俺達PTと合流してプレイヤーを呼び込む


「あ、私出たよね? 見切れてるけど・・・」


「まあまあ、今回の主役は師匠なんだから」


「むう・・・」


 大勢を連れ街を歩きギルドに向かう姿


「改めて見ると武装した20人ほどの集団って怖いわな・・・」


「どこの討ち入り?・・・って?」


「ははは・・・」


 交渉の場・・・挑戦的に睨みながらも不敵な笑みを浮かべる政さんに相手は根負けしたように笑い出し、政さんもそれに釣られるように本当の笑みを浮かべる。


 交渉相手と腕を交差させて言葉を交わしたところで後ろの皆が歓声を上げた。

 

 そのシーンから交渉は大成功したとイヤでも分かるだろう。


「俺らは後ろだったから見えなかったがあの人こんな迫力ある顔もできたんだな・・・」


「あそこまで感情を表わせるってことは造形はあまり弄ってないんじゃないのかな?」


「渋いねえ・・・僕もああいう風に歳をとりたいな~」


「「「「・・・・・・」」」」


「何で皆無言!? 逆にからかわれるよりくるんだけど!」


「もちつけ! 次はフィールドに出るようだよ~♪」


 場面が変わりさっき出た画面・・・『白いヤツ』ってキャラと別れて見送ってるところから始まる。


 時間帯は夜を強調するように丸い月が映し出される。 ソコから下に視点移動すると月を見上げて街道にたたずむ政さんの姿が映し出された瞬間・・・走り出した!


 速い!


 視点は政さんの目に変わり景色が飛ぶように流れていく。 一体どれくらいの速度が出ているのか・・・偶に視界がぶれると地面が上に見える。 また視点変更すると高くまでジャンプした政さんが何回転かして着地。 速度を緩めることなく疾走する姿が遠ざかっていく。


 でかい毛玉のようなモンスターとの戦いと勝利。 ドロップの糸みたいなのを摘んで不思議そうにする表情がさっきまでの政さんとのギャップに周りから笑いが漏れる。


 小さな毛玉を助けどうやらテイムしたところらしき場面で会場がざわついてるのに気付く。 さっきの地面を蹴った足技の威力に皆驚いてるのだろう・・・小さくともクレーターを作るほどのスキルってどうやって手に入れたんだ?


 「あの毛玉ほしい~♪」


 「『妖精の楔』でテイムできるんじゃない?」


 「おっきいのはキモイ・・・小っちゃいの」


 「『妖精の楔』さえジャンケンで負けたから買えなかったしな」


 「『桜花』さんジャンケン強すぎ~」


 その後ペットに何かしたのか白い毛玉が空を飛んだりして周りが騒いでたがその後の連携を見て息を呑むようになる。

 無数に集まってくるコウモリや鳥のモンスター・・・それを二刀流の短剣で落としていく中で毛玉の閃光の魔法。 政さんが地に落ちたモノに足で止めを、毛玉が毛を針のように飛ばして1匹1匹確実に減らしていく。

 そこで漸く気付いた・・・あの群れの中で政さんが閃光に無反応だった訳と騒がしい意味を・・・


「目を・・・閉じて戦ってる?」


「ねえ、気付いてる?」


「何?」


「囲まれて移動しながら戦ってるが・・・一度も攻撃を食らってない・・・どころか後ろからの攻撃もカウンターしてる徹底ぶり。 防御なんかしてねえから、かすり傷さえ負ってねえ!」


