たまには自爆も悪くない
作品タイトルやっとピンとくるのが浮かびました( ;∀;)
コロコロ変わってごめんなさいm(__)m
「あの丘を越えればフェルーの町です!」
リザリーと別れた後荷車を走らせようやく町が視界に入る。
そして残念ながら嫌な予感は確信へと変わった。
「町から火の手が上がってる、、?」
煌々と夜空を照らす。というほどの大火ではないようだがボルクスが示す方向からは月明かりに照らされる黒煙が視認できた。
「はい。町が全焼ということはなさそうですが、戦闘は始まっているかと、、!」
「けどまだ日にちまたいでも無えぞ!?」
「僕に言われても分かりませんよ!何か聞き間違いをしたという可能性は無いんですか!??」
「国王のおじいは確かに5日後って・・・」
『女神の子が目覚める―――決戦は5日後!』
もう一度あの日の言葉と国王ファウスの千里眼は未来が完璧に見えるわけではない。という事を合わせると屁理屈のような理屈へとたどり着く。
「あのおっさん適当な予言しやがって・・・」
現場を見ればわかることだがようするに”女神の子”との戦闘は始まっていない。という事なんだろうか。
「にしたって無茶苦茶だろうが。時間はちゃんと守れってんだ!」
「何か分かったんですか!?あと耳元で急に大きな声を出さないでください!!」
やいやいと言いあいながら丘を登り切ったところで町の全貌が見わたせた。
「あの蛇一匹連れてきたところで問題無かったかもな・・・」
目に映った状況は想像よりも悪いものだった。
現状として町の被害は思っていたほどではなく壊れているように見える建物はざっくりだが1/5程度。
遠目に見る限り町の中を逃げ惑う人の姿も見当たらず、先日見た穴の周りのような死屍累々ということは無かった。
だが、そうならないように自分の屋敷に町の住民を避難させていたのかそこに人が集まり、結果的に群がる魔獣たちの総攻撃が屋敷に集中している。
「タイヨウ!あそこ!」
「ああ、、!見えてる!」
屋敷の門の前ではヴァルト率いる数名の宮廷騎士と王宮では見かけなかった騎士達、ジルバークも加わり押し寄せる魔獣を押しとどめていた。
「『一振当千』・・・すごい。どっちが怪物か分からないですよ、、、!」
「・・・そうだな。」
憧れの騎士の戦う姿にボルクスは隣で目を輝かせている。事実、宮廷騎士も噂通りの強さだがヴァルト、ジルバークの両名の強さは群を抜いている。
おれがあれだけ苦戦したウガルですら一撫ですれば首が飛び返す剣でさらに2.3まとめて切り伏せる。
舞う様にきれいに、それでいて呼吸をするように自然に命を刈り取るその姿はまさに『死神』だと納得せざる負えない。だが――
「数が違いすぎる、、、!」
視認できる限りで騎士の数はヴァルトなども含めても30にも満たない。もともとの予想ではあくまで”女神の子”なる相手の単体の撃破の予定だったはずだ。
であれば、彼としては住民の避難や安全の確保に人員を割き、ラスボスは自分が撃破するつもりだったのだろう。
予想外の大量の魔獣の襲来に加えて、数日前のバシュムによる強襲で減った騎士の数が状況の悪化に拍車をかけている。
大して魔獣の数は見える範囲で10倍ではきかなさそうだ。
見たことのある犬型のウリディンムに一度殺されかけたウガル。さらには草原でリザリーが引きつけてくれたバシュムの姿も数体確認できる。 その他にも個体名の分からない魔獣が数種類。
「ですがヴァルト様とジルバークさんの強さは本物です!あのままいけばこのまま倒しきることだって・・・」
「あのままいけば、な。明らかにオーバーペースだろあんなの。」
「おーばー、、、?」
「ああもうめんどくせえ!やり過ぎだってことだ!あんな勢いで長時間はもつわけねえだろ!」
今のところは二人が奮戦することで魔獣の意識が集中し多方向から攻め込まれることを防げてはいる。
むしろヴァルトたちはそれが分かってやっているからこそペースを落とさず戦い続けているのだろう。
事実あの数に囲まれ数が分散されればひとたまりもないのは一目瞭然だ。
「とにかく急げ!おれらがいるからどうにかなるかはわかんねえけど、、、!それでもついたころには時間切れはほんとにシャレになんねえ!」
「はい!もう少しだけがんばってくださいね、、!」
