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其は、悲しみ打ち砕く女神の怠惰.2

長らく開けてしまって本当にすいません。


まだまだ先も長いので極力毎週更新くらいはがんばります!


 とんでもないチートスペック。言葉で言うのは安いが実際にはかなりヤバいだろう。

 あれほどの火力の魔法を無限に連発できる。そんなことになればそれこそ防衛どころではない。


 今の所、火球に巻き込まれた騎士たちも辛うじてではあるが息はあるようだ。けれど、その辛うじての連中は王国屈指の『騎士』なのだ。

 普通の人間があんなものを食らえば、間違いなく即死だ。


「これで君たちの疑問は解消できたかな・・・?」

「・・・ああ、十全に理解ができたよ。」

 いつものように嫌味なほど爽やかな口調でヴァルトが返答する。


 それでも、彼の表情からはいつもの爽やかな余裕が少しばかり影を潜めているように見えた。

「じゃあ続きだね・・・と言っても私は多くを語るつもりは、無いよ。面倒だから・・・それに、こんな簡単な事にも気づけない君たちに・・・何を言っても今は伝わらないだろうから・・・」


 相も変わらず気だるそうに語るミットライトが何を言いたいのかは正直掴み切れない。

 それでもここは考えるだけの時間を貰えるだけでありがたい。

 あのクラスの火力の打ち合いになんてなってしまえば死傷者の数は計り知れないだろう。そして、おれにそれを防ぐ術などもちろん・・・無い。


 ならばせめて悪あがきでもなんでも浮かぶまでの時間くらいは欲しい。

 何でもいい。何か一つ、後ろにいる人たちを。彼女を巻き込まずに済む方法を――

「さて、静かな間に少しだけ・・・最初に君が聞いてきた『悪性』というものについて触れておこうか・・・」


 右から左へ会話を聞き流すおれを指さしミットライトはまたも話始める。

「ご親切にどうも。罪人に説法されるなんて世も末だな・・・。」

 ま、文字通り今は「世の末」に差し掛かっているわけだが・・・


「そうかもしれないね・・・君たちはこの世界において罪人では無かった・・・けれども悪人ではあったんだ・・・」

「ま~た禅問答みたいなことを。いい加減話し方がくどいぞおまえ。友達いねえだろ。」


 時間は稼げて嬉しい。が、いかんせん彼女の話し方は聞いているこちらまで気だるくなってくる。


「”喜劇”も見方を変えれば”悲劇”に・・・そう言っていただろう・・・?まさに言葉の通りだよ・・・君たちにとっての『悪』とは何だったのか、『善』とはなんだったのか・・・」


 おれの悪態もどこ吹く風。全くペースを変えぬまま、彼女は意味の掴めない文章を並べ続ける。


「私にとっての悪とは「憐れんだ」こと・・・君たちのような存在が、『憐憫』などと言う感情一つで、自分達の怠惰をなすり付けたことさ・・・だから怠惰な私が、真摯に、誠意を込めて君たちに絶望を与えるんだ・・・。・・・それが私の下した結論だ。」

「えらく働きもんだな?怠けもんのくせに真摯に取り組むってか??」


 意味も分からないままなのだが、なんとなく言われたことの何かが癇に障った。

  

「仕方ないだろう・・・?それがせめてもの手向けだと思うから・・・殺すことくらいはまじめにやるよ・・・」

 どうやら口ぶり的にミットライトは言いたいことを言い終えたようだった。


 こちら側には一ミリも真意は伝わってきてはいないのだが会話が終わってしまったのはいただけない。

 なにせこちらには何の戦略も浮かんではいないのだ。このまま一人戦車団のような女と暴風雨のようなロリの本気のドツき合いになどなれば目も当てられない結果になる。


「・・・話は以上かな?なら今度はこちらの番だ。大人しく投降する気は無いかな?今ならば、命だけは取らないでいてあげようかと思っているのだが?」


 思案していると口を開いたのはヴァルトだった。国を挙げての宿敵相手に温情をかけるとは・・・

 優しいを通り越して、底抜けのバカなんじゃないかとさえ思えてしまう。


「なに言ってんすかヴァルト君?さすがにそれはダメっしょ??」

 隣で大人しく黙っていたリザリーもこれには呆れ顔だった。

「珍しく意見が合ったなロリっ子。それはいくらなんでもどうなんだ?」


 おれたちの言葉には無反応なまままっすぐとミットライトを見つめるヴァルト。

「はぁ・・・どこまで憐れなんだろうね君たちは・・・この期に及んでまだそんなに余裕を見せるなんて・・・ナメ過ぎているよ・・・」

「そうか。では、交渉は決裂だね。」


 あからさまにポーズな残念顔を浮かべたヴァルトはニッコリと微笑み

「では、ここからは『死神』の面目躍如といかせて貰おう。」

 そう、ティータイムにでも誘うかのように朗らかに告げた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 目の前で起きた光景は、あまりにも突然の出来事だった。