「回避をしたら通り過ぎる敵に必ず当ててる? 回避=攻撃になってる!」


 どこの剣豪だ!? と、言いたい。


「毛玉に行く攻撃もしっかりフォローしてるから・・・相手のHP低くても余計難易度高いよ・・・」


 そのまま森に入り場面は変わる。


 次に出たのは走る政さんだった・・・その後ろに10匹近くの数のゴブリン。


 偶に出る基本LVは10だったので普通なら12LV適正のゴブリンから逃げてるように見えるが違うんだろうな・・・ほら。


 森の木々の開けた場所に来るとジャンプで5mほど飛び上がりいつの間にか弓を構えて樹上で狙いをつける。


 待機してた毛玉のデバフと閃光の連携で弓を使って次々と倒していく姿は淡々と作業をこなす職人のようだ・・・


 的確にヘッドショットを決めて行く中


「うそだろ・・・あの連射と正確な射撃で・・・スキルを使ってない!? 通常攻撃だけでハズレなしってリアルで弓を使ってるのか?」


 隣の男女のテーブルからそんなボヤキが聞こえたが弓職の人なんだろうか・・・一緒の席の女性がどこかで見たような気がするが・・・


「あ、師匠のアップ・・・何か気付いたようだけど・・・」


 そういう声にモニターに視線を戻す。


「美人だな・・・」


「案外お前の好みだったり?」


「ちゅけべ♪」


「ち、ちが・・・」


 俺の否定の言葉は次のシーンで途切れた。


 さっき出てきてた三尾の巨狼が現れたからだ。 その姿は政さんのいる木の近くで突然消えた。


 いつの間にか長剣の二刀になった政さんは咄嗟に前に飛び出すと狙ったように狼の巨大な腕が木の影からその背中を攻撃。 政さんの背中が裂けるが防具の服のみで済んだ様でHPに変わりが無い。


「初見で良く気付いたな・・・」


「でも一撃で防具破壊って・・・ああ! 師匠の防具・・・初期から変わってないよ!?」


「武器も初期のと訓練所のクエ武器だしな・・・」


「あれを凌ぐとは・・・彼もNTだというのか!?」


 通りすがりのスーツの男が料理の皿を持って通り過ぎざまにぼやいた。


「NTって省略するとニュー○イプかニートか連想するもので世代かオタク度が分かる?」


 そんな取りとめも無い話から戦闘は使う武器が片っ端から壊れていってることで難攻していることを物語っていた。 それでも政さんの表情からは勝負を捨てたようなところは見当たらない。 しかもどこから出したのか政さんの使う武器は光る剣・・・いや鞭に変わっていた。


「ねえ、毛玉ちゃんが居なくない?」


 その言葉に反応するかのように画面の政さんが今までと打って変わって逃げに入った。


 周りからも「12LVであれってそりゃ逃げるだろ・・・」


 そんな嘲笑めいた言葉も聞こえたがあの政さんがあんな不敵な表情かおをしてただ逃げてる理由わけがないと確信していた。


 その途中ゴブリンの群れに突っ込んだりしてその度に増えるモンスターに

「トレインかよ、終ったな」

「おいおい、逃げるのに必死で周り見えてねんじゃね?」

そんな周りの声の中に

「あれはどうやってるのかしら? モンスターを引き剥がすなら攻撃を止めると思うんだけど・・・ずっと後ろに向かって光る武器で攻撃を続けてる・・・態とひっぱってない?」


 隣の席の美人なおねえさんの呟きに確かにと思った。 その時には政さんは開けた場所の中央にモンスターの群れを待ちうける。 そこに攻撃を行う敵のタメを作った後、後ろに跳躍しながらアクロバットで樹上の枝に飛び乗った。 まるでTVにある忍者のような身のこなし。 そのまま更に上にジャンプするとどこから出したのか広場を覆うくらい大きな網を手に持つ。 その口にはスクロールが咥えられ全ての敵が網に捕らえられた。


 ソコから巨狼も暴れ周りのゴブリンを巻き込んでいく中。 網を持った政さんが手で何か形作るとスクロールが発光し魔法炎で燃えて消える。 しかし、その直後網から目に見える電流のエフェクトが発生し中のモンスター達が一斉に動きを止めた。


 そこから政さんは不可思議な行動を取り出した。 どういうわけか網を切り裂いて残ったゴブリンのリーダーらしき者を引きずり出す。


「え・・・なにやってるの!?」


「そんなことしたら攻撃してくるんじゃ・・・」


「・・・ねえ・・・師匠・・・ゴブリンと会話してない?」


「んな、ばかな!?」


 しかし、予想を遥かに裏切ってゴブリンは大人しく政さんに従って網の外で待機してる。


 そうして間もなく政さんはお馴染みの不敵な笑みを浮かべて何かを片手に巨狼に歩み寄っていく。


 魔法の効果が切れた網を食い破って巨狼は政さんに襲い掛かる。 ・・・が、落ち着いて手に持ったモノを軽い調子で狼の口に放りこんだ。


 一瞬の静寂・・・巨狼の哀れな絶叫が響き渡る。


 次に画面が変わると眼前の開けられた巨狼の牙を眼前に今だその笑みを絶やさない政さんはしっかりと巨狼の舌を掴み空いた手で素手攻撃をしたのだろう。 巨狼は『ビクン!』と振るえゆっくりと倒れる。