ボルクスに声をかけられ返事をするかのように馬がいななき限界かと思っていたところからさらに加速する。
「もうすぐ辿り着けますがこのままでは魔獣の群れに突っ込みますよ!?」
「わかってる!けど今はあいつらは前の死神様とランデブーに夢中だ!そのまんま突っ切れ!」
「いくら何でも無謀すぎますよ!何か策でもあるんですか!??」
「後ろにいいもんがあってな。そんなことより。お前馬は乗れんのか??」
「乗れますけど、、?それが何か関係あるんですか?」
「おれだってさすがにこのまま荷車で行けると思うほどばかじゃねえよ。」
魔獣の群れの少し手前でいったん荷車を止め荷台の荷物のカバーを外す。
「これって爆薬だろ??」
「そうですけど・・・僕には力任せのバカな展開しか浮かばないんですが。」
「なめんな。今日から策士タイヨウと呼べ。」
それらしくニヤッと笑ってみせグレートな策を説明する。
「まずこのまま荷車ごと群れに突っ込む。意識は前に集中してるみたいだからそれである程度はいけるだろ。」
「・・・はい。けどそれだと途中で気づかれて囲まれますよね?」
「そこでこいつの登場。囲まれた時に荷台ごと爆薬を吹っ飛ばす。そしたら魔獣の意識もそっちにとられるだろうし、うまいこといきゃある程度の数を減らせるかもな。まあ量が少ねえから倒す方の期待はあんまできねえが。」
「それで?その後はどうするんです?」
「どうするも何も一つしか無いだろ?その隙に全力疾走だ。名付けて「サヨナラ、天さん大作戦」や。」
「やっぱりバカな策じゃないですか・・・」
「現状できる最善策だろうが!それとも他になんかあんのか?」
久しぶりのいいね!をするおれを可哀想なものを見る目で見てくる。
「はぁ。本当あなたは、、、。けどなんで僕が馬に乗れるかが関係あるんですか?」
「いやさすがにお前守る余裕なさそうだし。一人で裏から回ればお前一人なら何とかなるだろ?」
口にした瞬間さらに大きなため息をつくボルクス。
「な、なんだよ、、。」
「いいですか?僕はあなたに守られるため連れてこられたんじゃありません。僕はあなたの助けになるために自分の意志でここに居るんです。それに一頭じゃ速度も出ません。二人で突っ込んで二人で生きて屋敷へ戻って。――シルヴィアに謝らないといけませんしね?」
どうやらおれの弟分はおれが思っていたよりもずっと強く、大きくなっていたみたいだ。
たかが数か月の短い間だというのに・・・嬉しいような寂しいような複雑な気分だ。
「・・・おう!すま・・・ごほんっ。――ありがとよ。」
「どういたしまして。」
頬を叩き気合を入れなおす。ここまで弟分にカッコつけられて失敗しましたなんてダサい結末さすがに笑えねえ!
馬の金具をギリギリまで外していると顔を摺り寄せてくる。人懐っこいとは思っていたが主人に似て緊張感の無いやつだ。
「お前らも、無理させて悪りいな。ん~名前が無いといまいち締まんねえな。・・・よし、今日からおまえはタレゾウだ。もうひとっ走り頼むぞ!」
顔を撫で背中にまたがる。
「そういえば。タイヨウは馬に乗れるんですか?」
「さあ?ま、なんとかなるって。為せば成る!」
こうして呆れ顔のボルクスと共に馬を走らせ魔獣の後方へと「S・TD」成功させるため特攻を仕掛けた。
====================
-ヴァルト邸正門前-
「くそお!なんでこんなに早い時間から!まだ月が頂天に昇るまでまだ時間はあるのに、、、!!」
「数が多すぎる、、、。」
「ヴァルト様!このままでは、、、!」
「下がるな!もちこたえて戦線を維持するんだ!夜が明けるまでなんとしても押し留めるんだ!!」
戦闘が始まりすでに2時間弱。町人の避難誘導を終えたはいいが群がる魔獣の数が多すぎる。
そもそも、他の者が言う様に出現が早すぎる。何かがおかしい。
「ヴァルト。このままでは本当に時間の問題だ。」
自分の横に立ち奮戦してくれているジルバークですら現状に弱気な姿勢を見せている。
「僕たちがそのようなことを口にしてどうする!それと今言うことではないかもしれないが任務中だ!言葉使いは気を付けてくれ。」
「・・・失礼をいたしましたヴァルト様。」
嫌な予感はしていた。なので部隊の一部の下位騎士を早々に王宮へと帰還させ応援要請も出したはずだ。距離から考えればもうすでに到着していてもおかしくない頃のはず。なのに・・・
―ドカーンッッ!!