 まさに開いた口が塞がらない。ていうか、マジで開きっぱなしだ。


 見えない魔法で拘束をされていたはずのヴァルトはそんな事意にも介さず、おそらくは今までを遥に上回る速度でミットライトの眼前に現れた。

 おそらくと言ったが、正直おれには何も見えなかったのだ。


 先ほどのミットライトの瞬間移動とおれには区別がつかなかい。

 今まではなんとなくだが掴めていた彼の移動の線を全く把握できなかった。


――見えない速度で移動するだけなら僕やヴァルトだってできるじゃないすか。


 そう言ったロリの言葉を改めて噛み締める。まさか、文字通りそんなことを実行するとは思わなかった・・・

 

 視界から消えたヴァルトが次におれの目に映ったのは彼の剣が、ミットライトの左腕を切り落とし返す剣閃が彼女を袈裟切りにするところからだった。


「あ~~!抜け駆けはずるいっすよ。僕だっていつ飛び出そうか迷ってたのに!」

「いやはや、年は取りたくないものですな。まさか先を越されようとは。」

 そして、この場でこの状況に驚いているのが自分でだけであることにも驚きだ。


 リオリーはともかく、ジルバークまであの拘束を破って動こうとしていたとは・・・

 なめてたつもりは無かったが、マジで何者なんだこの爺さん?


「げほっ・・・すごいね・・・まさか、あの拘束を破って動けるとは思ってなかったよ・・・」

「死神の剣、ご理解いただけたようで何よりだ。」

 相変わらずの爽やかスマイルで切っ先をうずくまるミットライトへと向けるヴァルト。

「けど、さすがに手を抜き過ぎじゃないっすか?僕なら初手で首ちょんぱっすよ。」


 先を越されたことがかなり気に食わないのかリザリーはとどめを刺さなかったヴァルトにかわいく口をとがらせながら物騒な悪態をついていた。


「彼女の言う通りだと思うけど・・・今のでとどめを刺しておけば、今回は乗り切れたかもしれないのに・・・」

「怠惰、と言いたいのかな?だが、この国を守る騎士としてはこの何も分からないまま君を討ち取ってしまう方が、先々自らの行いを、”怠惰”だったと悔いてしまいそうでね?それに――」