 そこで誰も終りと思っていた・・・


 画面がまた変わり歩く政さんの背中が離れていく・・・数歩で止まり振り向いた政さんの口にはまたスクロール。


 忍者ムービーのように手の組む形を変えるとスクロールの消滅と共に左手が光り出す・・・何か集中してるのだろうか・・・徐々に左手の光は輝きと言うくらい強くなる。


 輝く左は開いたまま下ろす。 咥えたスクロールはもう一つある。 右の手だけを動かすと次はその手が燃え上がった。 その手さえ数瞬の間に燃え盛るというぐらいの勢いになった。


「おいおい・・・何のアクションムービーだよ・・・」


「いや・・・あの構えは・・・」


「ああ、あれは!」


『天国と地獄!?』


「そんなスキルあるのかよ!?」


「あったらほしいぞ!」


「まて! 次にいくみたい!!」


 魔法のエンチャント同士が反発する両手を力任せに強引に組んだ炎と閃光のマーブルに蒼が混ざる。 駆け出す! 瞬時に地面スレスレを滑るように移動した瞬間、踏み込んだ左足の下にスローモーションでクレーターができていく。 標的は転がっているあの巨狼! その視点から迫る追撃者の姿はこの技を受けるものにとって死神か・・・破壊神に見えるかもしれない。 接触の瞬間にスキル発動らしきオーラのような光が手に流れていった。 組んだ両手が魔光に筒まれながら巨狼にめり込んでいく・・・肘よりも肩近く埋まる姿はその威力の凄まじさを物語っている。 ただそれはまだ途中でしかなかった。

 そこから政さんは何かを両腕で引き抜く動作をする。 違和感・・・スローモーションなのに普通の速さで動いた? そう感じた瞬間時間の流れが戻った。


「「「「「「「なっ!?」」」」」」」


「「「「コアとった!? 天国と地獄キタ~~~♪」」」」


 巨狼の巨体が・・・吹っ飛んだ!!!?


 ゲームとはいえあんなことができることが衝撃だった。


 数本の木をなぎ倒し砂煙を上げて転がる巨狼は見てて哀れである。


 また場面は変わる。


 先ほど「白いヤツ」のプロモにも出てきた赤い目の謎の美女が高い木の天辺に重力や重さを無視して立っている。 NPCならでわの人外な存在・・・そう皆は思っていたはずだ。 ・・・ジャンプ一つで跳んだ政さんが別の木の天辺・・・女と同じ立ち位置に片足で危なげなく立ち、さも余裕のように会話している姿を見るまでは・・・


「どこの仙人だよ、あのじいさん!」

「バグか? LV12であそこまでジャンプできるものなのか!? どんなチートだよ!?」

「ばか! 運営がプロモ作ってる時点でチートなわけないだろう・・・ 逆にやりようによっては低LVでも、スキルによってここまでできるって宣伝になるから発表してるんじゃないのか?」

「そう考えればこのゲームLVだけが強さじゃないって公言するのも頷けるな」


 周りがテーブル関係なく映像に意識を持っていかれ意見が飛び交うようになっていた。


 地面に場面が映りどうやら戦うことになったようだ。


 政さんの視点で女が片手に光の紅い爪を出す。 禍々しい血の色をした魔力刃が手から数cm浮き、女の指のうごきに連動するように動いていた。


 そのまま戦闘に移行すると思ったが何故か爪の無い手の方を見て驚きの表情を見せる。 『キッ!』と政さんを睨んだところで視点が何故か女の視点らしきモノへと変わった。


 ナゼこのタイミングで? そう思った時すぐにそれが起こった。


「あれ!?」

「「「「「「「!?」」」」」」」


 視界の中心に居た政さんが消えた。 いや・・・モニターの端に移動してる・・・カメラワークのミス?


 違う!