「!!今度はいったい何が起きた!!?」
「ご報告します!魔獣の群れの中心部にて謎の爆発が!上がった火柱の規模からしてかなりの爆発かと!」
「新手か!?」
(くっ・・・次から次へと、、!)
「わかりません!現状確認しようにも人手も不足し、場所も奴らの群れの中心ですので・・・」
「いったい何が起きているというのだ、、、!」
「何があったのヴァルト!?」
「シルヴィア!あなたは前線に来てはいけない!もしあなたに何かあれば私は、タイヨウに合わせる顔が無い!」
鳴り響いた轟音に後方支援をしてくれているシルヴィアが前線に様子を見に来ていた。
「それにあなたは重要な治癒術師だ。あなたがいなくなれば戦況は一層苦しいものになる!」
「大丈夫。これはわたしにしかできないことだもの。こっちの方が皆の治癒を早く施せるし。それに・・・タイヨウならこんな時に後ろで隠れてるだけなんてしないはずだもん。」
強い意志の宿った目でこちらを見返すシルヴィア。
まったく。彼と言い、シルヴィアと言い、本来守られる立場のはずの人たちにこんな目をされて弱音を吐いている場合ではないな。
「ああ、そうだね。こんな暗い顔では守れるものも守れない。『笑う門には福が来る』だったね。」
好転しない状況に一瞬でも守る事を放棄しかけた自分を恥じた。
「ご報告します!爆炎の中より何者かがこちらに接近中!視界が悪くまだ確認はできていませんが・・・」
「”女神の子”がついに来たか!?」
剣を強く握りなおしもう一度シルヴィアを見つめる。
「・・・感謝を。あなたのおかげで私は自分に恥じぬ戦いができそうだ。もし私が傷を負った時はよろしくお願いしますね?」
これだけの乱戦。奇跡的に死者こそ出ていないものの被害は甚大だ。
そのすべてを一人で治癒し続け彼女だってかなりの消耗のはず。
それでも、彼女は笑った。「まかせて!」と。いつものように気丈に。
タイヨウお得意の親指を立てる所作と共に何も心配はいらないと言わんばかりに自分より何倍も弱いはずの少女に背を押された。
踵を返し、最前線で迫りくる影に剣を向ける。
「我が名はヴァルト・ヴァン・アステル!『アッシャムス王国』の王子にして王国の剣!我が国を、民を傷つけるというのならば!この身命を賭して汝を切り伏せよう!!」
爆炎が少しづつ晴れ、迫りくる影が姿を現す。
それは”女神の子”でも、王宮からの援軍でも無い。この状況を見たうえでそれでも笑顔を絶やさず乱入してきた心強い、「守られる立場」の友だった。
====================
「で、勢いよく出発したけどさ。これってどんくらい爆発すんの?」
「さあ?僕も初めて見た爆薬なので。おそらくは王宮の防衛などに使うものなので一般には出回っていない物ですね。」
「ふむ。あんまし量も無いしこれで蓋開けたらポンッ。くらいの爆発やったらどうしよか。」
今回の作戦において爆発の規模は生命線だ。少しでも大きく爆発して気を引いてくれなければあの真ん中を走り抜けるのは厳しい。
「タイヨウの言葉を借りるなら『なるようになります』よ。いつもそれで何とかしてくれていたじゃないですか?」
本当にいつの間にか肝が据わったもんだ。男子三日合わざればなんとやらだな。
「さあ。もう群れにぶつかりますよ!」
「おう!巻き込まれんなよ!」
最後尾を馬の上から切りつけ進めるところまで進む。
けれど1分もしないうちに進路が無くなってくる。
「いくでボルクス!何とか走り抜けろよ!――頼むぞタレゾウ。無茶ばっかさせてわりい。あとでうまいニンジン食わしてやる!」
「ヒヒーン!!」
馬が加速しきったところで荷台につなげた縄を切り落とす。
「今だ!」
「はい!」
同時に手綱を引き大きく左へよける。
切り離された荷台は勢いそのままに目の前のバシュムの横腹に一直線に突っ込んでいく。
荷台はバシュムにぶち当たり――ドカーンっっ!!と想像していた数倍の爆発を巻き起こした。
上がった火柱はバシュムをも呑み込む大蛇のように立ち上り、巻き起こった爆炎が回りの魔獣たちの視界を奪い狙い通り混乱を招く。
「げほっ、、!げほっ、ごほぉっ!」
「けほ、、!―ヨウ――大――すか!?」
爆発音のせいで耳がキーンとなり上手く音を拾えていない。
「なんだよあれ!?おれらあんな危ないものの横で寝てたのか!!?」
明らかに爆薬の量に見合わない大爆発。これにはナッパも驚きだろう。
一歩間違えていれば巻き込まれて、序盤でリタイアした荒野の盗賊のようになっているところだ!
