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10 鍛錬


 ユークス達、護衛候補は騎士団総団長の預かりとなり、日々見習い騎士と同じ生活をさせられていた。

「俺たちのような優秀な騎士が、見習いと同じことをさせられるとは・・・」

「日々の鍛錬もそうだ、我々は立派な護衛として殿下のお側にいたのに、筋肉鍛錬からやり直しとは・・」

そう言って、お互い愚痴をこぼすのだった。

騎士総団長からすれば、騎士として未熟な彼らがコネとごり押しで護衛となった経緯が許せなく、それでも本当に騎士としての矜持があるのなら、と見守っていたのだ。


だが、彼らは朝5時からの起床点呼にも遅れてきた。

 5時の点呼の際は、自分の寝台をきちんと整理整頓し、身だしなみを整えてから参加しなければならないのだが、彼らはそのすべてが全くできていない。

起床点呼時にはあくびをしながら、だらしない恰好で現れ、中には顔すら洗っていない者もいる始末だ。

点呼後の鍛錬も何かと言い訳をしながらだらだらと過ごす。


その後食事の時間も、不平不満を漏らし、見習の仕事である片付けもしない。

午前中の座学では居眠りをし、午後からの剣の整備、鍛錬も真面目にやろうとしなかった。


総団長預かりとはいえ、多忙な彼自らが直々に来ることができないため、直属の部下を送っていたのだが、ユークス達より身分が低いため、全く言うことを聞かなかった。


「そうか」

その報告を聞いた総団長は、腕を組んだまま一言つぶやいた。

そのまま、しばらくして、

「明日、俺が行こう。直属部隊も一緒に連れていく」

「了解です」


 次の日、5時の点呼に現れたユークス達は、総団長の姿を見つけ、驚いていた。

「あれって総団長?」「まさか?」「後ろの黒ずくめは?」「まさか、総団長直属部隊?」

「直々にお出ましとは、俺たちの実力を認めたとか?」

「総団長の部隊に引き抜かれるかもしれんぞ?」「流石だな、俺たち」


総団長が来たのは自分たちが認められたからだと、うぬぼれるユークス達。

その会話を聞いていた総団長を始めとした面々は表情を無くした。


「お前たち、早く並べ、ダラダラするな!」

「はいはい、たかが男爵家出身のくせに、毎朝うるさいな」

「毎朝並んで、俺たちの点呼するだけだろう?早く済ませろよ」

いつものように文句を言いながら、ダラダラと並ぶ。


「毎朝これか?」

「はい、何度も注意はしているのですが、私の力不足です」

「いや、お前に苦労を掛けたな、ここからは俺がやろう」


そう言って、総団長がユークス達の前に立った。

当然、自分たちの事を勧誘するのだろうと、にやにやしながら顔をあげた、その瞬間、目の前に火花が散った。

気が付くと全員が地面に倒れていた。

「「「「「???」」」」」

何が起こったのか全く分からない状況の中、誰かに無理やり立たされた。

そのまま、また、吹っ飛ばされた。

何度かそれが繰り返された。


倒れたまま動けなくなったユークス達。

総団長の合図で水がかけられた。

「うわっ!」「何をするんだ」


「貴様たちのような愚鈍な輩を我が配下に置くわけがないだろう」

「ひどいっ」「愚鈍とは失礼な!」「いきなり殴るなどと卑怯だ」「そうだ、堂々と剣で勝負しろ」


総団長を相手にしながら、口々に好き勝手を言うユークス達。

総団長はにやりと笑うと、一人の少年を呼んだ。


「こいつはガイ、平民出身だがかなり強い。現在の俺の直属部隊の見習いだ。

年も近いだろうし、勝負してみたらどうだ。その実力とやらを見せてくれ」

ガイと呼ばれた少年は、まだあどけない顔をしていた。

見たところそんなにガタイがいいわけでもない。

コテンパンにして、実力を見せつけてやろうと、彼らは思った。


「総団長、僕、あまり自信がないのですが・・・」

ガイがそうつぶやいたのが聞こえて、

「ははは、聞いたか?自信がないってよ」

「当たり前だ、たかが平民が、われら高位貴族と対等に渡り合えるわけないだろう」

「ガイとやら、自信がないなら、ハンデをつけてやってもいいぞ?」

口々にガイを挑発した。


ガイは、はーーっとため息をつくと、「面倒なので全員一度に相手いたします」と言った。

「なっ!!」「平民風情が!」「死んでもわれらに責任はないぞ!」「瞬殺してやる」

「なめた真似を・・・!」

ユークスを始めとした5人全員が剣を持ち、いきなりガイに打ちかかって行った。

勝負はあっけなく終わり、ガイが一人だけ立っていた。


「総団長、この人たち、本当に王子の護衛だったんですか?弱すぎですよ??」

「コネだけで実力もない奴らだからな。鍛錬もさぼるような奴らだ、ガイに勝てるわけがない」

「なんだか、バカみたいなやつらですね・・・」

「まあ、鍛錬をしない奴はこうなる、という良い見本だ。全員の利き腕を折ったのだろう?」

「はい、折ってくれと言わんばかりの大振りでしたから」

「ならばよし、このままこいつらは北の鉱山で警護の任務にあたらせる。北につくまでには折れた腕も完治するだろう」



北の鉱山には屈強な男達がいる。

厳しい鉱山の生活は油断することができない。

その油断が命を左右するからだ。

そこの警護をするのだ、怠け者ではひとたまりもない。

ユークス達は到着してから身分をかさにきて、何とか怠けようとしたのだが、鉱山の男たちはそれを許さず、日々精神と肉体を鍛えられる日々となったのだった。






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