 刻々と変わる政さんの立ち位置に視界の主が追いついてないと理解するまで数秒かかった。


「短距離ワープか?」

「魔法に視界内テレポートってあったよな・・・あれか?」

「いや詠唱してないしそれは無い・・・と思うんだけど・・・」

「バックで流れる『ヒュンヒュン』いってる音が気になるんだけど・・・」

「もしかして・・・マンガによく出るあれか!?」

『瞬動!!』

「もしそのスキルだったら使いてえ!!」

「空中での虚空○動とかな!」


 視界が動く度に政さんの姿が移動する間隔が狭くなる。 一気に詰めない分恐怖心を煽っているのだろう・・・この人を敵に回したくない・・・と言うか絶対しないと思う。 しかし・・・初期装備・・・しかも素手の政さんの方が大物ボスに見えるのは如何かと・・・


 歩みが止まり一言二言政さんの口が動き普通に歩きだし・・・迫る政さんの顔がアップになりブラックアウト・・・


 会社のロゴが出てプロモーションが終った。


「うお~~~!! 勝負の行方が気になる!」

「運営さん~続きプリズ!!」

「良いとこで切るな~!」

「じいさん良いとこ撮り・・・」

「いろんな武器使ってたけど・・・結局のところ政十郎って人のクラスって何なんだろう・・・」

「そういえば・・・」

「だれか情報持ってない?」


 騒ぎになるから俺達が弟子だって言うのは黙っておこう・・・皆で目で語り合い同時に頷いた。


~~~~~~~~~~~~~


 時刻は遡り第一回『ブレイクワールド』オープンベータテスト終了直後



「計画の前倒し!?」


「ああ、予定のLVキャップ30開放を三日目から二日目に変更する」


「そりゃLV上限なんぞ設定を少し変えればすぐ変えれるからかまわんから問題は無いが・・・何故なんだ?」


「1日でLV20に行った者が多数出た・・・のは予想の内だったんだが・・・45LV隠しキャンペーンクエストに到達した者が5名・・・」


「そりゃ既定内人数じゃねえか・・・」


「内一人がSSSでクリア」


「ぶっ! 20LVでかよ!? すげえなおい!」


「12・・・」


「あん?」


「実際LV12でクリアボスキャラ撃破ではなく生け捕り・・・最後は友好的に逃がした」


「はあ!? 設定筋力60、敏捷40はあるボスだろう・・・生け捕りって力では無理、動きは速くて捕らえられないはず・・・」


「その時の記録動画だ」



 視聴中・・・・



「外から見たら普通に移動をしているようにしか見えないが・・・なんでカークリタイプはこんなに動揺してるんだ?」


「まあ、見てろ」


「ほう、ステップキャンセルとステップ時無敵時間を使ってのすり抜けね・・・かく乱にはもってこいだが・・・こいつの敵感知には・・・効いてる!? 何でだ!? しかも最後は移動不可能な空中での捕縛・・・筋力でこんなロープなんか簡単に千切れる・・・切れねえな・・・」


「これが戦闘に入ってからのこのプレイヤーの行動ログだ・・・」


「へえ・・・やけに大量にあるじゃねえか・・・まて、実質10分も戦闘なかったのにこの量はハンパじゃないだろ?」


「見れば分かる・・・行動一つに行なってる情報処理の多さ・・・か?」


「情報処理・・・ねえ・・・こりゃ確かに・・・ スイッチのON、OFFを頻繁に切り替えてるな。 後・・・『視覚強化』『聴覚強化』『嗅覚強化』の使用率ハンパじゃねえ・・・それに加えて『重量移動』『浮身』の同時使用の『念動』の操作も一緒にやってるな微妙なところで『潜伏』をなんでこんなに短時間で乱発する? 1回使ったらすぐに使いなおすスキルじゃないだろう・・・あ・・・これのカークリタイプからの視界データは?」


「今だした・・・これだ横のデータはその時の行動ログデータだ」


「なるほど・・・な、あのスキルの使い方にリアルに作りすぎたキャラクターの身体データが仇になったってとこか・・・瞬きを利用したリアル『瞬動』にまさか骨格の作りで力が出にくい固め方ができるとは・・・案外人間が技術さえありゃ人外にも渡り合えるって証明か・・・このプレイヤー・・・裏の人間か?」


「そういえば・・・『十塚』さんを憶えてるか?」