「とにかく作戦成功だ!あとは急いで合流するぞ!」
「―――??よ――こえ―――いです!」
残念ながら耳をやられているのはボルクスも同じようで意思疎通はうまくいってないがお互い目標はわかっているので問題は無いだろう。
前を見るといきさつは分からないがなぜか「死神」が剣を構えてこちらに何か叫んでいる。
「はあ!?なに言ってるか聞こえねえけど、そっちついてからにしてくれるか―!!」
予想外に派手な登場にはなってしまったがとりあえず第一関門を突破。
何とかスタートラインには立つことができたわけだ。
「なん――み達が―こに??」
「タイ――!よく――じで!」
ヴァルトとジルバークの二人がこちらに声をかけてくれているが半分も聞き取れない。が、なんとなく何を言っているかは表情から読み取れる。
「タイヨウ!」
耳がイマイチ機能していなくても女性の高い声はやっぱり拾いやすいみたいだ。
聞きたいような、聞きたくなかったような声が鼓膜に飛び込んできた。
「・・・シルヴィア。」
「――もる―あるだろう。けれど―い―中だ。少し――れよ?」
「え?なんてヴァルト?今あんまり耳聞こえて無えんだよ。」
耳に手を当てて近づける。やれやれと言った顔で少し笑った後で
「また会えてうれしいよ!!」
せっかく少しマシになって来ていたのにまた悪化する羽目になってしまった。
「おーーぅ、、。」
さっきまで聞こえていたシルヴィアの声もうまく拾えない。
「―――??―――――!!?」
「あぁ~わりい。今なんにも聞こえてねえし、長々話してる場合じゃないのも分かってんだ。だから言いたいことだけ言わせてもらうぞ?まずは、ごめんな。」
「――――、。―――?」
「それと、あの時「なんで?」って。そう聞いてくれたシルヴィアに答えられなかったから。けど今なら答えれる。――おれはおれの為に君を守る。自己中なのは重々承知だ。それでも、シルヴィア為ならなんだってできる。おれがそうしたいから。」
本当に、何とも自己中心的な話だ。これではあの時の質問に返答したことにもならないんじゃないだろうか。
けれどこれがおれが出した答えだ。キモかろうがウザかろうがこれが「桐生太陽」が戦う、彼女を守る理由なのだからしょうがない。
これで素直にフラれてしまえば仕方がない。諦めるかは分からない。
おれは自分が思っていたよりもずっと粘着質でヤキモチ焼きみたいだから。
でもそれが「おれ」なんだからしょうがない。名誉のために、世界を救うために。――くだらない。そんなものに欠片ほどの興味ない。
ただ自分が惚れた女の子1人を振り向かせるためにおれは『英雄』になると決めたのだからもう迷わない。
「ご・・・ありがとうな。んじゃ、ちょっくら一狩り行ってくるかあ!」
いい加減戦わなければさすがに怒られそうだと思い振り向こうとした矢先、シルヴィアに顔を両手で掴まれた。
同時に耳のあたりをぬるいお湯でもかけられたような温かさが包んだ。
「これは?」
「どう?聞こえるようになった?言いたいことも聞きたいこともいっっぱいあるけど。今は我慢するね。だから――いってらっしゃい!」
笑顔で背中を押してくれる。ああ。その笑顔が見れるなら文句だろうと、お説教だろうと聞きに帰ってくるとも。
久々に見た彼女の顔はあまりにもまぶしく直視できず代わりに振り向いた背中越しにいいね!を残し戦線へと走り出した。
「やっと来ましたか。いつまで遊んでるんですか?」
「遊んでねえよ。英気を養ってたんだ。」
「そうですか、、。で?養えた分がんばれるんですよね??」
「最近おれに厳しいなお前!おれは褒められて伸びるんだぞ!」
普段通りにじゃれるおれたちの元に改めてヴァルトとジルバークの二人がやってくる。
「お元気そうで何よりですタイヨウ殿。・・・もう心配は無用そうですな。」
「ははは。その節はご迷惑をば、、、。」
頭をポリポリとかいた後深々とお辞儀をする。
今思えばなんともわがままにつき合わせてしまったものだと反省した。