「この距離であれば、君を逃がすことは無い。どのような魔法であろうと、私の命が果てる前にその首、見事落として見せよう。」

「どこまでも・・・怠惰だね・・・」


 清々しいまでに自信に満ち溢れた口調で死神は告げる。それでも「罪人」は笑う。

 その自信こそが、怠惰であると。


 瞬間、目には見えぬ無数の刃がヴァルトを襲う。それでも死神は余裕の笑みを浮かべたまま、目には見えぬはずの刃を見事叩き落とす。

「ふむ。言葉とは裏腹にずいぶんと安い魔法だ。オリヴィエであれば、僕に血を流させるくらいはできただろう。」


「御託はもういいすっよヴァルト君。あまり余裕ぶっこいてると痛い目見るっすよ??」

「・・・仕方ないか。できる事であれば、むやみやたらと人を殺したくは無いのだが。」


 そう言いながらも死神は剣を頭上へと高々とかざす。


「人、か・・・もっと早くにそう思えていれば、こんなことにはならなかったのにね・・・」


 はたから見れば確実に万策尽きている。おれなら100回は死を覚悟している自信がある。

 けれど、この状況まで来ても彼女の目には微塵たりとも恐怖の色は灯らなかった。


「何のことかは知らないがすまないことをしたね。・・・為すこと全て間に合わないのは、昔からの性分なんだ。」


 『死神』も感化されたのか、意図の理解できない言葉と共に剣を振り下ろした。


 血しぶきが舞う。ヴァルトの眼前に転がるのはミットライトの頭部。もともとそれが鎮座していた場所からは、噴水のごとく血が噴き出している。

 そして、その噴水の施工主は――見えない何かに深々と胸部を貫かれていた。


「ごふっ、、、!ば、かな、、?なぜ、君がそこに立っている、、、?」

「だから言ったんだよ・・・?ナメ過ぎだって・・・・」


 声の主はもちろん転がる頭部の持ち主であるミットライト。

 けれども、ヴァルトの後ろに立つ彼女の頭部はキレイに繋がっており、落とされたはずの左腕でヴァルトを貫く見えない槍を握っている。


「ヴァルト君!」

「ヴァルト様!」

 目の前の光景に一瞬固まっていた2人がミットライトを切りつけるがお得意の瞬間移動で攻撃を難なく回避される。


「ヴァルト!こっち見ろ!!」

「だ、大丈夫だよ、、。」

「私も少しナメてたよ・・・まさか、〈超速再生(リバース)〉まで使うことになるなんて・・・さらには背後からの攻撃に寸前で反応して、即死を免れるなんてね・・・」


 確かに言う通り傷跡はギリギリで心臓からは外れてはいる・・・それでも、致命傷には変わりない。

 このままでは数分としない内に死神の命は本物の”死神”に持ち去られてしまうだろう。

「〈超速再生(リバース)〉、、、だと、、?」

「喋んなバカ!」


「そう。・・・体の一部さえあれば・・・一から私そのものですらも再生させられる魔法だよ・・・」

「どこまでも・・・チート野郎が。」

「安心してよ・・・体全てを地理にされるようなことがあればちゃんと死ぬからさ・・・」


「いいからフワフワしてねえで降りてこいっす!もう遊んでる時間はねえんすよ!」


 言葉と同時にリザリーはと跳び上がり切りかかるがやはり空中戦は明らかに分が悪い。

 空中での瞬間移動にはどうあがいても追いつくことができず、リザリーも歯噛みしていた。


「ヴァルト様!お気をたしかに!」

「はっはぁ、すまない・・・君たちの言う通り、どうにも慢心していた・・・それに、彼女の一言に一瞬とはいえ、怒りで、、隙ができた・・・」

 一体何に怒ったのか。今気にしている事では無いのだが、彼は心底悔しそうにそう呟いた。


―ドンっ!

 

 かなりの衝撃音と共にリザリーが地面に打ち付けられる。

「くっそ!!あいつちょろちょろ飛び回って埒が明かねえっすよ!!」

 驚くことに抉れるほど地面に叩きつけられた本人には対したダメージは無さそうだったが、戦況は一向に好転しない。


「うん。埒が明かない・・・だから、そろそろ終わりにしようか・・・」

「だったら終わらせてやるから!はよ降りてこいっすよ!!!」

 味方であるはずのおれでさえ身震いするほどの怒気をはらんで発せられる怒声。


 そんなものは聞こえないと言わんばかりにミットライトは空中でまたも見えない何かに立ち

〈神炎〉(エスト ファイア)

 呟くように魔法の詠唱を告げる。


「これは・・・」

「まじかよ・・・」


 次の瞬間現れたのは、小さな山をも連想させるほどの巨大な火球。


 先ほどのような数こそないものの、見えるそれは明らかに先ほどすべてを合わせても比べ物にならないほどの火量を内包していることは魔法の使えないおれでも一目でわかってしまった。

 そのあまりの巨大さにジルバークですら言葉を失った。


「少しは、絶望してくれたかな・・・?」

 彼女の言葉と共に迫る炎の山。

 炸裂すれば後ろの屋敷に隠れているものまで含め全てを灰に変えるであろうその業火を――


「・・・だから、痛い目見るって言ったんすよ。」

 そう言い笑った一際小さな少女は、たった独りその業火を受け止めた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 あたりは一面まさに火の海。

 それでも、屋敷には炎は届かず全滅だけは免れた。


「う、、、。」

 けれども、無事であったのは後方の屋敷付近から。前線で戦っていたおれたちは死んでこそいないものの立ち上がることすらできなかった。


 あれほどの猛威を振るっていたリザリーも今は普通の女の子のように横たわっている。


――ああ・・・これは・・・


「まただ・・・もっと辺り一面消し飛ばすくらいのでやればよかった・・・」

 罪人の言葉が耳元を流れる。


 リザリーには申し訳ないが、ほんの少しの先延ばしにしかならなかったな・・・


 あんなにも小さな少女が自らの命を懸けて守ってくれたと言うのに。9回ツーアウト。下駄を履くには至らず。5回コールド負けのようだ。


――立ち上がらなければ。

 心ではそう思っていても、体がまったく反応しない。恐怖とか諦念とかそう言うことじゃなく。物理的に立てない。シンプルな物理的ダメージで立つことができない。

 

 ヴァルトは生きてるだろうか?リザリーは?ジルバークさんは?・・・シルヴィアは、助かるんだろうか、、、?


 まあ、無理だろうな。逃げ出せる理由が無い。もしここで逃げ切れたとしても王国最強の騎士が勝てなかった相手に誰が勝てるんだろうか?


「やっぱ、無理だったのかな・・・」

 ついに目を開くことすらやめ 徐々に近づいてくる足音も霞がかったように遠くに聞こえた。 



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