「あ? ああ前に子会社から出向してきた武術にやたら含蓄ある人だろ? 人当たりも良かったし仕事も早くて助かったな。 一部の攻撃スキルのキャラモーションもあの人のおかげで早かったしな・・・あの体型ですげえ身体が柔らかくてな・・・宴会芸で立ったまま片足の踵を背中から回して頭につけてたな・・・って関係ないか」


「そのキャラがその人だ」


「ええ!? ・・・たしかに面影がある・・・な、しかしゲーム話に華が咲いたが・・・VRバーチャルリアリティでもすげえんだな・・・対戦格闘もハンパ無かったけど・・・でも、あのまっちゃんが裏ではないわな」


「なんにしても次の段階を早くしないとシナリオクエが無いのは困るって上の意志だ」


「じゃあ・・・『橋の鬼』『妖精の輪舞』『街道の盗賊』あたりはONにしとくか?」


「妥当だな」


「うお~~~またバグか~~~!!!!!?」

「リーダー落ち着いて!」


「なんか・・・鬼気迫ってるようだが・・・?」

「気にすんな・・・何時ものことだ」

「そうか・・・いつも・・・」


「しかしまっちゃんもこのゲーム楽しんでるみたいで良かったな~すっげえ楽しみにしてて作ってる側から見たら嬉しい限りだったよ・・・お、これがまっちゃんのキャラデータね・・・ぶ!?」


「どうした?」


「幸運値99ってカンストしてるじゃねえか!? 何でこうなった?」


「・・・彼のリアルラックだな・・・それ以外に無い」


「よりによって・・・また何で幸運値なんて面倒なモンを・・・50ぐらいでも面倒なのに・・・まっちゃん・・・大丈夫か?」


「高ければ良いモノ・・・では無かったのか?」


「他のアビリティならそうだったよ・・・幸運も生産関係や盗賊のスキル・・・解除系には役に立つ・・・強化もなんだが・・・ GGGS(スリーGシステム)が厄介なんだわ」


「なんか勇者が所属してる組織みたいな名前だな・・・」


「俺もそう思うよコンチキショー・・・上(日野 邦久)のつけたネーミングだからかえれねーんだよ・・・話を戻すとな・・・正式名称GOD GLANCE GAME SYSTEM 縮めてGGGS 神様が遊戯を見てるってことらしいんだが元の意味合いはゴッドゲーム・・・神の視点ゲームってヤツだな」


「街運営や大地創造するゲームの総称か?」


「そんなもんだと思ってくれ。 で、これが『ブレイクワールド』の売りでもあるクエスト無限増加とも言える単発クエスト数の多さの元でもある」


「ああ、最初はゲームデザインここでクエストを作ってると思ってたが違うんだな」


「大まかな流れやキャンペーンクエスト、メインのストーリークエストはここだけどな。 主に作ってるのはAI(人工知能)だ」


「AI・・・ここのは優秀だと聞いたが・・・ソコまでなのか?」


「現在お勉強中ってとこか・・・それは置いといて・・・ゲーム内では神様もAIなんだけどな。 現在名前も無い神が沢山放たれてる」


「はあ・・・?」


「神の役割は己の司るモノに沿った者に試練という名のクエストを与えること」


「もしかしてそれがクエストをそのつど作ってるのか?」


「そういうことだ。 メインで司る対象が多いほどその権限が大きい・・・名前が無いと言ったが『司法』『戦』『恵み』とか抽象的なファイル名みたいなものはついてる。 正式稼動の時には名前が付くだろうがな。 何にせよその神AIは今だ名前・・・司るモノが無いものも漂っていてだ・・・人に試練を与えて初めてそれが決まる。 自我みたいなモノが生まれるのかな」


「大したモノだと思うが幸運との関連性が見えないんだが・・・」


「神が試練を与えるキャラの選別方法の一つが司るモノに関連する、もしくは近しい人物なんだが・・・もう一つ分かりやすいのがアビリティの高さなんだ」


「あ~・・・それなら幸運99の彼なら確かに目に留まるか」


「それだけじゃないんだよ・・・」


「は?」


「幸運ってのは神からしたら光に見えるらしいんだが・・・」


「光ねえ・・・」


「幸運の高さ=光量、明度なんだ・・・つまり幸運99って言うのは闇夜に光る誘蛾灯みたいに神を寄せ付けるんだ」