「またよかったら稽古つけてくれると嬉しいっす。」
「このような老体に出来ることなど数えるほどあるかもわかりませんが。」
「またまた謙遜を、、、。」
ニヤリと笑ったジルバークの笑顔に転がされ続けた稽古を思い出し少し寒気がした。
「仲が良くなったようで何よりだ。しかし、今は目の前に集中してくれるかな二人とも?」
咳払い一つの後会話を遮り相変わらずのキラキラ笑顔でヴァルトが参加してくる。
「なんであんだけ戦ってそんな爽やかでいれんだ?生絞り100%ですかあなたは?」
「相変わらずよくわからないことを言うね。で?一応期待を込めて聞くけれど、何か策はあるのかな?」
「もちろん!めっちゃがんばる!けど命は大事に!自爆、ダメ、ゼッタイ!」
おれ的には大まじめだったのだが衝撃的なほど呆れた顔をされる。
「・・・あっはははは!いや、失礼!確かに、タイヨウの言う通りだ!」
大笑いするヴァルト。ボルクスとジルバークも明らかに笑いをこらえている。
近くで会話が聞こえていた騎士たちは内容への驚きと、ヴァルトが声を上げているという事に驚きつられて笑っている者もいた。
「くっ、、、。なんかめっちゃ恥ずかしい・・・」
「僕はいいと思いますよ。ふっ・・・タイヨウらしいです!」
「慰めるか笑うかどっちかにしろや!」
またも予期しない笑いに包まれる魔獣との戦闘真っ只中の殺伐とした最前線。
「・・・不思議な御仁ですな。何か大きく状況が好転したわけでも無いのに、場が明るくなる。」
「ああ。一種の才能と呼べるかもしれないね。僕には無いものだ。とても眩しいよ、彼は。」
「それは褒めてんのか??」
返答は無い。
「なんか言えよ!」
「まあ冗談はそこまでにして。状況を整理しよう。正直な話・・・タイヨウとボルクス君に参戦してもらっても状況が大きく好転したとは言い難い。」
「・・・それは重々承知。残念ながらおれではヴァルトやジルバークさんどころか宮廷騎士にも及ばねえ。」
現実は瀕死から回復すれば強くなったり、内なるおじさんに聖剣の解放の仕方を教えてもらって舞い散る桜イケメンと渡り合えるわけでも無い。
桐生太陽は弱い。それは変えがたい現実だ。
「ちなみにだが、ここに来るまでに王宮へ送った使者と会ったりはしなかったかい?」
「使者ってもしかして。・・・逆に聞くけどここに来るまでにバシュムと戦ったか?」
「バシュム?いや、あれと戦闘になったのは今だけだが。」
ようやく合点がいった。なぜヴァルトが一緒にいた上でなぜあそこまでの被害が出ていたのか。
「そうなると期待は出来ねえな。ここに来るまでに激しい戦闘の痕と結構は数の騎士の遺体を見た。」
「・・・なるほどね。道理で待てども援軍が来ないわけだ。それにしても・・・」
言葉の途中で考え込むヴァルト。言いたいことはよくわかる。
やはりどう考えても都合が良すぎる。
状況を先読みしたヴァルトが送った使者が偶然バシュムに襲われ今こうして、偶然窮地に陥っている。
「けど今はそこを考えてもしょうがない。とりあえずはできることをやるしかない!」
「・・・・・・・・・」
依然として考え込むヴァルト。
「なんか他に気になることでもあんのか?」
「・・・いや、タイヨウの言うとおりだ。今は目の前の問題を何とかしなければ。」
口ではそういうものの彼の顔は全く晴れてはこない。
「そういえば。あのバシュムってヴァルトなら一人で倒せんのか?」
「そうだね。2.3匹相手なら何の問題も無いかな。」
言葉を聞いてほうほう。と頷く。
「それがどうかしたのかい?」
「なら一個だけいい報告ができるな。もうすぐ嵐になると思うぞ?」
ニヤリと笑って不思議そうな顔をしている二人を見る。
全く。意味深な死亡フラグを残していったから内心かなり心配していたが・・・
結局のところ王国の最高戦力である彼らはやはりかなりのチート存在であることに変わりはないようだ。
「ヴァルト様!前線が押し込まれ始めています!」
「すまない!すぐ戻る!」