「仮にも神を蛾扱いか・・・」


「アゲアシとんな・・・何にしてもまっちゃんのゲーム内における人生は波乱万丈になるだろうよ・・・下手な英雄以上にはな」


「その片鱗はすでに出てたわけか・・・」


「その代わり乗り切った時の見返りはでかいけどな・・・案外今回のキャンペーンシナリオに名も無き神達が誘導したって言っても俺は驚かないがね」


「なるほど・・・」


「ログを確認するに初日で司るモノを得たAI神が何件か確認されてるので『暴走』『交渉』『影』『羽』『音楽』『狩り』『鍛冶』『ミスリル』『青銅』『鉄』『恐れ』『薬・毒』『軽業』『剣』『細工』『デザイン』『犬』『狼』・・・『幼女』『萌エ』『覗き』?・・・初回クエスト『スカートの中身』なんだこりゃ!? ・・・何にしてもこんなけ初日でクエストクリエイターAIができたわけだ。 その中の何柱がまっちゃんのキャラに魅了されたか・・・誘引と言ったほうが良いか?」


「なんか凄い犯罪臭のする神も居たようだが・・・まあ、言いたい事は分かった。 ・・・何にしても彼はこれからも大変だってことはね・・・」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


さらに第一回『ブレイクワールド』オープンベータテスト稼動後




「なにい~『変異のシャッテンウォルフ』のクエストがクリアされただと~~~!!!!」


「リーダーうるさい」


「すまん・・・いや、なんで初日に倒されちゃうよ? 予定じゃあ少なくとも4日以降まではありえんって言ってたジャン?」


「予定は未定で決定ではないです」


「いや、そうなんだが・・・何にしても変異巨狼セットはまだできてないんだぞ・・・いや、デザインはできてはいるが肝心の特殊スキルのプログラムがあと少しかかる・・・」


「いっそのことアバター装備ってことで衣装だけにしといたらどうです?」


「んなことできるか! 上にはこれで行くって認可貰ってんだ、言った手前が無理でしたって言えるか!?」


「言ったのはリーダー、いらない仕事を増やしたのもリーダー」


「ぐ・・・お前、仮にも俺の部下だろうに言いたい放題だな・・・」


「遠慮してたら反省しないダメ人間と理解かってるので」


「言うようになったな・・・昔の可愛かったお前は何処に行ったんだ・・・」


「私は今もカワイイですよ」


「何赤くなりながら照れて言ってんだよ・・・とにかく!」


「はあ・・・」


「宝箱に入れる予定だった『変異巨狼セット』は急いでプログラムの完成を目指す!」


「はあ・・・」


「仕方ねえから後でお詫びメールと一緒に送ってくれ!!」


「今日も残業ですか・・・」


「悪りい・・・今度飯でも奢るから」


「カップめん以外でお願いします」


「任せとけ!」


「少なくとも展望レストランの正式開店時のフルコースで」


「最低2万以上じゃねえか!?」


「チッチッチ・・・お一人様19800円、二人で39600円・・・最高ディナーコースなら更にお値段二倍の79200円・・・あ、社員割引の100円割引券いります?」


「おいおい・・・」


「言った手前を覆します?」


「ぐう・・・・わ~ったよ奢ります! 奢れば良いんだろう!? コンチクショ~~~~!!!!」


 その魂の叫びは日の沈み始めた黄昏の闇に消えていった・・・



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「しかし・・・奇縁よのう・・・」


「なんだよ藪から棒に」


 月の光のさす部屋でくにさんと杯を傾けていると感慨深げに言葉をもらした。


「いや、娘が惚れた男に孫娘まで惚れるとはとな・・・」


「あ~それはなんて~か・・・成り行きか・・・」


 どう言ったら良いか分からず頭をボリボリと掻く。


「別に攻めとりゃせん。 あの子はもうこの世には居らんが・・・血なのかのう・・・」


 くにさんは遠い目をしながら月を見て杯の中身を飲み干した。


「ほらよ・・・くにさん」


 徳利から次を注いでやる。


「おおすまんな」


「血とか言ったが・・・温海も・・・『巫女』なのか?」


「・・・そうじゃ」


「そうか・・・」


 聞いた答えを流すように杯を煽る。


「ホレ、返杯じゃ・・・安心せい」


「おっとっと・・・あん?」


「温海の代は影の代・・・巫女としての義務は起こらんよ」


「そうか・・・」


 内心ほっとする。


「ちょっとまて・・・温海が『大陽の巫女』なら千陰はやっぱり・・・」


「『月の巫女』じゃな」


 ニヤリと笑うくにさんは人が悪い。


「じゃあ・・・星は・・・まさか華乃は星原の傍系じゃねえよな?」


「ほっほっほっ・・・あの子は全く別ものじゃよ・・・逆に言えばもっと性質たちが悪い」


 なんかもったいぶった言い方だがくにさんがたちが悪いって・・・


「『王裂き』『天我裂き』『十拳』の名前を一つでも聞いたら戦は終るといわれてたのは知っとるか?」


「・・・知らん・・・『日野』『月森』『星原』の三巫女そろえりゃ全国取れるって言うのは昔くにさんに聞いたが・・・また裏の話かい?」


 ニヤニヤしながら話すくにさんはそれこそ性質が悪い・・・サラッととんでもない事を洩らすからだ。 本人は口が滑ったとか言い張るが絶対・・・態とだ。


「まあ、昔話を聞くと思うて聞いとけ・・・知ってて徳にはならんが知らずば損をするかも知れんぞ」


 幾多の戦場いくさばにおいて必ず大将首を上げたと謂われる『王裂き』は仁の家系。 民に害なすと思わばその思想の下王将を狩りとった暗殺の家系。  アサシン教団の日本版か? 教義が民の為ってのに変わってるが。


 唯一、一族の長が認めた主について主命なら天意さえ切裂いたという『天我裂き』は融通が効かん者達で『王裂き』とは度々ぶつかっていたらしい・・・どっちも残ってるって事は力は拮抗してるって事か?


 神代の時代からあるとされる『十拳』は『トツカノツルギ』に見られるように時の有力者に仕えた戦闘集団だった。 十名の上位者が戦場に立つを許され無敗。 オロチ族との大戦で十の一部が欠けてから表舞台から消えたが今なお新しい技術を貪欲に取り込み続けている。

 

「その者らは時代の流れの中『桜咲』『尼崎』『十塚』に変わったといえば・・・察しはつこう?」


 少し真面目になってくにさんが問うてきた。


「日本裏伝記シリーズ大集合ってか?」


 それに対してオレはイタズラ心を刺激され言い返す。


「はて、大集合?」


 オレの言葉に違和感を感じたろうくにさんが不思議そうに見返してくる。


「オレの苗字は知ってるだろ? オレ自体は全く関係ないが『十塚』の本家は行ったことがある・・・家は名前だけの傍系だがな・・・あと、本家の当主に『尼崎』さんが就いてたぞ・・・執事としてな。 あの人できるとは思ったが・・・伝説級とは思わなかった・・・」


「な!? お主のことは予想もついとったが・・・そうか・・・天と拳が繋いだか・・・」


 ああ、やっぱりビックリしてるな、オレだって最初はビックリしたよ? ただ金持ちが親戚にいるってしか思ってなかったが・・・神代の時代から続いてるとはおもわなんだ。


「まあ、そんなとこだから桜咲がどうこうって話なら気にせんよ・・・付き合っていくのは家じゃなく華乃っていう一人なんだからな。 まあ、先は分からんから覚悟決めなきゃならん時は気構えができると思えばくにさんの話はタメになったよ。・・・昔のガキの頃と違って無茶もできねえし」


「ふ・・・はっはっはっ・・・そうかそうか・・・一本取られたわ。 血か・・・案外ワシもそれでお主を気にいっとるのかもな。 親、娘、孫と三代から惚れられるとはお主も罪な男じゃの」


 酒も入ってか陽気に笑うくにさんは心底楽しそうだった。


「昔から変なヤツには好かれるな・・・困ったもんだ・・・」


「それはワシも含めてかい?」


 ジロリと睨まれるが目が笑っている。


「想像にお任せする」


 手酌もなんなので徳利から直接飲み干した。


 夜の茶室にくにさんの笑い声が時折あがる。


 それは夜遅くまで続いた・・・


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