「では私もヴァルト様と戻りますのでこれで失礼を。お二人とも無理だけはなさらぬように。」
二人が呼びに来た騎士と共に前線へと走っていく。
「さあ、おれらもがんばろかね!」
「はい!申し訳ないですが、僕は前線ではあまりお役に立てないと思うのでシルヴィアと一緒に後方支援に回ります!」
「おう!シルヴィアが無理し過ぎねえよう監視頼む!」
「タイヨウこそ。もう終わってそのまま倒れるようなことはやめてくださいね!」
拳を合わせ一旦ボルクスと別れを告げおれも戦線へと向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はぁはぁ、、!このっ、、!」
目の前の魔獣を切り伏せ一息つく。
自分でも驚いたが〈強化〉がちゃんと使えるようになったおかげかジルバークに転がされ続けた成果か、依然あれほど苦戦したウガル相手でも問題なく倒せる。
バシュムにもビビっていたがやってみると意外と何とかなるもので邪魔が入らなければ一対一なら倒せそうな感じだった。
「数、多過ぎ、、、。」
それでも体力には限界がある。ジルバークですら少しではあるが疲れが見え始めていた。
「あいつは、マジでバケモンだな・・・」
目線を横に動かすと一人紙でも切るように魔獣を狩っていくヴァルトの姿がある。
予想ではオーバーペースかと思っていたが、もしかしたらあれが彼の通常運転かもしれないと思うと本当に同じ人間か疑いたくなってくる。
この場全ての魔獣が彼ひとりに向かって行ってくれれば冗談抜きで殲滅できるんじゃなかろうか?
「ぐあっ!」
「くるなぁ!!」
それでもこちらの戦力は徐々にではあるが確実に削がれていっている。
「あのロリいつなったら帰ってくんだ、、、!」
襲われかけていた騎士を助け独り言をつぶやく。疲れてきて今は重力にさえ文句を言いたい気分だ。
「す、すまない、、、。」
「いいからもう一人抱えて下がってくれ!んで、頼むから早めに戻ってきて!」
倒れていた騎士も抱え起こし後方へと下がらせる。
「あぁ~~っ!疲れたぞほんまに!!」
力任せに剣を振り抜きとにかく手を動かす。
その時地面が揺れ足元から巨体が持ち上がる。
「これは・・・マジでピーンチ・・・」
偶然か誘い込まれたのか、地中にもぐっていたバシュムが顔を出し取り囲まれた。しかも3体。
「ジル!タイヨウを!!」
「御意!ぬっ、、!」
こちらの援護に駆け付けようとしたジルバークの前にもバシュムが現れた。あちらにはさらに多く5体。
もはや生物というよりはただの壁だ。
「おのれ、ヘビ風情が!!タイヨウ殿、すぐに参ります!しばしもちこたえてくだされ!」
「言われるまでもねえや・・・こんなくらいで諦めてたら先には進めねえよ。おれの地元じゃ『野球は九回2アウトから。下駄を履くまではわからねえ』ってな。諦めなけりゃ何とかなるかもしれねえんだよ!おら、かかって来いや爬虫類が。霊長類なめんなあ!」
挑発に呼応するように地鳴りのような鳴き声を上げバシュムが襲い来る。
「だらあああぁああ!」
剣を振りかぶり切りつけるが一刀両断には程遠い。さらには皮が固く力任せに突き立てた剣が抜けるまでに一瞬の間が空く。
その隙を見逃してくれる優しさなどあるはずも無く横から別の一匹の頭が迫る。
「くそっっ・・・」
回避は間に合わない。
反射的に目を瞑ってしまいながらもダメもとで剣を振り応戦し――
ブシュウゥっ、、!
血が噴き出す音が聞こえ目を開く。一面の赤の中に蛇の頭が三つ転がっている。中心にいたおれもゲリラ豪雨に降られたかのようにびしゃびしゃだ。
「今のどうすか??かっこよかったでしょ?ホレちゃったすか??」
ここまで返り血まみれが似合う奴は、彼女くらいだろう。
キレイな褐色の肌に妖艶な真紅の血化粧。月明かりに照らされるその姿にほんの少し見惚れてしまった。
吊り橋効果ってやつか、、?
「はは、、、。バッター桐生に替わりまして・・・『ロリ災』。」
九回2アウトで満を持しての「ピンチ殺し屋」の登場だった。




